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4.奇跡
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目的の駅に着いて、歩き出すと、無意識的に足が駅前のショッピングセンターへ向く。コーヒーでも飲んでいくかと思いながら、店の中へ入っていった。手近に見えたコーヒーショップへ入ることに決め、店内に入って注文を済ませ、コーヒーを受け取ると、空いていた静かな席へ腰を下ろした。
窓の外に目をやると、自分とは縁のない人達が、ザクザクと道を行ったり来たりしている。何となく、黒澤明監督の『生きる』という映画のストーリーを思い出す。古い映画で、やはり人生にタイムリミットがある人の話だったが、今の自分なら、あの主人公の気持ちが理解できる気がした。
(でも俺がやりたいことは、ああいうことじゃない。『生きる』の主人公は、人のためになることで生きた証を残そうとした。俺の場合は……、もっと刹那的な欲求を満たしたいんだよな。奢侈な生活をしたり、とか)
そう思いながら財布に手を伸ばし、残金を確かめた。ふと、一枚の紙の存在に気付き、取り出すとそれは、思いつきで買った宝くじの紙だった。思わず声に出して言った。
「あ~、こんなもの、買っていたんだっけ」
ためすがめつ眺めてから、一応当たっているか確認しておこうと思って、スマホで当選番号の確認をすることにした。サクサクとグーグルでサーチをして、目的の番号を探す。上から順番に見始めて、その直後に体が硬直した。顔はカエルのようになり、一時停止した自分が自由を取り戻すのに、しばしの時間を要した。スマホを見る。宝くじを見る。その繰り返しを十回以上やってから、がたがた震える手で残りのコーヒーを飲み干した。
何度見ても間違いない。これは幻じゃない。
本当か。嘘か。いや、嘘の訳ないだろ。
一等の前後賞に当選していた。そのことを理解した後に、晴彦の声が頭の中で響き渡る。
『その代償を受け取った時が、おまえの三年というタイムリミットのある人生が、スタートした時と考えるといい』
窓の外に目をやると、自分とは縁のない人達が、ザクザクと道を行ったり来たりしている。何となく、黒澤明監督の『生きる』という映画のストーリーを思い出す。古い映画で、やはり人生にタイムリミットがある人の話だったが、今の自分なら、あの主人公の気持ちが理解できる気がした。
(でも俺がやりたいことは、ああいうことじゃない。『生きる』の主人公は、人のためになることで生きた証を残そうとした。俺の場合は……、もっと刹那的な欲求を満たしたいんだよな。奢侈な生活をしたり、とか)
そう思いながら財布に手を伸ばし、残金を確かめた。ふと、一枚の紙の存在に気付き、取り出すとそれは、思いつきで買った宝くじの紙だった。思わず声に出して言った。
「あ~、こんなもの、買っていたんだっけ」
ためすがめつ眺めてから、一応当たっているか確認しておこうと思って、スマホで当選番号の確認をすることにした。サクサクとグーグルでサーチをして、目的の番号を探す。上から順番に見始めて、その直後に体が硬直した。顔はカエルのようになり、一時停止した自分が自由を取り戻すのに、しばしの時間を要した。スマホを見る。宝くじを見る。その繰り返しを十回以上やってから、がたがた震える手で残りのコーヒーを飲み干した。
何度見ても間違いない。これは幻じゃない。
本当か。嘘か。いや、嘘の訳ないだろ。
一等の前後賞に当選していた。そのことを理解した後に、晴彦の声が頭の中で響き渡る。
『その代償を受け取った時が、おまえの三年というタイムリミットのある人生が、スタートした時と考えるといい』
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