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光を求めて2
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「この草を食べましたか? 」
「いや、食べていない」
「一枚だけでいいので、食べてみてください。あなたを幸せにし、あなたを悩みから救います」
「あ、あれだろ、さっき草を食べた人から聞いた……。変容を、促すんだろう? 」
「おっしゃる通りです」
「私は……、怖いんだ、自分が変わってしまうのが。今の自分が好きなわけではないが、一度変われば、後戻りはできない。それが―」
「私は、実は二枚、この葉を食べています」
「二枚も? 」
「はい。そして確かに未来に導かれたことを知っています、この葉によって。どのみち私たちは未来へ進んでいきます。どんなに嫌がっても、その流れを避けることはできない。だから流れに乗るために、あなたには今、この葉が必要なのです」
「怖いんだ。怖いんだよ……。この葉だって、未来だって。ああもう、何もかもが……」
「なら、目を閉じてください」
「う、うん」
「口を開けて」
「あ、あが、ごうがい? 」
「未来は明るい所です。安心して、そして信じてください」
そう言うと、さっと葉を口に放り込み、男性は反射的に口を閉じました。彼は驚いた顔をしましたが、どんどん柔らかい表情になっていき、楽しげに口笛を吹き始めました。もう大丈夫だと思った私は、その男性から離れました。そのとき。
「やってるかい? 」
と軽く声を掛けられて振り返ると、賢者の一人である青年が立ち、輝いた目で私を見ています。私はふうと息を吐き、答えました。
「ぼちぼちです」
「外にいる者たちは、全員家の中に避難させたよ。そのせいで、今はこの家がパンクしそうだけどね」
「そうですか。それはよかった」
すると青年は、すっと複雑な表情を浮かべ、言いました。
「もう夜が訪れている。外は世界が消し飛びそうな嵐で、とてもいられたもんじゃない。この天気じゃ、この家にいるもの全員が、一晩はここで過ごさなきゃいけないだろうな」
「仕方がないです。何か問題でも? 」
「いや、カベーの言葉、光が消える。世界が一旦停止する。また新しく輝きだした光に向かって動き出す。これってさ。もしかしてこれからここで起こることじゃないの? 」
「夜が来る―。確かに光が消えましたね。なら次の言葉、世界が一旦停止するとは? 」
「俺にも分からない。ただここにいる人々は、俺たち賢者も含めて、全員がこの草を食べている。それが引き金となって、何かが起きるのかもしれない……。そんな気がするんだ。あ、俺も草を配るのを手伝うよ」
「なら、お願いします。必ず一枚ずつ渡して、事前にもう食べたかどうか、確認するのを忘れないように」
「分かった。草の効果はどうなの」
「はっきり言って、絶大です」
そう言い、彼に持てるだけの草を渡すと、彼は笑顔になって草を手にし、遠くへ散っていきました。
「いや、食べていない」
「一枚だけでいいので、食べてみてください。あなたを幸せにし、あなたを悩みから救います」
「あ、あれだろ、さっき草を食べた人から聞いた……。変容を、促すんだろう? 」
「おっしゃる通りです」
「私は……、怖いんだ、自分が変わってしまうのが。今の自分が好きなわけではないが、一度変われば、後戻りはできない。それが―」
「私は、実は二枚、この葉を食べています」
「二枚も? 」
「はい。そして確かに未来に導かれたことを知っています、この葉によって。どのみち私たちは未来へ進んでいきます。どんなに嫌がっても、その流れを避けることはできない。だから流れに乗るために、あなたには今、この葉が必要なのです」
「怖いんだ。怖いんだよ……。この葉だって、未来だって。ああもう、何もかもが……」
「なら、目を閉じてください」
「う、うん」
「口を開けて」
「あ、あが、ごうがい? 」
「未来は明るい所です。安心して、そして信じてください」
そう言うと、さっと葉を口に放り込み、男性は反射的に口を閉じました。彼は驚いた顔をしましたが、どんどん柔らかい表情になっていき、楽しげに口笛を吹き始めました。もう大丈夫だと思った私は、その男性から離れました。そのとき。
「やってるかい? 」
と軽く声を掛けられて振り返ると、賢者の一人である青年が立ち、輝いた目で私を見ています。私はふうと息を吐き、答えました。
「ぼちぼちです」
「外にいる者たちは、全員家の中に避難させたよ。そのせいで、今はこの家がパンクしそうだけどね」
「そうですか。それはよかった」
すると青年は、すっと複雑な表情を浮かべ、言いました。
「もう夜が訪れている。外は世界が消し飛びそうな嵐で、とてもいられたもんじゃない。この天気じゃ、この家にいるもの全員が、一晩はここで過ごさなきゃいけないだろうな」
「仕方がないです。何か問題でも? 」
「いや、カベーの言葉、光が消える。世界が一旦停止する。また新しく輝きだした光に向かって動き出す。これってさ。もしかしてこれからここで起こることじゃないの? 」
「夜が来る―。確かに光が消えましたね。なら次の言葉、世界が一旦停止するとは? 」
「俺にも分からない。ただここにいる人々は、俺たち賢者も含めて、全員がこの草を食べている。それが引き金となって、何かが起きるのかもしれない……。そんな気がするんだ。あ、俺も草を配るのを手伝うよ」
「なら、お願いします。必ず一枚ずつ渡して、事前にもう食べたかどうか、確認するのを忘れないように」
「分かった。草の効果はどうなの」
「はっきり言って、絶大です」
そう言い、彼に持てるだけの草を渡すと、彼は笑顔になって草を手にし、遠くへ散っていきました。
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