三年で人ができること

桃青

文字の大きさ
上 下
29 / 85

27.打ち明け話

しおりを挟む
「信じ難し。だが、いくらお金があってもいいと思うから、暇しててもあれだし、楽~で、気晴らしになるような仕事を、少ししておけばいいのでは」
「そうだね。考えておく」
「君、君」
「何? 」
「それだけじゃないじゃろ。ま、マックを食べようや、冷めないうちに」
「久し振りだな、マック。最近は食で贅沢をしていたから、ジャンクでチープなものはあまり食べていなくて」
「何という発言。一億円当たると、やっぱり違うな。ほれ、君の好きなフィレオフィッシュ。ナゲットもな、バーベキューソース付き」
「ありがと。おいしいね」
「二人で食べると、美味しさ二割増し。人とワイワイするのって、いいよな。で、どうした」
「……ん。俺、変? 」
「変、ではないが、何かがとち狂っていそう。違うか」
「そうかもしれないな。みのりには本当のことを話した方がいいかもしれない。信じてもらえないかもしれないけれど、俺、後三年、いや違う、もう二年半か、それ位で死ぬんだって」
「二年半? 余命宣告? 何かの病気で? 」
「いや、占いの結果だ。で、その定めの元に、宝くじで当選した」
「何を言っているのかよく分からないが、私はあることを思いついて、すすむさんの家に来たのだ。私達、結婚しないか? 」
「みのりの方も無茶を言う。は? 本気? 俺今、あと二年半しか生きないって言ったでしょ? 」
「占いなぞ、信じるな」
「それに俺達って近頃……、冷えていたじゃないか」
「確かにな。だから会いに来た。私達の熱量を確かめるために。結婚できるかどうか知るために」
「どうして急にそんな気持ちになったの。寂しかったりした? 」
「寂しさも薄っすらと存在するが、私達の縁、私達の付き合いは、そういう結果に結びつくものではないかと、ふと思った」
「結婚はできない。というか、しない方がいい」
「どうして」
「多分、だけど、この占いは当たっているよ。俺に未来はもう存在しないから、みのりは別の人と幸せになってもらいたいんだ」
「ふむ、切ない。でもな、もしすすむさんが本当に死ぬのだとしたら」
「うん」
「だからこそ一緒にいたい。最後の時まで、共に過ごしたい」
「みのりって意外と、そういう奴だよな。はは。ありがとう。でも結婚はやめよう」
「もし、二年半後も生きていたら」
「その時はその時でまた考える」
「ずっしりと重い運命を、背負ってしまったんだな、すすむさんは」
「でも、今は幸せなんだよ。やりたいことをやりたいようにできる時間も、お金もあるから。こんな自由、十数年は体験していないものね。虚無的でありながら、毎日が凄い満足感で過ぎてゆく」
「素晴らしい。何ということだ。ハッピー、ハッピー」
「みのりは最近どうしていた? 」
「ん、普通だよ。何気なく過ごしている」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

キャバ嬢とホスト

廣瀬純一
ライト文芸
キャバ嬢とホストがお互いの仕事を交換する話

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

赤い目の猫 情けは人の為ならず

ティムん
ライト文芸
 路地裏に住む、一匹の野良猫のお話。  色んな人と関わりながら、強くたくましく、楽しく生きる物語。  どうにも人間臭い彼の目は、赤く怪しく輝いている。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...