三年で人ができること

３．三年

　占いが終わって、晴彦に別れを告げ、占いという名のジャングルから抜け出すと、外の太陽の明るさがいやに目に染みる。別れ際に晴彦が、相談だったらいつでも乗ると言った、彼らしくない優しい態度が、占いの正しさについて追い打ちでもかけているみたいだった。
「三年……」
　そう呟いて、雑踏を歩き出す。ショックなことを言われたせいで、周りの景色がぼんやりと滲む。涙のせいではなく、この世界が幻のように感じられた。三年経ったら、……三年経てば、もう自分はこの世界に存在することはできないのか？
（三年で何ができるんだよ……）
　そう胸の内で呟き、様々な角度から考えてみる。両親に別れの挨拶をする。恋人にさよならをする。やってみたいこと、しておきたかったことをやる、何かはよく分からないが……。その程度のことしか思いつかない。晴彦の占いが、僅かながらも外れる可能性もあるだろう。でも、この三年の間にやるべきことはやっておいた方がいいようだ。外れたら外れたで、その時は素直に喜べばいい。
　駅に着いたので、電車に乗り、自分の住む家へ向かう。ぼーっとしながら、今までの自分の人生を思った。随分と空っぽな生き方をしてきたものだ。レールから大きく外れることはなかったが、それは人生経験を積めなかったことと同意義だった、俺に関して言えば。これは正しい生き方だったのだろうか？　自分は満足をしているのか？　いや、していない。こんな出来事がなければ、冒険することもなく、このまま進み続けていたと思う。でも俺には多分、あと三年しかない。