三年で人ができること

桃青

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26.みのり

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 おみやげを持って恋人のみのりに会いに行くはずだったのに、いざ行くとなると、俺はひるんだ。みのりに会いたい、体に触れたい、SEXは……。まあ置いておくとして、思いは募ってゆくばかりなのに、己がどうしたいのか掴めず、行動に移すことができない。結局、両親とみのりに旅のおみやげを宅配便で送り、自分は近場で美味しいもの巡りをして、日々を過ごしていた。本や動画と、うまいものと、ぐっすり眠る日々。物凄く贅沢だ。買いたい物を買って、やりたいことをやって。……逃げきれないのに、俺は何から逃げているのだろう。きっとそれは逃れられない『真実』から―。
 桜の花が咲きだす頃、美味しい昼食を食べに行くため出掛けようとしていた所に、誰か来た。扉を開けると、目の前にすとんとみのりが立っていた。彼女は言った。
「やあ」
「う、うん。やあ」
「会いに来た」
「俺に? えっと、仕事は……、そっか、今日は休日か」
「マック買ってきたよ。すすむさんの家で食べよう」
「えっ、あの、二人で? 」
「他に誰がいる。幽霊でもいるのか? 」
「そうだね。なら、上がって」
「お邪魔します」
 そう言って、遠慮なくずかずかと上がってくるみのりを見ながら思った。そうだ、こいつはこういう奴だった。慣れた感じでテーブルに着き、がさがさとマックの袋を広げ始めた彼女の前に、自分も腰を下ろしてから、言った。
「お金払うよ」
「何を言っている。私の経済力を馬鹿にするな。ラインでも言ったけれど、旅のおみやげありがとうね」
「うん。気に入った? 」
「食べ物のおみやげばっかりで、しばらく食に困らなかったよ。助かりました。ういろうが素朴で、一番好きだった」
「俺もういろうが好き。あの何を食べているか分からない感じが、何とも言えない」
「確かに。もちでもなく、和菓子っぽくもなく、ごはんでは、もちろんないよな。きしめんセットも良かったよ」
「それで、みのりが急に家に来たのは、何で? 」
「君」
「はい」
「何か隠しているだろ」
「あ、浮気はしていないよ」
「違う。ちがうちがうちがう、ちがーう。もっと別なもの。そう言えば仕事はどうした。あの質の悪すぎる上司がいる会社は」
「それがその。辞めていまして」
「は。や・め・た? じゃ、お金はどうしているの」
「誰にも言わないと約束してくれ」
「私達の秘密な。で、どうした」
「俺とみのりの命に係わるかもしれないから、口外禁止だぞ」
「しつこいな。はよ言え」
「宝くじに、当たったの」
「ほう。いくら? 」
「……。一億円」
「うひょ~。うひょひょ、うひょ。マジで? 遊んで暮らせそうじゃない」
「だから遊んで暮らしている」
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