三年で人ができること

桃青

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2.ええ?

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 晴彦は落ち着いた態度でそう言い、静かに目を閉じて瞑想を始めた。俺は肘をつき、貧乏ゆすりをしながら考える。三年、三年……。三年? 自分は三年で何ができるのだろう。本当なのか? 本当に当たるのか。信じられない。どうしても信じられない。不安と不信感と悲しみのカオスになりながら、俺は言った。
「どうしても信じられない」
 晴彦はぱっちりと片目を開いて言う。
「至極真っ当な反応だと思う」
「もし三年経っても生きていたら、どうしてくれる? 色々な意味で、俺はお前を恨むよ」
「僕はその心配をしていない。何故ならこの提言は、外れることがないからだ。今までこの仕事のおかげで、人の死について何回も見てきたが、すすむほど明確な結果は、初めての体験でもあった」
「もし、もし死ななかったら、一千万円払えよ。俺の人生を三年間駄目にした罰な」
「ジョーク? 」
「結構本気」
「……もう一つ、すすむに言っておかなければならない大事なことがある。代償と言ってもいいと思うが、長く生きられないことと引き換えに、近々良い物を手にすることができる」
「可視的なもの? それとも目に見えないもの? 」
「どちらかは分からないけど、とてもはっきりとしたもので、それを手にした時に、おまえは『ああ、このことか』と理解できると思う、自分でね。だからその代償を受け取った時が、三年という人生のタイムリミットが、確かにスタートした時と考えるといい」
「晴彦の占いが外れていなかった証、ということね」
「ま、そう言ってもいい」
 そう言う晴彦の姿は、とても冷静だった。澄んだ目と揺らがない心。きっと何人もの死を見透かしてきた経験が、彼をそうさせている。俺は息を吐き、気を取り直してから言った。
「おまえの言いたいことは分かった。なら、来年の占いについて教えてくれ」
「よし。ざっと星の動きについて説明すると―」

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