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翠玉の章・共通√

選択できない選択肢って、意味ある?後編

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時は少し遡る。

「お嬢さん。
牢獄と私、囚われるならどちらが良いですか?」

「究極の質問!どっちも嫌です!」

「困りましたね。選択肢はこれしかありませんので」

「私を解放するって第3の選択肢があってもいいんじゃないかと…」


恐る恐る希望を口にしてみたが、ニコッと微笑み


「……牢獄は春でも寒くて冷たいでしょうね。余罪もたっぷりありそうなあなたなら、鞭打ちくらいじゃ済まないかもしれないな」
「しかも看守は男ばかりだ。君のような若くて可愛い子が入ったら…
ーーーどうにかなってしまうかも、しれないね?
囚われの君を思うと憐れでならない」

黒いオーラがダダ漏れてきそうな圧でつらつらと、カナタ。

「…どっちにしても囚われているんですけど」

「ふふっ、そうですね。
どちらにしても逃げ場がないのだから、
私に囚われてくださいね」

軽口を叩きながらも私を見つめる瞳だけはとても優しい。
あの翠玉エメラルドの瞳に私が映ると、強く出られない気にさせられる。

「目が合ったが運の尽き…」

このような流れで私に拒否権はなく
否応なく連れていかれる羽目になるのであった。

・・・・・

(その後、はぐれていた連れのもう1人の美男子イケメンリュートと合流して、
ここに連れてこられたと言うわけで)

(お金持ってそうとは思っていたけど、まさかここまでとは)

『仕事』するならカモさん選び放題!な環境だけど

高貴なカモの群れに丸腰で放り込まれたら、こちらの方が淘汰されてしまうわ。
 
(つまりは、場違いが過ぎるのでいたたまれない…)


「今日は疲れましたね、部屋に戻りましょう」
「そうだね。…くれぐれも!無理強いはしないように!!
はやまっちゃダメ!焦ってもダメだよ~?」

面白半分で囃しはやし立てるリュートに、呆れた視線を投げかけるカナタ。

「リュート君とは違いますよ、ご心配なく。」

「あ~怖い怖い。じゃあハルちゃん、また明日ね!おやすみ~!」

「はい、おやすみなさい」

カナタとリュートのホテルの部屋は隣同士だが
私が知っている安宿と違ってドアの間隔はずいぶん離れている。

「あ、そうだハルちゃん」
「はい?」

自分の部屋に向かおうとして、リュートは思い出したように振り返る。
いたく真面目な声色に私はちょっとたじろいた。

「君って、よく似た姉か妹いない??」

「………」

「どうなんだろ?わからない。」
私に関する記憶は名前以外ないので、こうとしか答えられない。

「ふーん、そっか。苦労したんだね…変なこと聞いてごめんね、今度こそおやすみ~!」

何か思うことがありそうな顔をしつつも、追求はせず
いつもの軽いノリでにこやかに自室に向かった。

「リュート君がすみません。嫌なことを思い出させたでしょう?」

「いや、別に気にしてないよ」
昔の記憶がほとんど無いから、思い出すこともできなかったりするし。

(それよりもっと気になるのはこの状況だよ…)

「あの、やっぱり入らなきゃダメ…?
一応私も嫁入り前だし…ちょっと」

「牢獄のベッドはさぞかし寝心地はいいだろうね?」

「…ですよねぇ~」
あー、泣きたい。

真っ黒い笑顔で脅迫してくるカナタに勝てるはずもなく。

尻込みする私を有無を言わさずに
引っ張り込むように部屋に通されたのだった。
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