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謎との出会い
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外では濃い霧が漂い、緑があちらこちらに霞んで見えて、それは神秘的な光景が広がっているのでした。土の匂いを感じながら、森の中へ足を踏み入れ、薬草を見つけると摘み取り、腰に付けたいくつもの袋に、分類しながら入れていきます。
「確かにリンゴ草がはびこっている。時計花もよく見るな。リンゴ草は砂糖漬けにするとおいしいんだよね」
「トイ! 」
「シシ、何」
「妖精! ふわふわ! 」
「ああ、ほんと」
霧に紛れて、森の中では白いぼんやりとした光を放つ妖精たちが、飛び回っていました。彼、もしくは彼女たちは、姿を見られることをあまり好まないので、霧が出ている時に、活発に活動するのです。透けるような白さの羽をばたつかせ、囁くような笑い声をまき散らし、それは楽しそうにしていました。彼らにつられることなく、私は草の観察に集中しました。
「ここに根の木がある。樹液を頂きたいから、器具をセットしておいて、数日後、またここに来よう」
そう言って、バックパックから器具を取り出し、木の幹にセットしてから、目立つ枝にピンクのリボンを結び付けて目印にすると、私は森のさらに奥の方へ、ずんずん進んでいきます。
「トイ」
「何、シシ」
「野原。広~い、広い」
「うん、そうだね。私はよくここで、草を探しているんだよ。あれ? 何かいるね」
「緑、緑」
霧が相変わらず立ち込める中、緑色の大きな生き物が、野原にうずくまっているのが見えます。
「声を掛けてみようか」
シシにそう言うと、ちょっと勇気を出して、私はその生物に近づいていきました。近づけば近づくほど、その生き物が放つ異様な存在感に圧倒されます。人間でもなく、植物でもなく、妖精のようなマジカルな存在でもなく……。
「カベーーー」
突然、それはとてつもない大声を放ちました。
「カベー、カベー、カベー」
私は驚きながらも、側に行って声を掛けました。
「こんにちは。どうかされました」
「カベー。ぼくのなまえ」
「ああ、あなたのお名前が、もしかするとカベー……」
「だれ? 」
「あ、私はトイと言います。こちらは、ネズミのシシ」
「トイとシシ。トイとシシ」
「確かにリンゴ草がはびこっている。時計花もよく見るな。リンゴ草は砂糖漬けにするとおいしいんだよね」
「トイ! 」
「シシ、何」
「妖精! ふわふわ! 」
「ああ、ほんと」
霧に紛れて、森の中では白いぼんやりとした光を放つ妖精たちが、飛び回っていました。彼、もしくは彼女たちは、姿を見られることをあまり好まないので、霧が出ている時に、活発に活動するのです。透けるような白さの羽をばたつかせ、囁くような笑い声をまき散らし、それは楽しそうにしていました。彼らにつられることなく、私は草の観察に集中しました。
「ここに根の木がある。樹液を頂きたいから、器具をセットしておいて、数日後、またここに来よう」
そう言って、バックパックから器具を取り出し、木の幹にセットしてから、目立つ枝にピンクのリボンを結び付けて目印にすると、私は森のさらに奥の方へ、ずんずん進んでいきます。
「トイ」
「何、シシ」
「野原。広~い、広い」
「うん、そうだね。私はよくここで、草を探しているんだよ。あれ? 何かいるね」
「緑、緑」
霧が相変わらず立ち込める中、緑色の大きな生き物が、野原にうずくまっているのが見えます。
「声を掛けてみようか」
シシにそう言うと、ちょっと勇気を出して、私はその生物に近づいていきました。近づけば近づくほど、その生き物が放つ異様な存在感に圧倒されます。人間でもなく、植物でもなく、妖精のようなマジカルな存在でもなく……。
「カベーーー」
突然、それはとてつもない大声を放ちました。
「カベー、カベー、カベー」
私は驚きながらも、側に行って声を掛けました。
「こんにちは。どうかされました」
「カベー。ぼくのなまえ」
「ああ、あなたのお名前が、もしかするとカベー……」
「だれ? 」
「あ、私はトイと言います。こちらは、ネズミのシシ」
「トイとシシ。トイとシシ」
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