三年で人ができること

桃青

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 そう言い合い、再び宿の中へ入っていく。一階にある食堂で、準備されていた朝食を頂いた。昨日から薄々気付いていたが、漬物やつくだ煮など、保存食のようなものが多い。まずいわけではないが、体がフレッシュなものを求めていた。冬の山奥ではきっと、野菜などは運搬するだけでも大変なので、手に入りにくい食材なのだろう。そう思うと、こういう料理でも十分にありがたい。食事を済ませ、再びみのりと外へ出た。雪、雪、雪の世界。もし自分がスキー客だったら、大喜びなのにと思う。温泉の源泉が流れている場所へ行くと、硫黄臭がすさまじい。みのりと体に悪そうだと言い合って、すぐにその場を離れた。再び宿へ帰ってくると、みのりとは別行動で、今回の第一目的である宿の温泉に入ることにした。湯につかり、ぼやぼやと色々なことを考えながら、色々な人生があるなあと思った。山奥で生活して、毎日温泉と向き合って生きている人がいるのだ。都会に行くこともあると思うが、ベースはこの山の奥で生きること。
きっと大変なことも多いと思う。都会で暮らしていると、そんな生活すら想像することなんてない。
 そういうことを知れてよかったと、俺は思った。
 ☆☆☆
 風呂から上がると、持ってきた数少ないお菓子を持ち寄り、お茶を淹れて、みのりとだべることにした。
「こんな無駄な時間をさあ、過ごすことって、なかなかないよね」
 みのりの言葉に俺は答えた。
「一生これでも悪くないかもな、と思ったりする。ひっそりと、人知れず生きていくみたいな? 」
「退屈で死んじゃいそうよ。でもたまにだったら、私も嫌いではないな、そういうの。外の喧騒をシャットダウンするのは、癒しに繋がることもあると思うし」
「みのり、俺の人生って何だったんだろうな」
「急に哲学か? すすむさんの人生は楽しかった? 」
「うーん。楽しいこともあったと思うけれど、そもそも楽しいって何? みたいな疑問もあったりする」
「去年一年間、色々自由にやっとったんだろ。楽しんだんじゃないのか」
「これをやったから楽しい、じゃなくて、選択出来る自由は確かに楽しかったよ。ってことは、自由な空気を感じている時が、俺にとっての一番の幸せ、かつ楽しいことなのかな」
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