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戸惑いの中で2
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扉を開いて外へ出ると、ざわざわしている不穏な気配がすぐに伝わってきました。私とクレアはお互いに顔を見交わすと、何となくリビングの方へ歩いていきました。階段を下り、廊下を通り過ぎて、とても広いリビングに出ると、そこにいる大勢の者たちのイライラした感情が、嫌でも伝わってきます。クレアは「キャッ」と言い、私にしがみついてしまいました。そのとき。
「あんた、賢者の人かい? 」
いきなり背後から声を掛けられて、びくっとして振り返ると、頭から二本の角を生やした怪しげな人が、憮然とした様子で立っています。私は軽く咳払いをし、答えました。
「賢者ではありませんが、薬草師です。何かお困りでも? 」
「お困りもなんも、俺を含めてここにいる連中は、皆じりじりしているよ。なんだか時が止まったかのような、やり場のなさでさ。どうしたらいいのか全然分からないんだ。外は相変わらずの酷すぎる嵐で、帰りたくても帰れないし。シュリ様がどうしているのか、あんた知ってる? 」
「シュ、シュリは、ただ今パーティの準備をしています」
「パーティ? 何の? 」
「皆さんが未来へと繋がるためのパーティ。と、ここにいる人たちへの、食事の用意をしてくれています」
「ほー。パーティは何だかよく分からないが、食事は確かにありがたいな。さすがシュリ様、よく気のつくお方だ」
「ところで、あなたは葉っぱを食べたとき、どんなことが起こりましたか? 」
「聞いてくれるかい、そのことを。俺も誰かに話をしたかったんだ。あのな、俺の爺さんと婆さんが出てきてね。俺は二人に育てられたのね」
「はい。ほらクレア、こっちに来て」
「え、エエ、えええ、こんにちは、お客人」
「ああ。何をそんなにびくびくしているんだい。でな、爺さんが、俺のトレードマークのこの頭の角を、立派だなあ、本当に立派だと褒めてくれるんだ。それに婆さんが愛おしげに、角を撫ぜてくれて」
「それは、よかったですね」
「うん。俺、この角を誇りに思っているよ。俺の種族の証だし、かっこいいだろ? 男らしくてさ」
「……。多分」
「でも女の子が怖がるんだよ。ヤギか悪魔みたいだって言ってさ。それで俺はちょっと……、というか大分、この角に自信を無くしていた。でも爺さんと婆さんが認めてくれて。俺はとてもいい気持ちだった。俺は、俺はこのままでいいんだって、俺の存在自体まで自信を持ててさ」
「素晴らしい」
二本の角を持つ男性はにっこりと笑い、うっとりと角に触れながら、思い出に浸り始めました。そのとき。
「あんた、賢者の人かい? 」
いきなり背後から声を掛けられて、びくっとして振り返ると、頭から二本の角を生やした怪しげな人が、憮然とした様子で立っています。私は軽く咳払いをし、答えました。
「賢者ではありませんが、薬草師です。何かお困りでも? 」
「お困りもなんも、俺を含めてここにいる連中は、皆じりじりしているよ。なんだか時が止まったかのような、やり場のなさでさ。どうしたらいいのか全然分からないんだ。外は相変わらずの酷すぎる嵐で、帰りたくても帰れないし。シュリ様がどうしているのか、あんた知ってる? 」
「シュ、シュリは、ただ今パーティの準備をしています」
「パーティ? 何の? 」
「皆さんが未来へと繋がるためのパーティ。と、ここにいる人たちへの、食事の用意をしてくれています」
「ほー。パーティは何だかよく分からないが、食事は確かにありがたいな。さすがシュリ様、よく気のつくお方だ」
「ところで、あなたは葉っぱを食べたとき、どんなことが起こりましたか? 」
「聞いてくれるかい、そのことを。俺も誰かに話をしたかったんだ。あのな、俺の爺さんと婆さんが出てきてね。俺は二人に育てられたのね」
「はい。ほらクレア、こっちに来て」
「え、エエ、えええ、こんにちは、お客人」
「ああ。何をそんなにびくびくしているんだい。でな、爺さんが、俺のトレードマークのこの頭の角を、立派だなあ、本当に立派だと褒めてくれるんだ。それに婆さんが愛おしげに、角を撫ぜてくれて」
「それは、よかったですね」
「うん。俺、この角を誇りに思っているよ。俺の種族の証だし、かっこいいだろ? 男らしくてさ」
「……。多分」
「でも女の子が怖がるんだよ。ヤギか悪魔みたいだって言ってさ。それで俺はちょっと……、というか大分、この角に自信を無くしていた。でも爺さんと婆さんが認めてくれて。俺はとてもいい気持ちだった。俺は、俺はこのままでいいんだって、俺の存在自体まで自信を持ててさ」
「素晴らしい」
二本の角を持つ男性はにっこりと笑い、うっとりと角に触れながら、思い出に浸り始めました。そのとき。
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