32 / 57
変容のとき
しおりを挟む
「ここまで運んだからね」
「ありがとう、タイム」
「じゃ、俺は帰る。これからすることがあるんでしょ」
「そうね、色々と。タイムには感謝しているわ、本当に」
「大げさだなあ。じゃ、いくらくれるの?」
「私達、お金で結びつく関係になりたくないの」
「ジョークに決まってるじゃん。じゃあ、またね! 」
「うん、また」
私はタイムがスキップして森に消えていくのを見届けてから、二つの馬鹿でかい巾着袋を背負って、自分の家の中へ入りました。テーブルの上にどすどすと袋を置くと、室内の色彩が目に飛び込んできます。色彩があることの楽しさを改めて感じ入りながら、私は考えました。
(シュリに、この草を届けないといけないのだけれど……)
(シュリは今、どうなっているのだろうか。この間行ったときも、かなりてんやわんやしていたよね)
(できるだけ早くいった方がいい。それは確か)
そこまで思考を辿ってから、私は声に出して言いました。
「シシ! 」
「寝てるよ! 」
「起きているじゃない。シシに予言してほしいの」
「任せとけ! 」
「これから天気はどうなる? 」
「ウッシッシッシッ」
「……笑える事態になるの? 」
「嵐! 絶対嵐! すごーく、すごーく」
「嵐ね。そっか……。となると、シュリの家になるたけ早く行った方がいいか」
「大変になるよ! 」
「本当に? ならなおさらだ」
「行け! トイ」
「分かった。なら準備をする」
私はそう言って、まず雑用をやっつけ始めました。トイレに行ったり、シシの食料をシシの箱の中へ入れたり、やり残していた家事を済ませたり。それから光り輝く草を前にして、一杯だけ青々草のお茶を飲みながら、思考を整理し、バックパックの中身を整えて、深呼吸をしました。そうやって心を定めると、言いました。
「シシ、行ってくる」
「勝手にしろ! 」
「食料はたくさん入れたけど、籠の中に一杯ナッツが入っているから、足りないときはそこから食べるように。お水もボウル一杯に入れたからね。一週間は軽く持つでしょう」
「勝手な奴! 」
「まあね。ただいつ帰ってこられるか分からないんだ。じゃあね」
そう言葉を残して、私はバックパックを背負い、二つの袋を肩に背負って、再び家から出ました。
「ありがとう、タイム」
「じゃ、俺は帰る。これからすることがあるんでしょ」
「そうね、色々と。タイムには感謝しているわ、本当に」
「大げさだなあ。じゃ、いくらくれるの?」
「私達、お金で結びつく関係になりたくないの」
「ジョークに決まってるじゃん。じゃあ、またね! 」
「うん、また」
私はタイムがスキップして森に消えていくのを見届けてから、二つの馬鹿でかい巾着袋を背負って、自分の家の中へ入りました。テーブルの上にどすどすと袋を置くと、室内の色彩が目に飛び込んできます。色彩があることの楽しさを改めて感じ入りながら、私は考えました。
(シュリに、この草を届けないといけないのだけれど……)
(シュリは今、どうなっているのだろうか。この間行ったときも、かなりてんやわんやしていたよね)
(できるだけ早くいった方がいい。それは確か)
そこまで思考を辿ってから、私は声に出して言いました。
「シシ! 」
「寝てるよ! 」
「起きているじゃない。シシに予言してほしいの」
「任せとけ! 」
「これから天気はどうなる? 」
「ウッシッシッシッ」
「……笑える事態になるの? 」
「嵐! 絶対嵐! すごーく、すごーく」
「嵐ね。そっか……。となると、シュリの家になるたけ早く行った方がいいか」
「大変になるよ! 」
「本当に? ならなおさらだ」
「行け! トイ」
「分かった。なら準備をする」
私はそう言って、まず雑用をやっつけ始めました。トイレに行ったり、シシの食料をシシの箱の中へ入れたり、やり残していた家事を済ませたり。それから光り輝く草を前にして、一杯だけ青々草のお茶を飲みながら、思考を整理し、バックパックの中身を整えて、深呼吸をしました。そうやって心を定めると、言いました。
「シシ、行ってくる」
「勝手にしろ! 」
「食料はたくさん入れたけど、籠の中に一杯ナッツが入っているから、足りないときはそこから食べるように。お水もボウル一杯に入れたからね。一週間は軽く持つでしょう」
「勝手な奴! 」
「まあね。ただいつ帰ってこられるか分からないんだ。じゃあね」
そう言葉を残して、私はバックパックを背負い、二つの袋を肩に背負って、再び家から出ました。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる