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異世界
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私は目で先を促すタイムを、何とも言えない気持ちで見つめ返しながら、空間の穴の中にゆっくりと足を突っ込んで、トン、と降り立ちました。するとそこは、真っ暗な世界でした。
「タイム! 真っ暗で何も見えない! 」
「ただ夜ってだけじゃないの。月が浮かんでいるし」
「えっ」
私の後に続いたタイムが指さした先を見ると、純白の月が、確かに空に浮いています。しばらくすると闇に目が慣れ、そこは広々とした野原であることが分かってきました。その時訪れた直感を、私はタイムに告げました。
「きっと、この野原にカベーはいる」
「何で分かった? 勘か何か? 」
「うん。あのおとぎの世界の野原と、ここは何かが似ているの。通じるものがあるっていうか」
「では、どうしましょう」
「この野原を歩いてみる」
「やみくもに? 」
「それしかないでしょう」
私とタイムは互いに頷き合うと、私を先頭に、足に草の感触を感じながら歩きだしました。
(暗闇の中を無心に歩いていると、様々な思いや記憶が浮かんでくるな)
そう思いながら、自分の思考が沈んでゆくのを、私は感じていました。
(私の人生や、おとぎの世界の行き先は、これでいいのだろうか)
(幸福や、闇の記憶を超え、さらにその先に進んでいきたい思いがある。それを、心の進化と表現してもいいのかも)
(もしかしたら私は、進化と共に、人生を生きてきたのかもしれない。それは自分が思っていたより、遥かに正しい人生の歩み方で、今の世界を生き抜くために、本当に必要なこと)
(そして、おそらく進化から取り残されている、私の父さんと、母さん……)
「トイ」
タイムの言葉で我に返りました。私は慌てて返事をしました。
「何、タイム? 」
「この野原を歩いていると、自分の人生に対する思いが、蘇ってこないか? 色々な思考や思い出とかがさ」
「えっ、タイムもそうなの? 」
「うん。ここって、この野原って、そういうパワーを秘めている場所じゃないのかなあ」
「あ」
「今度は何だよ」
「あっちが、ぼんやりと光っている気がする」
「おう。気がする、じゃないよ。確かに光っている」
「光る草。あそこに行ってみよう、タイム」
「うん」
「タイム! 真っ暗で何も見えない! 」
「ただ夜ってだけじゃないの。月が浮かんでいるし」
「えっ」
私の後に続いたタイムが指さした先を見ると、純白の月が、確かに空に浮いています。しばらくすると闇に目が慣れ、そこは広々とした野原であることが分かってきました。その時訪れた直感を、私はタイムに告げました。
「きっと、この野原にカベーはいる」
「何で分かった? 勘か何か? 」
「うん。あのおとぎの世界の野原と、ここは何かが似ているの。通じるものがあるっていうか」
「では、どうしましょう」
「この野原を歩いてみる」
「やみくもに? 」
「それしかないでしょう」
私とタイムは互いに頷き合うと、私を先頭に、足に草の感触を感じながら歩きだしました。
(暗闇の中を無心に歩いていると、様々な思いや記憶が浮かんでくるな)
そう思いながら、自分の思考が沈んでゆくのを、私は感じていました。
(私の人生や、おとぎの世界の行き先は、これでいいのだろうか)
(幸福や、闇の記憶を超え、さらにその先に進んでいきたい思いがある。それを、心の進化と表現してもいいのかも)
(もしかしたら私は、進化と共に、人生を生きてきたのかもしれない。それは自分が思っていたより、遥かに正しい人生の歩み方で、今の世界を生き抜くために、本当に必要なこと)
(そして、おそらく進化から取り残されている、私の父さんと、母さん……)
「トイ」
タイムの言葉で我に返りました。私は慌てて返事をしました。
「何、タイム? 」
「この野原を歩いていると、自分の人生に対する思いが、蘇ってこないか? 色々な思考や思い出とかがさ」
「えっ、タイムもそうなの? 」
「うん。ここって、この野原って、そういうパワーを秘めている場所じゃないのかなあ」
「あ」
「今度は何だよ」
「あっちが、ぼんやりと光っている気がする」
「おう。気がする、じゃないよ。確かに光っている」
「光る草。あそこに行ってみよう、タイム」
「うん」
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