おとぎの世界で

桃青

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導き

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「私が悪で、私が全てを壊して、私が両親の存在を全否定して、悪いことは全て私のせいだって……」
「トイ。あなたは『悪』ですか? 」
「もしかしたら、極悪人なんじゃ……」
「どんな悪いことをしましたか? 」
「他人を全否定……」
「私が知る限り、あなたは他人を全否定などしていません。あなたは何を壊しましたか? 」
「両親との関係を……」
「両親との関係を壊した人が、何故その両親に会いに行こうとするのですか? 」
「それは関係を修復するため―」
「修復したいと思う人が、どうしてその関係を壊したのですか? 」
「もしかして私は……、壊そうとしていないのかも……」
「その通りです。その考え方を使って、悪いことが全てトイのせいか、考えてみてください」
「私は……、全否定せず、何も壊さず、だから完全に悪いわけでもなく、……全て私のせいでもない」
「そうです。そもそも全てが一人の力によるものということは、この世界では存在しません。どんなことも、必ず連鎖の上に成り立っています。トイ」
「はい」
「今、トイと似たような問題を持つ者が、この世界に数多く存在します。それは全て、『繋がり』についての問題なのです」
「あっ、あのリビングにいる人々や生き物はもしかして……」
 私の言葉にシュリは静かに頷いて、言いました。
「そうです。繋がりに問題を抱えている生き物たちです。色々な意味において、だけれども」
「私にできることは、何かない? 」
「彼らに、繋がっていた時の記憶を思い出してほしいのです。再び、元の通りに繋がれ、というわけではなく、繋がり方を理解してほしい。その結果、過去の繋がりと切れることもあるかもしれない。けれど、新しい繋がりも、同時に生み出せるのです」
「シュリ。私、昨日面白い薬草を見つけたの」
「ほう。どんな草なのですか? 」
「その人の明るい記憶を思い出させて、幸福感を増幅するの。もしかしたら、ほかの効能もあるかもしれないんだけれど……」
「その草は、たくさんあるのですか? 」
「私は今持っている限りでは、そうだな、千人分くらいはあると思う。でも今の所、これ以上手に入れることはできそうにないんだ」
「不思議な方法でその草を手に入れたようですね。では、全部とは言いません。私に少しだけ、分けてください。どうしようもない気持ちになっている生物の、一時しのぎにすることはできそうです」
「そうだね。なら今持っている分を、半分くらい渡しておく。後日、家にあるものをシュリの家に持ってくるから」
「ありがとう、トイ。助かります」
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