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翠玉の章・溺愛√(ハッピーエンド)
(やや性的表現あり)睦言と翠玉の鎖
しおりを挟む「……………」
思い出したら口から砂糖が溢れそうな一夜を乗り越えて…
朝になりました。
遮光カーテンの隙間から漏れる朝日の感じから、夜が明けて間もない頃だろうか。
作りは主寝室だけあって私の部屋より大きくって豪華なカナタの部屋。
調度品的にはあまり変わらないけどね。
ベッドも3人は寝れそうな大きさで。
ふかふかで、どこかしらからカナタの匂いがする。
どうにも落ち着かない。
私はカナタを舐めていた。
変態紳士なんてもんじゃない。
(ど変態紳士だったよ。この男)
「私の想いの全部をあなたにぶつけたら、きっと壊れてしまうから」
「少しづつ、毎日私を感じてください。
あなたが、私無しではいられなくなるように」
「あなたが、私に溺れるように。全力で甘やかしますね。朝も、昼も、もちろん夜も」
ものすごい睦言の雨をふらされて胸焼け気味だ…
執拗に、息もつく間もないくらいに翻弄された。
身体のうちから波のように押し寄せる快感。
与えられる初めての感覚に飲み込まれそうで怖いくらいだったのに。
嫌だやめてと言っても止めてくれない。
いつもより強引で意地悪で
「愛が重い…」
隣で眠る端正な顔を眺める。
眠るカナタを見るのは、何気に初めてだ。
規則正しい寝息。長いまつ毛。
通った鼻筋に薄い唇。
「綺麗だなぁ」
この顔が、この手が……と考えると羞恥で転がりそうになるが、
思わず触れたくなる。
指先でカナタの唇に手を伸ばすと……
「おはようございます。昨夜は大変素敵な夜でしたね? 」
触れる手前で翠玉の瞳がゆっくり開く。
セットしていない無造作な前髪。
一糸纏わぬ姿で均整の取れた体つき。
シーツで隠されてはいるが。念のため……
溢れ出る色気が……すごい。
「起きてたの?」
流石に直視できない。恥ずかしすぎる。
「いいえ、あなたが可愛いことを言ってくれたくらいまでは寝てましたよ」
蕩ける様に、嬉しそうに目を細める。
伸ばした手は取られて、口づける。
「~~~~~~~」
心臓に悪い。声にならない声が出てしまう。
「良かった。夢じゃなかった。
あなたがいる。」
私を抱き寄せ、口づける。
「あなたは眠れましたか?
体の調子は? 悪夢は見ませんでしたか? 」
「うん、なんともないよ?
悪夢は久しぶりに見なかったし、すごくぐっすり眠れたよ」
(途中から意識がなくなったから、正直何があったか覚えていない……夢も見なかったよ)
「……ですよね。それはまあ気持ちよさそうに眠っていましたね。私の気も知らないで」
私の返答に、微笑みながらもカナタは少々拗ねた様な態度をする。
「…えーっと。その、ただ寝てただけ? 」
「遺憾ながら。理性ある男でよかったですね。
あなたの意識がない中で最後まで想いを遂げても意味は無いですしね」
「つまりは、まだ未遂……? 」
「……これから完遂してもいいんですよ? 」
据わりきった目は笑っていない。本気だ……
「朝です! 支度しないと、ね」
これからなんて冗談じゃない。あの感じでぐいぐい来られたら私の心臓がもたない。
触られてないとこなんてないくらい色々したじゃないか、と思わないこともない。
申し訳ないが話を逸らす。
「まぁ、今日はこのくらいで我慢します。
なので充電させて下さい」
逃れようとする私をがっちり捕まえて、抱きしめる。
「お、お手柔らかに…」
彼の気が済むまで抱き枕でいようと諦める私だった。
・・・・・・・・・・
想いを通わせた以上は包み隠さず素直に打ち明けることにした。
金鷲の夢に苛まれていたことや、その詳細を。
「私のハナキにちょっかいかけたぁ? 」
カナタの顔が恐ろしいことになっていたのは視界にはいらないようにする。
カナタ自身もここ数日に
私の内面の玻璃の花に少しづつ変化があったのには気づいていたそうで。
昨日は特に不快な金の混じった黒い靄がかかっていたので、只事じゃないと動いてくれたみたいだ。
(眠っていた時にカナタがキスをして、私に魔力を移してくれていた。
それで金鷲は通信を保てなくなり一時撤退を余儀なくされたんだね)
私の中にカナタの魔力は護符をつけられていたこともありしっかり染み込んではいたようだ。
……けど。金鷲はそれをも掻い潜って接触してきた。
かなりの力を持っている人物と考えて間違いないのだろう。
(正体がわからなのが本当に不気味…)
そんな金鷲の言っていた『契ればいい』はやっぱりそういう意味合いで
自分の魔力を『体を繋げて』相手に注ぐ……
キスでも効果はあるけど
手っ取り早いのは致すこと、らしい。
「染める」と、よほど特殊でなければ、魔力を媒介した精神攻撃などは軽減あるいは無効化することもできるそうだ。
「あなたを私の魔力で染めあげれていたら、万事問題なかったんですがね。これだけでは足りなかった様ですね」
ネックレスを指先で突く。
「これは、守りの翠玉に私の魔力を混ぜて合成した魔宝石で作っています」
「そこそこ強力な護符なのですが、効果が薄かったことを思うと
野暮天野郎は相当な魔力の持ち主なのでしょうね。
あるいは、祝福もちか」
(金鷲、野暮天扱い…)
「そこそこなの? 離れたら爆発するんだよね? 」
「いいえ? あれは嘘です。そんな仕様にしたらあなたが怪我するじゃないですか」
首のネックレスに触れながら恐る恐る確認する私に、しれっとネタバラシをするカナタ。
「………結構ビクビクしてたんだけど」
とんでもない嘘をつかれていて、私はちょっと怒っている。
腹立ち紛れにカナタを睨めつけた。
「ふふ、すみません。私も少々焦っていまして。
そもそも、リュート君とデートみたいなことをするあなたもよくない」
むっ、と子供みたいに膨れる美形。
「デート?? 」
身に覚えがないんだが……首を傾げる私。
「髪。触らせてたでしょう? あなたは婚約者じゃないのに」
「ああ。あの時の……あれはミズキさんの贈り物選ぶのに頭貸してただけだったんだけど……
その時普通に声かけてくれれば良かっただけじゃないの」
どんだけ嫉妬深いんだ。
ゲンナリしながらも、あの時の豹変カナタの原因がわかりスッキリはするね。
「頭ではわかっていてもね。
あなたのことになると冷静じゃいられなくて……
時期尚早だったかなと思いましたが、どさくさで繋いじゃいました。」
「どさくさで繋ぐの?? ひどくない? 」
「あなたの居場所が察知でき、あなたに下心を持って半径1メートル以内に近づく異性を威圧する術式が組み込まれているだけですよ。
あとは……まあ、秘密です」
ふふっと人差し指を唇に当てて含みを持たせながら沈黙する。
「秘密とか何それ、もっと怖い…」
「悪いものじゃありませんから安心してください。
この南京錠があれば悪い虫はなかなかつかないはずなんですけどね」
これをつけた後から随分自由が効く様になったし、ちょくちょく散歩中に会うなと思っていたら、そんなカラクリがあったとは。
これは、飼い猫につける首輪ですね。
「……外したいですか? できなくはないですが……」
カナタの左胸に紋様が浮かぶ。
淡い緑の紋様が浮かび上がり、鍵の形を模っていく。
あの時、私を施錠した鍵だ。
幻想的な情景に私は息を呑む。
「あなたと私を繋ぐ鎖は、この鍵で解除できます。
もう一つの方法は私が死ぬ時でしょうか。
自由になるチャンスですよ、どうしますか? 」
平静を装ってはいるが、ほんの少し、眉根を下げる。
私を尊重しようとしているが、
不安げに揺れる翠玉の瞳が、求める答えはひとつしかないのだろう。
「ううん、いいよ。このままで。
私を守ってくれてたのは本当だもの。」
「……あなたは本当にお人好しで可愛いね。
他にも悪い虫がつかないか心配ですよ。
……愛しい花に」
ネックレスの鎖を指に絡ませ、艶っぽく笑うカナタは心底嬉しそうで
私もすっかり絆されてしまっている……ようだ。
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