3 / 8
3.
ネコ、仕事始め
しおりを挟む
3.
岬は動物用のキャリーバッグにミチを入れて出勤し、その重さで手をじんじん痺れさせながら、何とかネコの寄り道までたどり着いた。そして待合室で待っている人たちに軽く頭を下げつつ、事務室に入っていくと、いつも通りに和子と夏が、仕事に対する緊張感をほぐすように雑談をしていた。が、岬の手元に目をやると、二人とも目を丸くして、少しの間呆気にとられてから口々に言った。
「岬、何を持ってきたの?」
「それ何?」
岬はキャリーバッグを机の上にドスンと置き、中を覗いてからあっさりと答えた。
「ネコ」
「猫?」
「ねこぉ~?」
「家の飼いネコ」
そしてミチをバッグから取り出すと、和子は動作が固まり、真顔で呟いた。
「嘘でしょ」
一方夏は満面の笑顔で近づいてきて、ミャーと鳴いているミチをまじまじと見てから言った。
「すごくかわい~。私に抱かせて、抱かせて」
「どうぞ」
岬から手渡されたミチをそっと抱いた夏は、よしよしと言いながらミチを撫でて、嬉しそうに言った。
「きゃ~。なんかね、自分の子供ができたって感じ」
「それは大げさだわ。で、岬はこのネコをどうするつもりなの」
「相談に使う」
「……。ネコって喋らないよね」
「沈黙は金」
「うー、でもネコは営業には使えないよ」
「それはなぜ」
「テレビで見たことがあるけれど、ネコカフェとか、動物を使うのって、大量の許可をとらないとできないはずだもの」
「そうなんだ」
「でもとりあえず川崎先生に相談してみたらあ? まあ、そもそもこの相談所のボスの承諾なしに、ネコを置くことはできないしさあ。おお、どうした、どうした」
夏の提案に反応するみたいに、ミチは彼女の肩の上でミャアミャア鳴いていた。このネコはその鳴き声の可愛さで、数多くのネコ好きをメロメロにしてきたことを、ふと岬は思い出した。
「じゃ、まず先生に相談する。夏と和子は、ネコを置くことには賛成? それとも反対?」
「どっちでもいい」「私はいいよ~。このネコよさそうな子みたいだし」
岬はすっかり夏になついてしまったミチを彼女の肩から引き剝がし、自分の肩に乗せて緊張しつつ、診察室へ向かった。そして軽くドアをノックして、中へ入っていくと、川崎先生は岬を見つめ、次にネコを凝視してから言った。
「高野さん、なんじゃそりゃ」
「ネコです」
「それは言わなくても分かる。どうしてそんなものがここに? 通勤途中で拾ったの」
「いえ、れっきとした私の飼いネコです。名前はミチ」
「ネコがネコの寄り道にやってきた。よくできたジョークみたい……、じゃ済まされないぞ」
「川崎先生、私はミチを相談に使いたいと思っています」
「なんでそんなことを思いついたわけ?」
「ここには人に対する恐れを抱いた人が多くやってきます。そして私のような人間の相談員に対し、うまく話せないという悩みを抱えている人も、きっといることでしょう」
「うん」
「だとしたら、ネコにだったら話せるのではないかと」
「……なるほど。面白い考えだね」
「でも和子によれば、ネコを営業に使うためには、数多くの問題を乗り越えなければならないらしく……、」
「うん。だったら『看板ネコ』にすれば?」
「看板ネコ?」
「つまり相談者としてミチを使わず、ネコの寄り道のシンボルかつペットにすれば?」
「ミチは私のペットです」
「だから高野さんとネコの寄り道の二つを兼業してもらえばいいんでないの、ミチには」
「それなら問題ない?」
「おそらく。ただしくれぐれもネコトラブルは起こさないようにしてほしい。その責任については全面的に高野さんに任せたいんだが。できそうかな?」
「……。今覚悟を決めました」
「そうか。じゃあちょっと僕にミチを撫でさせてくれ」
「どうぞ」
そう言うと岬は川崎先生の元まで行って、身を乗り出しているミチを差し出した。川崎先生はミチの耳の後ろを掻きながら次第に緩い笑顔を浮かべ、囁くように言った。
「これからどうぞよろしく、ミチ」
川崎先生のOKが出たことを和子と夏に伝えると、二人ともにやっと笑って、よかったねと口々に言った。そして事務室で放し飼いする許しをもらい、ミチは最初耳をピンと立てて、警戒心と好奇心を露わにしていたが、一通り部屋の造りを確認してから、大あくびをして窓辺の日の当たる場所に丸くなって眠り始めた。
その日、岬はミチのパワーを知るために、できる限りのことをした。まず相談者にネコを連れてきてもいいですか? と必ず聞くことから始めた。するとほぼ全員が驚きの表情をして岬を見つめる。そこへすかさず続けて、実はネコの寄り道でネコを飼うことにしたんですと説明すると、ああとか、ウッとか、へぇ~とか、人それぞれ違った反応を示した。そして許可が出たときにだけ、ミチを事務室から相談室へ移動させるのだが、待合室をネコを抱えながら通るとき、全員の相談者がミチに釘付けになっていることを岬はびんびんと感じていた。どうも自分は少し滑稽なことをやっているらしいと心で呟いたが、いざミチと一緒に相談者の話に耳を傾け始めると、早々にネコに合うタイプと合わないタイプの人がいることに気付いた。
ミチのことを全く気にせず、自分の苦しみをいつも通りに話す人も多くいたが、逆にどうしてもミチに目が行ってしまい、気もそぞろになって相談しにくくなる人もそれなりにいる。でもミチが相談者の元へ行き、動物らしい迷いのない目でスッと見つめると、今まで笑いを忘れていた人が目を細め、思わず笑顔になる場面を岬は何回か目にした。それはミチが巻き起こす小さな奇跡であり、これはいけるかもしれないと一層確信を深めた出来事でもあった。
「帰ってきたよ、ミチ」
そう言いながら岬は自分の家のドアを開けた。それからキャリーバッグを玄関に置き、ふたを開けると、中からミチが飛び出して、一目散に部屋の奥へ向かって駆けてゆく。
「ありゃ、どうしたの」
そう言って岬が後を追うと、ミチは用を足している真っ最中だった。そしてトイレを済ませてネコ砂をばっ、ばっ、と激しく蹴り上げてから、今度は餌をがつがつと食べ始めた。
「今日はもしかして、おまえなりに大変な一日だったのかも」
そう言って岬は優しく笑うと、いつもするようにテーブルに夕食を並べながら、ミチに聞こえるように一人で喋りはじめた。
「ミチはどうだったかな。色々な人と出会えたから、おまえの狭い世界が少しは広がったのではないかと思うんだけれども」
「ニャー」
「それにしても人見知りをしないネコだね。君はどんな相談者さんにもなついていたもの」
「ニャニャ」
岬は鞄を持って自分の部屋に行き、荷物の整理を済ませ、部屋着に着替えてから再びリビングに戻ってくると、ミチはテーブルの下で丸くなって、目をしっかり閉じ、眠りについたようだった。
「お疲れさん」
ミチに声を掛けて、岬は弁当を突きつつ自分の世界へ落ちていった。
(ミチの存在が相談者の心にどう影響を及ぼすのか。可能性は未知数だし、時に問題が起きる場合もあるだろう。でもそこは私がしっかり事態を見極めないと。川崎先生が言ったように、ネコの件はすべて私に責任がある)
お茶を飲みながらぼうっとする時間を楽しんでいた岬は、ふっとあることを思い出した。
(そういえば明日、川本新さんの予約が入っていたんだっけ。夕利という女の子は一緒に来るだろうか。考えてみれば、ミチを相談に使おうと思ったのは、彼女がいたからこそだった)
そして頬杖をつきながら色々なことを考えていたが、
「夕利ちゃんが猫嫌いだったらどうしよう」
と誰に言うともなく呟いた。とにかく川本さんと同じく、なぜ喋れなくなったのか、その理由を岬も知りたいと思っていた。でも彼女の中で心の整理がつかず、うまく喋ることができないかもしれない。いや、喋れなくても構わないのだ。まず自分の心の現状を客観視できるようになることが大事なのである。
(今日はここまで。後は明日考えよう)
そう決断すると岬は弁当を平らげ、頭を切りかえて、歯磨きのために洗面所へ向かった。
次の日、ミチと一緒にネコの寄り道に着いた岬の心は、なぜかそわそわしていた。川本さんと夕利に会うことを考えると、心がざわついてくるのだ。自分で自分の心理が理解できず、戸惑いながらいつものように事務室へ入っていけば、部屋の中には和子しかいず、不思議に思った岬は訊ねた。
「夏は?」
「今、川崎先生と話し合ってる。夏の担当している人をどうすべきかについて、相談しているみたい」
「そうか。問題は一人きりで背負っちゃいけない」
「そうね。私たちは一つのチームとしてお互いを支え合うべきだわ」
「……。ね、和子」
「ん? どうしたの」
「私、今日は少し変な気がする」
「変って、岬が? 私には別段変わったようには見えないけれど」
「何だかね、サンタクロースがやってくるのを、寝ながら待つ子供みたいな気分」
「分かりにくい例えね。ときめいているって感じなのかしら……。でも鬱的じゃないのなら、特に問題はないんじゃないの? っていうか、むしろそれはいいことなのかもしれないよ」
「そうか」
「岬は感じやすいたちよね。長所かもしれないけれど、でも人生を迷わず進むためには、ぶれても行く先を見失わないように、根は図太くはっていかないと」
「うう、十四歳も年下の人から、人生論を諭されるとは」
「私、岬と話していると、いつも自分が姉御になったような気分になってくるんだ。あ、夏が来た」
夏は事務室のドアを半開きにして、二人に声を掛けた。
「ねえ、始まる時間だよ~。川崎先生が来てって」
「分かった」
和子はそう返事して岬と頷き合うと、事務室を後にして診察室へ向かった。
その日は平穏な一日だった。絶え間なく人は来たが、忙しすぎるということもなく、岬は単調な仕事のペースに飲み込まれて、事務室にいるときに頭がぼーっとするほどだった。そして窓の外の世界が薄オレンジ色に染まり出したとき、朝からずっと気になっていた川本さんがとうとうやってきた。彼は制服姿の女の子を連れており、あの子が夕利ちゃんか? と憶測しながら、岬は時刻を確認して事務室を出ていった。
「お元気でしたか」
生真面目な顔をして椅子に座っている川本さんに声を掛けると、彼は岬を見て、シャキーンと立ち上がり、
「はいっ」
と言う。この人はこういう性格なんだなと段々岬も分かってきた。そして隣にいる女の子に目をやってから、
「彼女が夕利さん?」
と訊ねると、川本さんは大きく頷いて言った。
「はい、そうです。ご両親の承諾を得て、あともちろん夕利の理解も得て、ここへ連れてきました」
「そうですか。ではとりあえず相談室へ行きましょう」
「はいっ」
そして岬の導きに従って、三人は相談室へ入っていった。ソファーに腰を落ち着け、岬はそっと夕利を眺めると、確かに可愛らしい子で、でも彼女の周りには彼女に似つかわしくない黒い空気が立ちこめている気がした。岬は一呼吸おいてから話し掛けた。
「夕利さん、初めまして」
夕利は岬の言葉に小さく頷いてから岬を見たが、すぐ視線を逸らしてしまった。岬は続けて声を掛けることにした。
「今日、学校へ行った?」
「はい」
「何かいいことあった?」
「……別に」
「じゃ、夕利さんが話したいこと、何かある?」
そこまで質問を推し進めると、彼女は完全に黙りこんでしまった。それは岬に対して悪気があるのではなく、どうしたらいいのか分からないとピュアに戸惑っている様子が、ありありと伝わってきたのだった。
(奥の手だ)
岬はそう心の中で呟くと、夕利から視線を外して言った。
「夕利さん、動物は好き?」
「え、……はい」
「犬はどう」
「好き……です」
「ネコはどう」
「好き」
「じゃ、ちょっと待ってて」
そう言うと、頭の中でクエスチョンマークを浮かべている様子の川本さんと夕利を残して部屋を出ていき、事務室に入って、岬の机の上で呑気に伸びをしているミチを抱きかかえて、足早に相談室へ戻った。そして中へ入ると真っ先に川本さんが愕然とした顔で叫んだ。
「ネコだ!」
夕利も目を丸くしてミチを見つめているので、やっと感情が出たなと思いながら、夕利に説明した。
「このネコはミチと言います。ネコの寄り道の飼いネコで、私が主な飼い主です」
「ミチ」
「ウミャッ」
ミチはお得意の愛想のよさを発揮し、夕利の元へ行こうと岬の肩の上でバタバタ暴れた。
「ミチが夕利さんと友達になりたがっている。ミチのこと、抱いてくれるかな」
岬の言葉に夕利は驚きながらもコクンと頷いた。岬はミチを手渡して、彼女の膝の上で丸くなったミチを撫ぜ始めた様子を見ていると、ミチは夕利にぐりぐりと頭をこすりつけ、思わず夕利が少し笑ったことに気付いた。これは大丈夫だろうと踏んで、岬は川本さんに話し掛けた。
「川本さん」
「……はっ、ハイ?」
「相談室の外で、少し話したいことが」
「外ですか? はいっ、分かりました」
「では行きましょう」
そう言い合うと、連れ立って二人は外に出た。そして人がいないトイレの側まで行って、岬が足をとめると、川本さんは元気に明るく話しかけた。
「それで、お話って何ですか?」
「特にありません」
「は?」
「実は、夕利さんとミチを二人っきりにしたくって」
「ネコと夕利を? でもネコは話しませんよ。それじゃ相談にならないんじゃ……」
「喋る前に彼女をリラックスさせたかったのです。彼女の緊張感は相当なものでしたから」
「え、そうでしたか? それは全然気付かなかったなあ」
「確かに川本さんは、そういうことに鈍そう」
「あっ、酷いこと言ってくれますね」
「いえ、けなしてません。むしろ褒めてます。その鈍さがきっと川本さんを守ってくれていると思うから」
「あまり褒められた気がしないなあ」
そう言うと彼は苦笑いをして、ぼりぼり頭を掻いた。そして二人はふと見つめ合い、何か言うべき言葉を探していたのだが、岬は口を開いたり閉じたりしながら、気付けばこんなことを口にしていた。
「実は私、朝からずっと川本さんのことを考えていました」
「僕のことを? それはなぜ」
「なぜ……。なぜでしょう、自分でも理由がわかりません。もしかすると川本さんに会いたいと思っていたのかもしれないです」
「あ、それは嬉しいですね」
「そうですか?」
「そうですよ。僕みたいな人間に会いたいと思ってくれる女の人がいるなんて、正直嬉しいです、モテている気がして」
「いえ、あの、別に、そういう意味じゃなく……」
「僕はね、高野さんはすごいなと思っているんですよ」
「?」
「だって困っている人たちに、分け隔てなく手を差し伸べる仕事をしているなんて、まるで天使みたいでしょう」
「全然そんなことはない。もし川本さんが私の心を覗いたら、そのどす黒さにびっくりしますよ」
「あ、どす黒さなら僕も負けていないです。もしかして僕ら、似た者同士なんでしょうか」
「それはどうだか。ではそろそろ相談室に戻ってみましょうか」
「そうですね」
そして二人は生真面目な顔になり、再び相談室へ向かって、ドアを開けた。すると―。
夕利はミチをぎゅっと抱きしめて、ボロボロと泣いていたのである。川本さんはびっくりして彼女に駆け寄り、
「どうした、夕利!」
と声を掛けた。すると夕利はうわあああと泣き出した。川本さんはオロオロしながらも彼女の肩に手を置き、様子を窺っていたが、やがて夕利はゆっくりゆっくり喋りはじめた。
「か、川本先生。……っく」
「うん?」
「私、どう、人と……、付き合えばいいのか、っく、分からないです」
「人との付き合いが? 君はちゃんと人付き合いができていたよ。だから今まで通りでいいんじゃ、」
「そんなことない。みんなが、……クラスメートが私のことを無視してる」
「いじめにあっているのかい?」
「いじめっていうか……、みんなから疎外されている感じ。だから話しかけられても、……っく、どう話せばいいのか分からなくて、怖くなる。きちんと、自分の意見を話せるようになりたいです」
岬は真剣に二人の会話に耳を傾けていたが、ようやく夕利の悩みの原点を見た気がした。彼女は思春期だったら誰もが多かれ少なかれ感じる、アイディンティの確立について悩んでいたのだ。しかも話を聞く限り、彼女の中ではまだ自己の確立がしっかりとできていない。自分の過去の経験と照らし合わせても、これは一朝一夕に解決できることではないなと岬は感じた。そこまで考えると、岬はするりと二人の会話に割り込んだ。
「夕利さん、ミチはどうしてた?」
「……え、私の手を舐めたり、じっと私を見たりして……」
「どう、ミチのことが好きになった?」
「うん、好き。凄く可愛い」
「じゃ、またここにおいで。そうしたら、ミチに会わせてあげる」
「ほんと?」
そう言った夕利の瞳は、ここに来て初めて自然で素直な輝きを見せた。岬はにっこり笑い、すべての不信を拭い去るように、しっかりと頷いてみせた。
岬は動物用のキャリーバッグにミチを入れて出勤し、その重さで手をじんじん痺れさせながら、何とかネコの寄り道までたどり着いた。そして待合室で待っている人たちに軽く頭を下げつつ、事務室に入っていくと、いつも通りに和子と夏が、仕事に対する緊張感をほぐすように雑談をしていた。が、岬の手元に目をやると、二人とも目を丸くして、少しの間呆気にとられてから口々に言った。
「岬、何を持ってきたの?」
「それ何?」
岬はキャリーバッグを机の上にドスンと置き、中を覗いてからあっさりと答えた。
「ネコ」
「猫?」
「ねこぉ~?」
「家の飼いネコ」
そしてミチをバッグから取り出すと、和子は動作が固まり、真顔で呟いた。
「嘘でしょ」
一方夏は満面の笑顔で近づいてきて、ミャーと鳴いているミチをまじまじと見てから言った。
「すごくかわい~。私に抱かせて、抱かせて」
「どうぞ」
岬から手渡されたミチをそっと抱いた夏は、よしよしと言いながらミチを撫でて、嬉しそうに言った。
「きゃ~。なんかね、自分の子供ができたって感じ」
「それは大げさだわ。で、岬はこのネコをどうするつもりなの」
「相談に使う」
「……。ネコって喋らないよね」
「沈黙は金」
「うー、でもネコは営業には使えないよ」
「それはなぜ」
「テレビで見たことがあるけれど、ネコカフェとか、動物を使うのって、大量の許可をとらないとできないはずだもの」
「そうなんだ」
「でもとりあえず川崎先生に相談してみたらあ? まあ、そもそもこの相談所のボスの承諾なしに、ネコを置くことはできないしさあ。おお、どうした、どうした」
夏の提案に反応するみたいに、ミチは彼女の肩の上でミャアミャア鳴いていた。このネコはその鳴き声の可愛さで、数多くのネコ好きをメロメロにしてきたことを、ふと岬は思い出した。
「じゃ、まず先生に相談する。夏と和子は、ネコを置くことには賛成? それとも反対?」
「どっちでもいい」「私はいいよ~。このネコよさそうな子みたいだし」
岬はすっかり夏になついてしまったミチを彼女の肩から引き剝がし、自分の肩に乗せて緊張しつつ、診察室へ向かった。そして軽くドアをノックして、中へ入っていくと、川崎先生は岬を見つめ、次にネコを凝視してから言った。
「高野さん、なんじゃそりゃ」
「ネコです」
「それは言わなくても分かる。どうしてそんなものがここに? 通勤途中で拾ったの」
「いえ、れっきとした私の飼いネコです。名前はミチ」
「ネコがネコの寄り道にやってきた。よくできたジョークみたい……、じゃ済まされないぞ」
「川崎先生、私はミチを相談に使いたいと思っています」
「なんでそんなことを思いついたわけ?」
「ここには人に対する恐れを抱いた人が多くやってきます。そして私のような人間の相談員に対し、うまく話せないという悩みを抱えている人も、きっといることでしょう」
「うん」
「だとしたら、ネコにだったら話せるのではないかと」
「……なるほど。面白い考えだね」
「でも和子によれば、ネコを営業に使うためには、数多くの問題を乗り越えなければならないらしく……、」
「うん。だったら『看板ネコ』にすれば?」
「看板ネコ?」
「つまり相談者としてミチを使わず、ネコの寄り道のシンボルかつペットにすれば?」
「ミチは私のペットです」
「だから高野さんとネコの寄り道の二つを兼業してもらえばいいんでないの、ミチには」
「それなら問題ない?」
「おそらく。ただしくれぐれもネコトラブルは起こさないようにしてほしい。その責任については全面的に高野さんに任せたいんだが。できそうかな?」
「……。今覚悟を決めました」
「そうか。じゃあちょっと僕にミチを撫でさせてくれ」
「どうぞ」
そう言うと岬は川崎先生の元まで行って、身を乗り出しているミチを差し出した。川崎先生はミチの耳の後ろを掻きながら次第に緩い笑顔を浮かべ、囁くように言った。
「これからどうぞよろしく、ミチ」
川崎先生のOKが出たことを和子と夏に伝えると、二人ともにやっと笑って、よかったねと口々に言った。そして事務室で放し飼いする許しをもらい、ミチは最初耳をピンと立てて、警戒心と好奇心を露わにしていたが、一通り部屋の造りを確認してから、大あくびをして窓辺の日の当たる場所に丸くなって眠り始めた。
その日、岬はミチのパワーを知るために、できる限りのことをした。まず相談者にネコを連れてきてもいいですか? と必ず聞くことから始めた。するとほぼ全員が驚きの表情をして岬を見つめる。そこへすかさず続けて、実はネコの寄り道でネコを飼うことにしたんですと説明すると、ああとか、ウッとか、へぇ~とか、人それぞれ違った反応を示した。そして許可が出たときにだけ、ミチを事務室から相談室へ移動させるのだが、待合室をネコを抱えながら通るとき、全員の相談者がミチに釘付けになっていることを岬はびんびんと感じていた。どうも自分は少し滑稽なことをやっているらしいと心で呟いたが、いざミチと一緒に相談者の話に耳を傾け始めると、早々にネコに合うタイプと合わないタイプの人がいることに気付いた。
ミチのことを全く気にせず、自分の苦しみをいつも通りに話す人も多くいたが、逆にどうしてもミチに目が行ってしまい、気もそぞろになって相談しにくくなる人もそれなりにいる。でもミチが相談者の元へ行き、動物らしい迷いのない目でスッと見つめると、今まで笑いを忘れていた人が目を細め、思わず笑顔になる場面を岬は何回か目にした。それはミチが巻き起こす小さな奇跡であり、これはいけるかもしれないと一層確信を深めた出来事でもあった。
「帰ってきたよ、ミチ」
そう言いながら岬は自分の家のドアを開けた。それからキャリーバッグを玄関に置き、ふたを開けると、中からミチが飛び出して、一目散に部屋の奥へ向かって駆けてゆく。
「ありゃ、どうしたの」
そう言って岬が後を追うと、ミチは用を足している真っ最中だった。そしてトイレを済ませてネコ砂をばっ、ばっ、と激しく蹴り上げてから、今度は餌をがつがつと食べ始めた。
「今日はもしかして、おまえなりに大変な一日だったのかも」
そう言って岬は優しく笑うと、いつもするようにテーブルに夕食を並べながら、ミチに聞こえるように一人で喋りはじめた。
「ミチはどうだったかな。色々な人と出会えたから、おまえの狭い世界が少しは広がったのではないかと思うんだけれども」
「ニャー」
「それにしても人見知りをしないネコだね。君はどんな相談者さんにもなついていたもの」
「ニャニャ」
岬は鞄を持って自分の部屋に行き、荷物の整理を済ませ、部屋着に着替えてから再びリビングに戻ってくると、ミチはテーブルの下で丸くなって、目をしっかり閉じ、眠りについたようだった。
「お疲れさん」
ミチに声を掛けて、岬は弁当を突きつつ自分の世界へ落ちていった。
(ミチの存在が相談者の心にどう影響を及ぼすのか。可能性は未知数だし、時に問題が起きる場合もあるだろう。でもそこは私がしっかり事態を見極めないと。川崎先生が言ったように、ネコの件はすべて私に責任がある)
お茶を飲みながらぼうっとする時間を楽しんでいた岬は、ふっとあることを思い出した。
(そういえば明日、川本新さんの予約が入っていたんだっけ。夕利という女の子は一緒に来るだろうか。考えてみれば、ミチを相談に使おうと思ったのは、彼女がいたからこそだった)
そして頬杖をつきながら色々なことを考えていたが、
「夕利ちゃんが猫嫌いだったらどうしよう」
と誰に言うともなく呟いた。とにかく川本さんと同じく、なぜ喋れなくなったのか、その理由を岬も知りたいと思っていた。でも彼女の中で心の整理がつかず、うまく喋ることができないかもしれない。いや、喋れなくても構わないのだ。まず自分の心の現状を客観視できるようになることが大事なのである。
(今日はここまで。後は明日考えよう)
そう決断すると岬は弁当を平らげ、頭を切りかえて、歯磨きのために洗面所へ向かった。
次の日、ミチと一緒にネコの寄り道に着いた岬の心は、なぜかそわそわしていた。川本さんと夕利に会うことを考えると、心がざわついてくるのだ。自分で自分の心理が理解できず、戸惑いながらいつものように事務室へ入っていけば、部屋の中には和子しかいず、不思議に思った岬は訊ねた。
「夏は?」
「今、川崎先生と話し合ってる。夏の担当している人をどうすべきかについて、相談しているみたい」
「そうか。問題は一人きりで背負っちゃいけない」
「そうね。私たちは一つのチームとしてお互いを支え合うべきだわ」
「……。ね、和子」
「ん? どうしたの」
「私、今日は少し変な気がする」
「変って、岬が? 私には別段変わったようには見えないけれど」
「何だかね、サンタクロースがやってくるのを、寝ながら待つ子供みたいな気分」
「分かりにくい例えね。ときめいているって感じなのかしら……。でも鬱的じゃないのなら、特に問題はないんじゃないの? っていうか、むしろそれはいいことなのかもしれないよ」
「そうか」
「岬は感じやすいたちよね。長所かもしれないけれど、でも人生を迷わず進むためには、ぶれても行く先を見失わないように、根は図太くはっていかないと」
「うう、十四歳も年下の人から、人生論を諭されるとは」
「私、岬と話していると、いつも自分が姉御になったような気分になってくるんだ。あ、夏が来た」
夏は事務室のドアを半開きにして、二人に声を掛けた。
「ねえ、始まる時間だよ~。川崎先生が来てって」
「分かった」
和子はそう返事して岬と頷き合うと、事務室を後にして診察室へ向かった。
その日は平穏な一日だった。絶え間なく人は来たが、忙しすぎるということもなく、岬は単調な仕事のペースに飲み込まれて、事務室にいるときに頭がぼーっとするほどだった。そして窓の外の世界が薄オレンジ色に染まり出したとき、朝からずっと気になっていた川本さんがとうとうやってきた。彼は制服姿の女の子を連れており、あの子が夕利ちゃんか? と憶測しながら、岬は時刻を確認して事務室を出ていった。
「お元気でしたか」
生真面目な顔をして椅子に座っている川本さんに声を掛けると、彼は岬を見て、シャキーンと立ち上がり、
「はいっ」
と言う。この人はこういう性格なんだなと段々岬も分かってきた。そして隣にいる女の子に目をやってから、
「彼女が夕利さん?」
と訊ねると、川本さんは大きく頷いて言った。
「はい、そうです。ご両親の承諾を得て、あともちろん夕利の理解も得て、ここへ連れてきました」
「そうですか。ではとりあえず相談室へ行きましょう」
「はいっ」
そして岬の導きに従って、三人は相談室へ入っていった。ソファーに腰を落ち着け、岬はそっと夕利を眺めると、確かに可愛らしい子で、でも彼女の周りには彼女に似つかわしくない黒い空気が立ちこめている気がした。岬は一呼吸おいてから話し掛けた。
「夕利さん、初めまして」
夕利は岬の言葉に小さく頷いてから岬を見たが、すぐ視線を逸らしてしまった。岬は続けて声を掛けることにした。
「今日、学校へ行った?」
「はい」
「何かいいことあった?」
「……別に」
「じゃ、夕利さんが話したいこと、何かある?」
そこまで質問を推し進めると、彼女は完全に黙りこんでしまった。それは岬に対して悪気があるのではなく、どうしたらいいのか分からないとピュアに戸惑っている様子が、ありありと伝わってきたのだった。
(奥の手だ)
岬はそう心の中で呟くと、夕利から視線を外して言った。
「夕利さん、動物は好き?」
「え、……はい」
「犬はどう」
「好き……です」
「ネコはどう」
「好き」
「じゃ、ちょっと待ってて」
そう言うと、頭の中でクエスチョンマークを浮かべている様子の川本さんと夕利を残して部屋を出ていき、事務室に入って、岬の机の上で呑気に伸びをしているミチを抱きかかえて、足早に相談室へ戻った。そして中へ入ると真っ先に川本さんが愕然とした顔で叫んだ。
「ネコだ!」
夕利も目を丸くしてミチを見つめているので、やっと感情が出たなと思いながら、夕利に説明した。
「このネコはミチと言います。ネコの寄り道の飼いネコで、私が主な飼い主です」
「ミチ」
「ウミャッ」
ミチはお得意の愛想のよさを発揮し、夕利の元へ行こうと岬の肩の上でバタバタ暴れた。
「ミチが夕利さんと友達になりたがっている。ミチのこと、抱いてくれるかな」
岬の言葉に夕利は驚きながらもコクンと頷いた。岬はミチを手渡して、彼女の膝の上で丸くなったミチを撫ぜ始めた様子を見ていると、ミチは夕利にぐりぐりと頭をこすりつけ、思わず夕利が少し笑ったことに気付いた。これは大丈夫だろうと踏んで、岬は川本さんに話し掛けた。
「川本さん」
「……はっ、ハイ?」
「相談室の外で、少し話したいことが」
「外ですか? はいっ、分かりました」
「では行きましょう」
そう言い合うと、連れ立って二人は外に出た。そして人がいないトイレの側まで行って、岬が足をとめると、川本さんは元気に明るく話しかけた。
「それで、お話って何ですか?」
「特にありません」
「は?」
「実は、夕利さんとミチを二人っきりにしたくって」
「ネコと夕利を? でもネコは話しませんよ。それじゃ相談にならないんじゃ……」
「喋る前に彼女をリラックスさせたかったのです。彼女の緊張感は相当なものでしたから」
「え、そうでしたか? それは全然気付かなかったなあ」
「確かに川本さんは、そういうことに鈍そう」
「あっ、酷いこと言ってくれますね」
「いえ、けなしてません。むしろ褒めてます。その鈍さがきっと川本さんを守ってくれていると思うから」
「あまり褒められた気がしないなあ」
そう言うと彼は苦笑いをして、ぼりぼり頭を掻いた。そして二人はふと見つめ合い、何か言うべき言葉を探していたのだが、岬は口を開いたり閉じたりしながら、気付けばこんなことを口にしていた。
「実は私、朝からずっと川本さんのことを考えていました」
「僕のことを? それはなぜ」
「なぜ……。なぜでしょう、自分でも理由がわかりません。もしかすると川本さんに会いたいと思っていたのかもしれないです」
「あ、それは嬉しいですね」
「そうですか?」
「そうですよ。僕みたいな人間に会いたいと思ってくれる女の人がいるなんて、正直嬉しいです、モテている気がして」
「いえ、あの、別に、そういう意味じゃなく……」
「僕はね、高野さんはすごいなと思っているんですよ」
「?」
「だって困っている人たちに、分け隔てなく手を差し伸べる仕事をしているなんて、まるで天使みたいでしょう」
「全然そんなことはない。もし川本さんが私の心を覗いたら、そのどす黒さにびっくりしますよ」
「あ、どす黒さなら僕も負けていないです。もしかして僕ら、似た者同士なんでしょうか」
「それはどうだか。ではそろそろ相談室に戻ってみましょうか」
「そうですね」
そして二人は生真面目な顔になり、再び相談室へ向かって、ドアを開けた。すると―。
夕利はミチをぎゅっと抱きしめて、ボロボロと泣いていたのである。川本さんはびっくりして彼女に駆け寄り、
「どうした、夕利!」
と声を掛けた。すると夕利はうわあああと泣き出した。川本さんはオロオロしながらも彼女の肩に手を置き、様子を窺っていたが、やがて夕利はゆっくりゆっくり喋りはじめた。
「か、川本先生。……っく」
「うん?」
「私、どう、人と……、付き合えばいいのか、っく、分からないです」
「人との付き合いが? 君はちゃんと人付き合いができていたよ。だから今まで通りでいいんじゃ、」
「そんなことない。みんなが、……クラスメートが私のことを無視してる」
「いじめにあっているのかい?」
「いじめっていうか……、みんなから疎外されている感じ。だから話しかけられても、……っく、どう話せばいいのか分からなくて、怖くなる。きちんと、自分の意見を話せるようになりたいです」
岬は真剣に二人の会話に耳を傾けていたが、ようやく夕利の悩みの原点を見た気がした。彼女は思春期だったら誰もが多かれ少なかれ感じる、アイディンティの確立について悩んでいたのだ。しかも話を聞く限り、彼女の中ではまだ自己の確立がしっかりとできていない。自分の過去の経験と照らし合わせても、これは一朝一夕に解決できることではないなと岬は感じた。そこまで考えると、岬はするりと二人の会話に割り込んだ。
「夕利さん、ミチはどうしてた?」
「……え、私の手を舐めたり、じっと私を見たりして……」
「どう、ミチのことが好きになった?」
「うん、好き。凄く可愛い」
「じゃ、またここにおいで。そうしたら、ミチに会わせてあげる」
「ほんと?」
そう言った夕利の瞳は、ここに来て初めて自然で素直な輝きを見せた。岬はにっこり笑い、すべての不信を拭い去るように、しっかりと頷いてみせた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
みいちゃんといっしょ。
新道 梨果子
ライト文芸
お父さんとお母さんが離婚して半年。
お父さんが新しい恋人を家に連れて帰ってきた。
みいちゃんと呼んでね、というその派手な女の人は、あからさまにホステスだった。
そうして私、沙希と、みいちゃんとの生活が始まった。
――ねえ、お父さんがいなくなっても、みいちゃんと私は家族なの?
※ 「小説家になろう」(検索除外中)、「ノベマ!」にも掲載しています。
恋と呼べなくても
Cahier
ライト文芸
高校三年の春をむかえた直(ナオ)は、男子学生にキスをされ発作をおこしてしまう。彼女を助けたのは、教育実習生の真(マコト)だった。直は、真に強い恋心を抱いて追いかけるが…… 地味で真面目な彼の本当の姿は、銀髪で冷徹な口調をふるうまるで別人だった。
日本酒バー「はなやぎ」のおみちびき
山いい奈
ライト文芸
★お知らせ
いつもありがとうございます。
当作品、3月末にて非公開にさせていただきます。再公開の日時は未定です。
ご迷惑をお掛けいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
小柳世都が切り盛りする大阪の日本酒バー「はなやぎ」。
世都はときおり、サービスでタロットカードでお客さまを占い、悩みを聞いたり、ほんの少し背中を押したりする。
恋愛体質のお客さま、未来の姑と巧く行かないお客さま、辞令が出て転職を悩むお客さま、などなど。
店員の坂道龍平、そしてご常連の高階さんに見守られ、世都は今日も奮闘する。
世都と龍平の関係は。
高階さんの思惑は。
そして家族とは。
優しく、暖かく、そして少し切ない物語。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
十年目の結婚記念日
あさの紅茶
ライト文芸
結婚して十年目。
特別なことはなにもしない。
だけどふと思い立った妻は手紙をしたためることに……。
妻と夫の愛する気持ち。
短編です。
**********
このお話は他のサイトにも掲載しています
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる