三年で人ができること

桃青

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68.到着

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 ふと窓の外を見て驚いた。走っているのは町中というか、商店街に近しい通りなのだが、そこが完全なるシャッター街になっていた。その光景が延々と続く。この街に何があったのだろうと思った。ネットで廃墟巡りを面白半分で見たことがあるが、これこそがまさにそれだ。死して骸骨になった街、そんなワードが頭をよぎっていく。五か月後の自分と、何かがリンクした。
 無。そう、俺は無が怖い。
 無になる瞬間を、本能的に恐れている。
 この街もブイブイ言わせていた時期があったのかもしれない。その末に辿り着いた、現在の虚無感。お世辞にも楽しそうには見えないし、俺も何とも言えない気持ちになった。
(瞑想で無になるとかよく言うけれど、冷静に考えて、それってかなり怖いことだと思う…… )
(だって、無って……、ある意味死、そのものだろう)
(俺も瞑想をやって、無を体験したらいいのかな。そうすれば、死に対する恐怖心が消える? )
(でも五か月くらい訓練して、その境地に辿り着けるものかね。他に何かいい方法はないのか)
 ふと時計に目をやると、乗車してから一時間半が経とうとしていた。辺りの景色もいつしか、賑々しいものへと変化していて、俺はホッとして思った。この賑わいは、間違いなく駅が近い証拠だ。案の定道路を曲がると、すぐ駅前のロータリーに出た。バスはぐるぐると回って停車場まで行き、終点です、というアナウンスの音声と共にバスは停車し、ガタッと音を立ててドアが開いた。
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