22 / 57
フララ2
しおりを挟む
「あなたは誰? 」
「トイと言います。薬草師です。なぜ花が滅ばないかというと、種子を作るために花は必要不可欠で、植物が生き続けるために、種子を作ることをやめることはないから、結果として花も滅ばない」
「でも、なんで今、お花が枯れているのですか? 」
「例えて言うと、紅葉が奇麗に色づいて、美しく朽ちていく時と、葉が色づく前に、クシャッと枯れてしまう時があるでしょう? 」
「はい」
「それと似たようなもので、植物自体に悪い所はなくても、その時の気候、もしくは何らかの環境が原因で、花だけが影響を受けて枯れているの」
「なら、は、ハッ、花は、来年も咲きますか? 」
「もちろん。花は植物にとって、未来に繋がる手段なのだから、必ず咲く。花が枯れるのは、あくまで表面的な出来事なんだよ」
シュリは大変冷静な様子で話を聞いていましたが、ふと思いついたように、口を挟みました。
「フララ」
「はい、シュリ様」
「もし良かったら、あなたに試してもらいたいことがあるのです」
「それは、何でしょう」
「幸福になる薬草を、少しだけ食べてもらいたいのです」
「幸福になる、薬草? 」
「効果は一時的なもの―、ですよね、トイ? 」
「……多分そのはずなのだけど」
「シュ、シュリ様、今私は、とても心が不安定なのです」
「フララ、見れば分かりますよ」
「もう一度、安定した幸せな気持ちを取り戻したい。それから、落ち着きたいんです」
「なら、食べてみますか? 何が起こるか、完全に保証はできないのですが」
「―ハイ。試してみます、私」
「トイ、葉っぱを用意したら」
「あ、ああ、うん」
私は急いでバックパックを漁り、袋の中から光る草の葉を、そっと一枚だけ取り出して、フララに渡して言いました。
「この草を口に含んでみてくれる? 」
「ハイ」
フララは大きな瞳をさらに大きくして、深呼吸してから、ぱくっと草を食べたのです。すると……。
「トイと言います。薬草師です。なぜ花が滅ばないかというと、種子を作るために花は必要不可欠で、植物が生き続けるために、種子を作ることをやめることはないから、結果として花も滅ばない」
「でも、なんで今、お花が枯れているのですか? 」
「例えて言うと、紅葉が奇麗に色づいて、美しく朽ちていく時と、葉が色づく前に、クシャッと枯れてしまう時があるでしょう? 」
「はい」
「それと似たようなもので、植物自体に悪い所はなくても、その時の気候、もしくは何らかの環境が原因で、花だけが影響を受けて枯れているの」
「なら、は、ハッ、花は、来年も咲きますか? 」
「もちろん。花は植物にとって、未来に繋がる手段なのだから、必ず咲く。花が枯れるのは、あくまで表面的な出来事なんだよ」
シュリは大変冷静な様子で話を聞いていましたが、ふと思いついたように、口を挟みました。
「フララ」
「はい、シュリ様」
「もし良かったら、あなたに試してもらいたいことがあるのです」
「それは、何でしょう」
「幸福になる薬草を、少しだけ食べてもらいたいのです」
「幸福になる、薬草? 」
「効果は一時的なもの―、ですよね、トイ? 」
「……多分そのはずなのだけど」
「シュ、シュリ様、今私は、とても心が不安定なのです」
「フララ、見れば分かりますよ」
「もう一度、安定した幸せな気持ちを取り戻したい。それから、落ち着きたいんです」
「なら、食べてみますか? 何が起こるか、完全に保証はできないのですが」
「―ハイ。試してみます、私」
「トイ、葉っぱを用意したら」
「あ、ああ、うん」
私は急いでバックパックを漁り、袋の中から光る草の葉を、そっと一枚だけ取り出して、フララに渡して言いました。
「この草を口に含んでみてくれる? 」
「ハイ」
フララは大きな瞳をさらに大きくして、深呼吸してから、ぱくっと草を食べたのです。すると……。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる