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川のせせらぎの音が、涼しく耳に聞こえてきます。滝の上にあるシュリの家は、川沿いの道を歩いてゆけば、自然に辿り着くことができるのです。霧のような水しぶきを浴びながら、やがて見えてきた滝の側にある、金属製の、小さいけれどもしっかりとした作りの階段を上っていくと、先の方に青い屋根の大きな一軒家が建っているのが見えます。階段を上り終え、とてもカラフルな美しい花園を通り抜けて、水色の扉の前に立ち、そこにぶら下がる銀色のベルをリンリンと鳴らすと、たちまち扉がぱたんと開きました。
「どちら様ですか? 」
家の中から薄緑色の髪をした、しっかりした顔立ちの少年が顔を出して、私に尋ねました。私はおずおずと答えました。
「あの、トイが来たと……、シュリに伝えていただけませんか? 」
「かしこまりました」
少年は素早く扉を閉め、私は外で、光り輝くようなオーラを放っている花園を、ぼーっと眺めていました。すると再びぱたんと扉が開き、少年が言いました。
「シュリ様がお待ちです。僕についてきてください」
「はい」
そう返事して、私は家の中へ足を踏み入れました。薄い水色の内装で統一された涼しげな印象の室内で、最初に目に留まったのは、リビングにいる人々や、様々な生き物たちです。人や精霊、妖精、幻獣など、この世界のオールスターが出揃った感じで、何事だろうと思いながら、私は少年の後を追いました。部屋の奥にある小さな階段を上り、少年に勧められるがまま、目の前の扉を開くと、とても大きな部屋の窓際に置かれたソファーに座っているシュリがいました。彼女は非常に落ち着いた様子で言いました。
「トイ。どうしたのです」
「あ、あの……、取込み中じゃない? 」
「取込み中ですが、私はトイの話が聞きたいのです」
「リビングに色々な生き物や人間がいたけれど―」
「後で事情を説明します。まずは、トイの話からです」
「う、うん、分かった。私ね、両親に会いに行ったの」
「ほう」
「とても心に効果のある、珍しい薬草を見つけて、……それを両親に食べさせたくて。だけど、薬草を食べてくれるどころか、私が存在することすら、全否定されてしまって……」
「全否定とは何でしょう」
「どちら様ですか? 」
家の中から薄緑色の髪をした、しっかりした顔立ちの少年が顔を出して、私に尋ねました。私はおずおずと答えました。
「あの、トイが来たと……、シュリに伝えていただけませんか? 」
「かしこまりました」
少年は素早く扉を閉め、私は外で、光り輝くようなオーラを放っている花園を、ぼーっと眺めていました。すると再びぱたんと扉が開き、少年が言いました。
「シュリ様がお待ちです。僕についてきてください」
「はい」
そう返事して、私は家の中へ足を踏み入れました。薄い水色の内装で統一された涼しげな印象の室内で、最初に目に留まったのは、リビングにいる人々や、様々な生き物たちです。人や精霊、妖精、幻獣など、この世界のオールスターが出揃った感じで、何事だろうと思いながら、私は少年の後を追いました。部屋の奥にある小さな階段を上り、少年に勧められるがまま、目の前の扉を開くと、とても大きな部屋の窓際に置かれたソファーに座っているシュリがいました。彼女は非常に落ち着いた様子で言いました。
「トイ。どうしたのです」
「あ、あの……、取込み中じゃない? 」
「取込み中ですが、私はトイの話が聞きたいのです」
「リビングに色々な生き物や人間がいたけれど―」
「後で事情を説明します。まずは、トイの話からです」
「う、うん、分かった。私ね、両親に会いに行ったの」
「ほう」
「とても心に効果のある、珍しい薬草を見つけて、……それを両親に食べさせたくて。だけど、薬草を食べてくれるどころか、私が存在することすら、全否定されてしまって……」
「全否定とは何でしょう」
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