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翠玉の章if・執着√(共通の後にこちらの章に続く)
カプリス(※溺愛√45〜46話とほぼ共通)
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美しい金の鷲。
その強い視線に絡め取られそうになる。
「あなたが……」
「ええ、宣言通り会いに来たよ。 姫。
私はカプリス。どうぞお見知りおきを」
恭しく頭を下げる。その動作は劇でも演じているような大仰さを感じる。
「来なくてよかったし。あなたのせいで散々な目にあったんですけど」
心理的ストレスがひどい。
「おや。ご機嫌斜めかな?毛を逆立てる猫みたいだね。そんな姿も可愛いね」
毛嫌いされてもニコニコとカプリスは笑顔を崩さない。
「直接会ったことないよね?」
「いや、お会いしているよ」
「王子様と手を取り大胆な大逃走劇を演じていたじゃない。勇敢な姫様?
街灯の下、月明かりの下、懸命に走る君はとても美しかったよ」
この前の全力鬼ごっこのことを指しているのだろう。
どこで見られていたのか、私にはさっぱりわからなかった。
「その頃よりもっと美しくなったね、翠玉の姫? あの王子の影響なら妬けてしまうね」
禍々しい殺気を放つカナタなど眼中になく、金鷲……カプリスは続ける。
「ああ、そうそう。姫に渡さないとと思っていたんだ」
「?」
私たちとカプリスの距離は十分離れている。
カナタは銃口を彼に定めたまま
膠着状態である。
「わわわっ!? 」
私の手のひらに、金色の魔力が集まる。
熱くも痛くもないけれど、変な感じだ。
カナタのまなじりが釣り上がるが、私の首輪に反応はないので一旦様子見を決める。
「これって、あのときの」
金の光の中から現れたのは、あの日に落とした翠玉のイヤリングだった。
「大切なものなんでしょう? 落とし物だよ、姫さま」
にこっと柔和に微笑むカプリス。
立ち居振る舞いに何処となく品がある。
「貴様。あの事件の関係者か」
銃口はカプリスに向けたまま、カナタは怒りを混じらせた低い声で尋問する。
「あの事件…?
ああ、愉快なマリオネットにちょっと酒を奢っただけだけど?
まあ、お暇つぶしにはなったかな」
神経を逆撫でするような適当さで返すカプリスに、カナタの怒りの深さが肌で感じる私の方がヒヤヒヤしてしまう。
「王子は人気者なんだねえ?俺は翠玉の王子に興味は微塵もなかったよ。
でもね。君が関わっていたなら話は別」
大変麗しい笑顔を向けてくるカプリスだったが、私は腹の底から怒りが湧き起こって止まらない。
「興味ないのに煽ったの? 最低……」
顔がいいからってやっていいことと悪いことがある。
「こそこそと、自分の手を汚さないで?
あなたが煽らなければ、狂うこともなかったんじゃない? あの人たちにも家族がいるだろうに」
「私が目的ならカナタを巻き込まないで」
「勇ましいね、お姫様。
君がすでに翠玉に取り込まれていたからこうするしかなかったんじゃない」
私の怒りも意に介さず肩をすくめ、仕方がないと言いたげなカプリスになお腹が立ってくる。
「その首輪。厄介な爆弾抱えているから? 直接接触するのは困難だったんだよ。
内から崩していかないと付け込めない」
カプリスは自分の首元をチョンチョンと指差す。
「姫を独り占めして悔しいからぁ、
ちょっと細工したんだけど。ことのほか効果大だったね」
「細工??? 」
「姫が翠玉の魔力を感じると、眠り姫になる魔法♪」
「えっ!? 」
確かに、色んな意味でのカナタの魔力を受けたら眠たくなっていたような……
(えええっ!? )
身に覚えはある。ありすぎる。
一気に顔が赤くなる。
「……やはり」
遠隔で邪魔されていた怒りが漏れ出しているカナタはこめかみに青筋を立てている。
「はー、何度もチャンスはあっただろうに何を紳士ぶってんだか。
君、ほんとに男なの?
つまんない矜持なんて捨てちゃえばいいのに。そんな余裕ないはずなのにね?
青臭いこと言ってないで寝てる姫の胎にぶち込めばいいんだよ?
身体は素直に反応するんだから、簡単でしょ?
まだ、契ってないなら
俺の方に分があるかも、ね? 」
「なっ、なんの話ししてんのよっ」
ものすごく直接的な表現に恥ずかし過ぎて逃げ出したい。
「なんとも品のない、下衆な野暮天野郎ですね」
汚物を見るような目で睨め付けるカナタに、カプリスはわざと煽るように鼻で笑う。
「だってそうだろ? 君の魔力は俺に比べたら脆弱だ。
祝福や姫の力で増幅してるとしても」
「……そこまでわかるのか」
「わかるさ。同じだから。姫はまだ『覚醒』していないから、不可思議なことが多いだろうがね」
(私の力で増幅?はて)
そんなこともできるの……?
見当もつかないけど。
不思議そうな顔をしている私の心が読めたのか、カナタはくすっと笑う。
「あなたがそばにいると、力が沸くんですよ。
ただ、私に心を預けて守られてくれればいいんです」
銃の引き金に指をかけ、標準を定める。
カナタの指先に緑色の魔力が集まる。
「その心ごと、奪いたいね。
まずは俺の色に染めて、君をあるべきところにお戻しする」
カプリスは手のひらに金色の魔力を集結させる。
その人固有の魔力の色があるんだね。
「君がいるのはここじゃない。
迎えに来たよ。我が主。時巡りの姫。
さあ、行こう」
にこやかに微笑み、私から視線を離さないカプリスは
ゆっくり間合いを詰めてくる。
「させるか! 」
構えていた銃の引き金を弾く。
二頭の翠玉の龍が絡み合うようにカプリスを襲う。
「地味に煩わしいね、翠玉の王子。
このまま姫を奪って、終幕に向かいたいのだが。
ちりゆく恋に、流す涙も美しいだろうしね」
カプリスは片手であっさりカナタの攻撃を打ち消す。
弾丸を装填しながら、カナタは必死で応戦するが
私が足枷になっているのだろう、ジリジリ押されている。
こちらが不利なのは目に見えている。
カプリスの攻撃は純粋な魔術によるもので
特に顔色を変えることなく、金色の刃を飛ばす。
私には当たらないよう、盾になるカナタには小さな傷が増えていく。
「カナタ、血が……」
「かすり傷です。問題ありません」
相手の魔力も壮大なのも。戦力差は大きいのだろう。
カプリスはまるで本気にしていない。
(私の力がカナタの力になるんだとしたら)
私はカナタの背に額を当てる。
やり方はわからない。ただ、カナタの力になりたい。
私を守ってくれていた魔力を、カナタに還したい。
(どうか守って。私の翠玉を)
祈る。ただカナタを想って。
しばらくして私の中の熱が放出し、カナタに移るのを感じる。
やる気になればできるものなのね。
「ハナキ、それ以上はダメだ! 」
「いいね、姫。翠玉の力を戻すんだね」
「あなたの守りが薄くなる! 」
つまらなそうだったカプリスがこの戦況を楽しんでいるように声をあげる。
危惧するカナタに私は安心させるように笑う。
「大丈夫。カナタが守ってくれるんでしょう? 」
「……命に代えても。あなたは誰にも渡さない」
カナタが放つ魔弾が、一層強い輝きを放つ。
「ぐっ……! 」
相殺が間に合わず、カプリスの脇腹をかすり、余裕綽々の表情を初めて崩すことができた。
(威力が上がってる)
「愛の力、てやつ? ありきたりな演出だな」
「そのありきたりが、世間一般で広く受ける定番でしょうよ」
畳み掛けるように数発、引き金を引く。
威力を上げた数発は、カプリスに致命傷を与えるまではいかずとも着実に彼を削っていく。
「っく、本当に鬱陶しい羽虫だね。
翠玉は黒金剛石には勝てないんだよ」
カナタの弾丸で傷ついていくローブに、褐色の肌に刻まれたかすり傷に心底不快そうにカプリスはまなじりを釣り上げる。
「そろそろ飽きてきたな。
……俺の干渉を払い除けられない時点で、お前は姫には相応しくない。
力不足だ。さっさと舞台から降りろ」
カプリスは底冷えするように冷たく金の瞳を光らせ、言葉と宵闇の魔力で威圧する。
今までの人を食ったような口調がガラッと変わって、別人のようだ。
こちらが本当のカプリスなのだろうか。
苛立ちと怒気が混じる。闇に金色が混じるオーラは禍々しくも美しい。
「ご冗談を。悪役は愛の力で倒されるものですよ。不粋な男はさっさと退場してください。
ハナキはあなたの元へはいかさない」
「お前の許可など必要ない」
「わあっ」
カプリスが一気に間合いを詰める。
私の目の前に、猛禽の瞳が。
捕食しようととらえてくる。
「姫。俺と来い」
「嫌! こないで!」
カプリスの伸ばした手が私の手首を掴もうとする。
ヴンっ!
ネックレスが発光し、カプリスの手が見えない壁に弾き飛ばされる。
半径1メートル以内の異性を吹き飛ばすのは嘘ではなかったようだ。
「チッ!忌々しい翠玉め。お前はそろそろ魔力ぎれだろうに」
弾かれた手を押さえながら忌々しげに舌打ちするカプリスに、カナタはニッと口元だけで笑う。
「その魔宝石は魔力の貯めた期間が長いんでね。そう簡単には奪われない」
「ふん、では殺すしかないか。
お前を殺したら後が面倒だから避けたかったんだが」
金色の瞳から遊戯の色が消え、本気の殺意に煌めいた。
「殺して解除して、姫を連れていくとしよう」
表情を消したカプリスの手のひらから魔法陣が浮かび、そこから出現した剣を握る。
三日月のような形状に、綺麗な房紐のついた、柳葉刀だ。
「危ない!」
「接近戦に持ち込む気ですね」
「死ね!」
「その前に蜂の巣ですよ」
・・・・・
カナタとカプリスの攻防は
しばらく続く。
その強い視線に絡め取られそうになる。
「あなたが……」
「ええ、宣言通り会いに来たよ。 姫。
私はカプリス。どうぞお見知りおきを」
恭しく頭を下げる。その動作は劇でも演じているような大仰さを感じる。
「来なくてよかったし。あなたのせいで散々な目にあったんですけど」
心理的ストレスがひどい。
「おや。ご機嫌斜めかな?毛を逆立てる猫みたいだね。そんな姿も可愛いね」
毛嫌いされてもニコニコとカプリスは笑顔を崩さない。
「直接会ったことないよね?」
「いや、お会いしているよ」
「王子様と手を取り大胆な大逃走劇を演じていたじゃない。勇敢な姫様?
街灯の下、月明かりの下、懸命に走る君はとても美しかったよ」
この前の全力鬼ごっこのことを指しているのだろう。
どこで見られていたのか、私にはさっぱりわからなかった。
「その頃よりもっと美しくなったね、翠玉の姫? あの王子の影響なら妬けてしまうね」
禍々しい殺気を放つカナタなど眼中になく、金鷲……カプリスは続ける。
「ああ、そうそう。姫に渡さないとと思っていたんだ」
「?」
私たちとカプリスの距離は十分離れている。
カナタは銃口を彼に定めたまま
膠着状態である。
「わわわっ!? 」
私の手のひらに、金色の魔力が集まる。
熱くも痛くもないけれど、変な感じだ。
カナタのまなじりが釣り上がるが、私の首輪に反応はないので一旦様子見を決める。
「これって、あのときの」
金の光の中から現れたのは、あの日に落とした翠玉のイヤリングだった。
「大切なものなんでしょう? 落とし物だよ、姫さま」
にこっと柔和に微笑むカプリス。
立ち居振る舞いに何処となく品がある。
「貴様。あの事件の関係者か」
銃口はカプリスに向けたまま、カナタは怒りを混じらせた低い声で尋問する。
「あの事件…?
ああ、愉快なマリオネットにちょっと酒を奢っただけだけど?
まあ、お暇つぶしにはなったかな」
神経を逆撫でするような適当さで返すカプリスに、カナタの怒りの深さが肌で感じる私の方がヒヤヒヤしてしまう。
「王子は人気者なんだねえ?俺は翠玉の王子に興味は微塵もなかったよ。
でもね。君が関わっていたなら話は別」
大変麗しい笑顔を向けてくるカプリスだったが、私は腹の底から怒りが湧き起こって止まらない。
「興味ないのに煽ったの? 最低……」
顔がいいからってやっていいことと悪いことがある。
「こそこそと、自分の手を汚さないで?
あなたが煽らなければ、狂うこともなかったんじゃない? あの人たちにも家族がいるだろうに」
「私が目的ならカナタを巻き込まないで」
「勇ましいね、お姫様。
君がすでに翠玉に取り込まれていたからこうするしかなかったんじゃない」
私の怒りも意に介さず肩をすくめ、仕方がないと言いたげなカプリスになお腹が立ってくる。
「その首輪。厄介な爆弾抱えているから? 直接接触するのは困難だったんだよ。
内から崩していかないと付け込めない」
カプリスは自分の首元をチョンチョンと指差す。
「姫を独り占めして悔しいからぁ、
ちょっと細工したんだけど。ことのほか効果大だったね」
「細工??? 」
「姫が翠玉の魔力を感じると、眠り姫になる魔法♪」
「えっ!? 」
確かに、色んな意味でのカナタの魔力を受けたら眠たくなっていたような……
(えええっ!? )
身に覚えはある。ありすぎる。
一気に顔が赤くなる。
「……やはり」
遠隔で邪魔されていた怒りが漏れ出しているカナタはこめかみに青筋を立てている。
「はー、何度もチャンスはあっただろうに何を紳士ぶってんだか。
君、ほんとに男なの?
つまんない矜持なんて捨てちゃえばいいのに。そんな余裕ないはずなのにね?
青臭いこと言ってないで寝てる姫の胎にぶち込めばいいんだよ?
身体は素直に反応するんだから、簡単でしょ?
まだ、契ってないなら
俺の方に分があるかも、ね? 」
「なっ、なんの話ししてんのよっ」
ものすごく直接的な表現に恥ずかし過ぎて逃げ出したい。
「なんとも品のない、下衆な野暮天野郎ですね」
汚物を見るような目で睨め付けるカナタに、カプリスはわざと煽るように鼻で笑う。
「だってそうだろ? 君の魔力は俺に比べたら脆弱だ。
祝福や姫の力で増幅してるとしても」
「……そこまでわかるのか」
「わかるさ。同じだから。姫はまだ『覚醒』していないから、不可思議なことが多いだろうがね」
(私の力で増幅?はて)
そんなこともできるの……?
見当もつかないけど。
不思議そうな顔をしている私の心が読めたのか、カナタはくすっと笑う。
「あなたがそばにいると、力が沸くんですよ。
ただ、私に心を預けて守られてくれればいいんです」
銃の引き金に指をかけ、標準を定める。
カナタの指先に緑色の魔力が集まる。
「その心ごと、奪いたいね。
まずは俺の色に染めて、君をあるべきところにお戻しする」
カプリスは手のひらに金色の魔力を集結させる。
その人固有の魔力の色があるんだね。
「君がいるのはここじゃない。
迎えに来たよ。我が主。時巡りの姫。
さあ、行こう」
にこやかに微笑み、私から視線を離さないカプリスは
ゆっくり間合いを詰めてくる。
「させるか! 」
構えていた銃の引き金を弾く。
二頭の翠玉の龍が絡み合うようにカプリスを襲う。
「地味に煩わしいね、翠玉の王子。
このまま姫を奪って、終幕に向かいたいのだが。
ちりゆく恋に、流す涙も美しいだろうしね」
カプリスは片手であっさりカナタの攻撃を打ち消す。
弾丸を装填しながら、カナタは必死で応戦するが
私が足枷になっているのだろう、ジリジリ押されている。
こちらが不利なのは目に見えている。
カプリスの攻撃は純粋な魔術によるもので
特に顔色を変えることなく、金色の刃を飛ばす。
私には当たらないよう、盾になるカナタには小さな傷が増えていく。
「カナタ、血が……」
「かすり傷です。問題ありません」
相手の魔力も壮大なのも。戦力差は大きいのだろう。
カプリスはまるで本気にしていない。
(私の力がカナタの力になるんだとしたら)
私はカナタの背に額を当てる。
やり方はわからない。ただ、カナタの力になりたい。
私を守ってくれていた魔力を、カナタに還したい。
(どうか守って。私の翠玉を)
祈る。ただカナタを想って。
しばらくして私の中の熱が放出し、カナタに移るのを感じる。
やる気になればできるものなのね。
「ハナキ、それ以上はダメだ! 」
「いいね、姫。翠玉の力を戻すんだね」
「あなたの守りが薄くなる! 」
つまらなそうだったカプリスがこの戦況を楽しんでいるように声をあげる。
危惧するカナタに私は安心させるように笑う。
「大丈夫。カナタが守ってくれるんでしょう? 」
「……命に代えても。あなたは誰にも渡さない」
カナタが放つ魔弾が、一層強い輝きを放つ。
「ぐっ……! 」
相殺が間に合わず、カプリスの脇腹をかすり、余裕綽々の表情を初めて崩すことができた。
(威力が上がってる)
「愛の力、てやつ? ありきたりな演出だな」
「そのありきたりが、世間一般で広く受ける定番でしょうよ」
畳み掛けるように数発、引き金を引く。
威力を上げた数発は、カプリスに致命傷を与えるまではいかずとも着実に彼を削っていく。
「っく、本当に鬱陶しい羽虫だね。
翠玉は黒金剛石には勝てないんだよ」
カナタの弾丸で傷ついていくローブに、褐色の肌に刻まれたかすり傷に心底不快そうにカプリスはまなじりを釣り上げる。
「そろそろ飽きてきたな。
……俺の干渉を払い除けられない時点で、お前は姫には相応しくない。
力不足だ。さっさと舞台から降りろ」
カプリスは底冷えするように冷たく金の瞳を光らせ、言葉と宵闇の魔力で威圧する。
今までの人を食ったような口調がガラッと変わって、別人のようだ。
こちらが本当のカプリスなのだろうか。
苛立ちと怒気が混じる。闇に金色が混じるオーラは禍々しくも美しい。
「ご冗談を。悪役は愛の力で倒されるものですよ。不粋な男はさっさと退場してください。
ハナキはあなたの元へはいかさない」
「お前の許可など必要ない」
「わあっ」
カプリスが一気に間合いを詰める。
私の目の前に、猛禽の瞳が。
捕食しようととらえてくる。
「姫。俺と来い」
「嫌! こないで!」
カプリスの伸ばした手が私の手首を掴もうとする。
ヴンっ!
ネックレスが発光し、カプリスの手が見えない壁に弾き飛ばされる。
半径1メートル以内の異性を吹き飛ばすのは嘘ではなかったようだ。
「チッ!忌々しい翠玉め。お前はそろそろ魔力ぎれだろうに」
弾かれた手を押さえながら忌々しげに舌打ちするカプリスに、カナタはニッと口元だけで笑う。
「その魔宝石は魔力の貯めた期間が長いんでね。そう簡単には奪われない」
「ふん、では殺すしかないか。
お前を殺したら後が面倒だから避けたかったんだが」
金色の瞳から遊戯の色が消え、本気の殺意に煌めいた。
「殺して解除して、姫を連れていくとしよう」
表情を消したカプリスの手のひらから魔法陣が浮かび、そこから出現した剣を握る。
三日月のような形状に、綺麗な房紐のついた、柳葉刀だ。
「危ない!」
「接近戦に持ち込む気ですね」
「死ね!」
「その前に蜂の巣ですよ」
・・・・・
カナタとカプリスの攻防は
しばらく続く。
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