三年で人ができること

桃青

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34.バーバリー(爆買いⅡ)

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(前回の爆買いの失敗点は、メモをしていったことだよ。心の赴くまま買うためには、買いたい物リストは必要じゃない)
 俺は電車に揺られながら考えていた。今、とある百貨店へ向かう所で、ショッピングに対する心構えを反芻しているのだ。
(一日九万円お金を使っていいはずが、全然使わないものだから、お金は貯まるばかりで、昨日百万円下ろしてきた。カードで買う方が便利ではあるけれど、成金趣味っていうか、俺はもっと現ナマを感じたいから、支払いは現金で)
(ジェットコースターに乗る前のように、ドキドキワクワクする。前は節約が美徳だったのに、今は反対にお金を使わなきゃならないだなんて。贅沢な話だ)
(今日はチャレンジだ。色々なことを、開放してゆく)
 駅に着いた所で、俺は電車を降りた。百貨店なぞめったに行くことがないため、グーグルマップで場所を確認しつつ、改札口へ向かう。外に出て歩き始めると、すぐ目的の場所が見えてきた。気分は切り込み隊長、侍のような心持ちで、俺は百貨店へ入ってゆく。

 中に入ると、高そうな店がずらずら並んでいて、どうしようと思った。どこから手をつけたらいいのか分からない。すでに逃げ出したい気持ちでいっぱいになっていたが、一階は女性向けの店ばかりのような気がしたので、とにかくエスカレーターに乗り、自分も入れる店を探すことにした。キョロキョロしながら、まるで不審者だなと思いつつ、辺りに気を配っていると、『バーバリー』の看板が目に入った。
(爆買いにハイブランドは必須じゃないか? )
 そう思った俺は、とりあえず名前を知っているバーバリーの店へ入ることにした。十分後、俺はバーバリーの紙袋を片手に、店から脱出してきた。
(ハ、ハ、ハイブランド。買いました。買っちゃったよ。バ、バーバリーのチェックのシャツを購入した。見ても何を買えばいいのか分からないものだから、とにかくバーバリーっぽいものをと思って、バーバリーといえばチェックのイメージだったから、これを……。値段も十万以下だし……ってか、まだ大金を払うことに慣れない俺)
(もうおしゃれとか、ファッションとか、そもそも分からないもん。ユニクロのシャツは二千円以下で買えて、バーバリーが七万円。その三十五倍の値段の違いが、分からない俺)
(そりゃさ、布地の良さとか、作りの丁寧さはさすがに分かるよ。品の良さも。でもバーバリーのシャツで、近所のスーパーとか、ファミレスに行くのか? 何だかすっきりしない俺の気持ち)
(とにかく次に行こう。次だ、次)
 まだお金はある。ということは、ショッピングは続くのだ。モヤモヤを抱えたまま、次の店へ向かった。
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