三年で人ができること

１４．反省猿ツー

　一億というお金を手にしたことで、頭のねじが五本くらい外れた気がしたが、段々冷静になってくると、そんなに必要な物、買うべき物がないことが見えてくる。お金はある。でもいらないものは、いらない。すっきりとそのことが見えるようになった。これは良いことだ。
　ハイソな店でお買い物をした後日、俺は近所のショッピングセンターの中にある鞄屋で、来年用のブランド財布を買い、庶民的な雑貨屋で、大きめのエコバッグを買い、□フトで高い電動歯ブラシを買った。ネットでもちょいちょい買い物をして、頻繁に荷物が届いたが、一か月もすると、俺は買い物に飽きた。美味しい物が好きなので、お取り寄せもやってみたが、料理があまり得意ではないため、焼いたり揚げたり調理したりが面倒になり、最終的にウーバーイーツのみに頼ることになってしまった。

　封筒貯金は貯まる一方で、自宅にそんなに現ナマを置いておくのもなんだしと、ある銀行に口座を開いて、そこにお金を貯めていくことにした。そうすれば安心感があるし、今いくら使えるのか、毎回万札を数えなくてもいい。
　☆☆☆
　気付いた時には、大晦日になっていた。十二月三十一日、アマゾンプライムを見ながら、寿司を食べ、ビールを飲みつつ、来年の気配を確かに感じる。晴彦がいう所の、『良い一年』の気配を。
　来年は死なない。来年はお金がある。ならばやりたいことをやっていこう。やってみたかったことを、やってみよう。ほんのりと胸の中で輝く期待感と共に、俺は元旦の朝日を待っているのだった。