三年で人ができること

１５．自分史

　俺は二千五百円のノートを広げ、紅茶の入ったペットボトルを片手に、パソコンの画面を見つめていた。
（俺は昭和五十五年、西暦だと千九百八十年生まれなんだよな。ギリ、昭和の記憶が微かにある人間。千九百八十九年一月七日に昭和天皇が崩御され、昭和は六十四年で終わり、一月八日から平成元年になった。つまり約八年、俺は昭和を体験していることになる）
（バブルの時代が千九百八十五年から千九百九十一年と言われていて、オウム真理教が事件を起こすようになったのもこのころ。千九百九十五年、俺が中学三年生の時に、地下鉄サリン事件が起きている。小林よしのりのゴーマニズム宣言が流行ったのも、この頃じゃなかったっけ）
（子供の頃、ドラえもんが好きだったよな～。ドラえもんの映画、本気で楽しみにしていたもん。あと中学生なのに、クレヨンしんちゃんの映画が大好きで、一人で映画館に行ったりしていた。そうか、しんちゃんの映画がスタートしたのが、千九百九十三年なんだ……）
（確か電波少年っていう、か、な、り、やりすぎている番組があって、面白かったけれど、令和の時代にリアルタイムでやっていたら、炎上必至といった感じの内容だったはず。もし自分があの番組の出演者だったらと想像するだけで、寒気が襲ってくるもん。冷酷というか、ギリギリのラインで成立する番組といった感じだった）
　そこまで自分の記憶をネットで確かめながら辿ると、大雑把に内容をまとめつつ、ノートに書きこんだ。書いたものを読み返しながら思った。自分の人生で、昭和を体験できたこと、それからバブルを感じられたことは、本当に良かったと思う。何しろ、第二次世界大戦のキーパーソンだった昭和天皇が、まだ生きていて時代を象徴していたのだ。それが昭和で、バブルは現実感のない幻だった。今の若い子達がバブルに憧れる気持ちも、薄っすらと分かるけれど、今の世界とバブルの世界、どちらが現実かと問われれば、問題が山積みで、嫌でもそれらと向き合わなければならない今の世界の方が、リアルを捉えているとも言える。夢から覚めたのが、この令和という時代だ。