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29.小さく悟る
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シャワーを浴びてから帰るみのりを見送った後、俺は考えた。
「みのりとしたいことか……」
付き合いが長いので、小旅行やデートなど、それなりにやりたいことはやってきた。では、みのりにしてもらいたいことというより、逆に俺がしてあげたいことはないだろうか?
「宝くじの配当金を残して、みのりに渡すとか? 税金はどうなるんだろう」
ぶつぶつとそんなことを言いながら考える。今は具体的に思いつかないのだが、やるべきことは確かにある、そんな気がする。特別な何かを体験するのもいいが、普段普通に存在する何かを共有することも大切だ。
奢侈なニート生活をしていて思う。金持ちであろうと、貧乏であろうと、働いていようといまいと、人間のベースはそれほど変わるわけじゃない。衣食住という定義に揺らぎはないのだ。五億の家に住もうと、家賃五万の家に住もうと、やっていることは基本、大きく変わらない。働いて、片付けや掃除をして家を清め、料理をしてご飯を食べ、(料理を省略することもあるけれど)トイレに通い、眠る。
ゆとりがあることは幸せだ。心に余裕ができて、ギスギスしなくなる。そんな心豊かな気持ちを、ここ数か月で俺は存分に堪能していた。そろそろ違うことに、目を向けてもいい時期かもしれない。
春の最中、自然と心がソワソワする。何かを始めたい、そんなことを思う。自分でノートに書きこんだ、やりたいことリストに目を通してみた。そう、まだまだやるべきことはある。今現在は目的がはっきりとしていないのだが。
もう時刻は夕方だった。俺は窓の外に見える夕日をしばし睨んだ後、夕食を食べるために出掛けることにした。どういうわけかみのりの残像が、頭の中でリフレインして浮かび上がった。
「みのりとしたいことか……」
付き合いが長いので、小旅行やデートなど、それなりにやりたいことはやってきた。では、みのりにしてもらいたいことというより、逆に俺がしてあげたいことはないだろうか?
「宝くじの配当金を残して、みのりに渡すとか? 税金はどうなるんだろう」
ぶつぶつとそんなことを言いながら考える。今は具体的に思いつかないのだが、やるべきことは確かにある、そんな気がする。特別な何かを体験するのもいいが、普段普通に存在する何かを共有することも大切だ。
奢侈なニート生活をしていて思う。金持ちであろうと、貧乏であろうと、働いていようといまいと、人間のベースはそれほど変わるわけじゃない。衣食住という定義に揺らぎはないのだ。五億の家に住もうと、家賃五万の家に住もうと、やっていることは基本、大きく変わらない。働いて、片付けや掃除をして家を清め、料理をしてご飯を食べ、(料理を省略することもあるけれど)トイレに通い、眠る。
ゆとりがあることは幸せだ。心に余裕ができて、ギスギスしなくなる。そんな心豊かな気持ちを、ここ数か月で俺は存分に堪能していた。そろそろ違うことに、目を向けてもいい時期かもしれない。
春の最中、自然と心がソワソワする。何かを始めたい、そんなことを思う。自分でノートに書きこんだ、やりたいことリストに目を通してみた。そう、まだまだやるべきことはある。今現在は目的がはっきりとしていないのだが。
もう時刻は夕方だった。俺は窓の外に見える夕日をしばし睨んだ後、夕食を食べるために出掛けることにした。どういうわけかみのりの残像が、頭の中でリフレインして浮かび上がった。
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