おんなのこ

桃青

文字の大きさ
上 下
4 / 51

2.サンリオを求めて

しおりを挟む
 マリアはマックで一杯のコーヒーを飲み、庶民の味を楽しんだ後、大きな百均の店舗に来ていた。
「ここよ、ここ」
 マリアは小さな声で呟くと、フリルのついた白いスカートをなびかせながら、店へ入っていく。マリアの目的は、サンリオグッズのパトロールである。
(また増殖しているわ、サンリオの商品が)
 マリアは心の中でひとりごちた。近頃のサンリオの人気ぶりは異常だと、マリアは思う。ある意味バブルというべきか、サンリオ教なるものがあり、その信者が急速に増えていく光景が、ぼわんと頭の中で浮かび上がった。自分がサンリオに惚れてしまう理由も、何となくだが掴めている。可愛いから、というのは、一つの理由、かつ表面的な理由に過ぎない。サンリオのキャラを見ていると、ほっこりしてしまうのだ。それはまるでおばあちゃんの作った大福を食べているかのような……。安心感と、可愛さと、ホーム感が、雪崩となって自分に襲い掛かり、包み込み、気付くとこう呟いている。
 かわいい、と。

 マリアは入口に戻り、ガシッとかごを掴むと、まずキキララのティッシュをかごに入れた。キキララはマストだ。キャラもデザインも、まず女子の好みを外さない。次にマイメロディのタワーケースなるものを、かごに入れる。過去にマイメロディのアニメが放映され、その闇っぷりが話題を呼んだものだが、影が薄っすら存在している所が、マイメロディの魅力でもあると思う。クロミちゃんのヘアクリップも買った。マイメロディがメインで、後から誕生したクロミちゃんは、セカンドの立ち位置にいるのだが、だからこそ、クロミちゃんグッズは大事である。百均でクロミちゃんグッズを見つけたら、即買うべし。
(ハンギョドンやマロンクリームのグッズも、色々あるといいのにね)
 そう心で呟きつつ、ばしっとポムポムプリンのシールを掴んでかごに入れた。改めて手に取り、シールをじっと眺めると、プリンくんが蜂の姿にコスプレしていて、可愛さに微かに手が震える。
 さらにポチャッコのシール、タキシードサムの超ミニポーチ、シナモンロールのアクリルキーホルダーなど、ポイポイかごに入れていき、数も数えずにレジへ向かった。お店の人が無表情でレジ打ちをしていくのを、マリアも無表情で眺め、千三百二十円という金額が告げられると、フッと心で笑ってこう思った。
(サンリオだけに、一日千三百二十円も使いという、この贅沢)
 レジ袋はいらないと言ってお金を払い、巨大なすみっこぐらしのエコバッグに、ポイポイとグッズを放り込んでゆく。もちろんマリアだって、百均ではなく、正規のグッズを売っているサンリオショップなるものがあることを知っているし、行ったこともあるが、百均で、安くていいものを買う背徳感がたまらない。それはまるでよくできた違法のコピー商品でも買うかのような……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ボッチによるクラスの姫討伐作戦

イカタコ
ライト文芸
 本田拓人は、転校した学校へ登校した初日に謎のクラスメイト・五十鈴明日香に呼び出される。  「私がクラスの頂点に立つための協力をしてほしい」  明日香が敵視していた豊田姫乃は、クラス内カーストトップの女子で、誰も彼女に逆らうことができない状況となっていた。  転校してきたばかりの拓人にとって、そんな提案を呑めるわけもなく断ろうとするものの、明日香による主人公の知られたくない秘密を暴露すると脅され、仕方なく協力することとなる。  明日香と行動を共にすることになった拓人を見た姫乃は、自分側に取り込もうとするも拓人に断られ、敵視するようになる。  2人の間で板挟みになる拓人は、果たして平穏な学校生活を送ることができるのだろうか?  そして、明日香の目的は遂げられるのだろうか。  ボッチによるクラスの姫討伐作戦が始まる。

【完結】のぞみと申します。願い事、聞かせてください

私雨
ライト文芸
 ある日、中野美於(なかの みお)というOLが仕事をクビになった。  時間を持て余していて、彼女は高校の頃の友達を探しにいこうと決意した。  彼がメイド喫茶が好きだったということを思い出して、美於(みお)は秋葉原に行く。そこにたどり着くと、一つの店名が彼女の興味を引く。    「ゆめゐ喫茶に来てみませんか? うちのキチャを飲めば、あなたの願いを一つ叶えていただけます! どなたでも大歓迎です!」  そう促されて、美於(みお)はゆめゐ喫茶に行ってみる。しかし、希(のぞみ)というメイドに案内されると、突拍子もないことが起こった。    ーー希は車に轢き殺されたんだ。     その後、ゆめゐ喫茶の店長が希の死体に気づいた。泣きながら、美於(みお)にこう訴える。 「希の跡継ぎになってください」  恩返しに、美於(みお)の願いを叶えてくれるらしい……。  美於は名前を捨てて、希(のぞみ)と名乗る。  失恋した女子高生。    歌い続けたいけどチケットが売れなくなったアイドル。  そして、美於(みお)に会いたいサラリーマン。  その三人の願いが叶う物語。  それに、美於(みお)には大きな願い事があるーー

oldies ~僕たちの時間[とき]

ライト文芸
「オマエ、すっげえつまんなそーにピアノ弾くのな」  …それをヤツに言われた時から。  僕の中で、何かが変わっていったのかもしれない――。    竹内俊彦、中学生。 “ヤツら”と出逢い、本当の“音楽”というものを知る。   [当作品は、少し懐かしい時代(1980~90年代頃?)を背景とした青春モノとなっております。現代にはそぐわない表現などもあると思われますので、苦手な方はご注意ください。]

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

演じる家族

ことは
ライト文芸
永野未来(ながのみらい)、14歳。 大好きだったおばあちゃんが突然、いや、徐々に消えていった。 だが、彼女は甦った。 未来の双子の姉、春子として。 未来には、おばあちゃんがいない。 それが永野家の、ルールだ。 【表紙イラスト】ノーコピーライトガール様からお借りしました。 https://fromtheasia.com/illustration/nocopyrightgirl

僕とコウ

三原みぱぱ
ライト文芸
大学時代の友人のコウとの思い出を大学入学から卒業、それからを僕の目線で語ろうと思う。 毎日が楽しかったあの頃を振り返る。 悲しいこともあったけどすべてが輝いていたように思える。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...