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その後
82 ほぼ勘違い。
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クルトは産まれた町からずっと、冒険者の上澄みにいた。体格にだけは恵まれなかったが、代わりに優れた容姿という才能があった。
だからクルトはそれも才能の一つと考え、それを存分に使ってロットまで最年少で辿り着いた。ここに至るまでも何の苦労もなかった。
オイデンへはロットで紹介状をもらわなければ行けない。だからクルトはギルド長に近付いた。
別に実力が伴わない不正で紹介状が欲しかった訳ではない。ただ注目されていれば、それだけ早く評価も行われると考えただけだった。
自分の実力がオイデンに足りないとは欠片も思っていなかった。それくらいの突出した実力はあった。
それから少しして、新しい冒険者が来た。彼はとても強くて容姿にも優れ、初めてクルトは欲しいと思った。
必要だから落とすのではなく、欲しいから落としたいと思ってクルトは彼に近付いた。そして拒絶された。
彼はクルトがギルド長と関係を持っていることを知っていたのだ。思えばあれがクルトの初恋だったと思う。
拒絶されても何度もクルトは彼に迫り続けたが、相手にされなかった。
彼は後から来たのにクルトと同時に、つまり彼は最速で紹介状を手にして共にオイデンへ拠点を移した。
そこでもクルトは諦めなかったが相手にされず、そして彼との圧倒的な実力差を見せ付けられた。
「中央都市に行く冒険者は本当の化け物だけで充分だ」といつか誰かが言っていた言葉を思い出した。
彼はクルトに最後まで興味を示さないまま、僅か半年で中央都市へ拠点を移した。
それから二年。真面目に取り組んだが中央都市は遠いまま、風の噂で彼が結婚したと聞いた。
一途でそこそこ美人なネコ。クルトの方が美人だと聞いた。しかも中央都市の住人で、冒険者でさえなかった。
クルトに足りなかったのは実力でも容姿でもなく、一途さだったのだと思い至った。
狡猾に生きて来たつもりはなかったが、振り返ればそんな生き方だった。
それからクルトは本質は変えられないものの、表面上は品行方正に整えて冒険者生活を送った。
伴侶を溺愛しているらしい彼がそれで振り向いてくれるはずもないが、再会した時に胸を張って会いたかった。
再会するかもわからないのに、ただそれだけで表面上クルトは変わった。
けれど実力は伸び悩み、行けないことはないが最低辺の冒険者になるとギルド長に言われた。
得意だと思っていた魔法は、中央都市では厳しいレベルだと知った。
もやもやはするが、最低辺か上澄みの冒険者どちらの生活を選ぶかと言われればもちろん上澄み。
オイデンに残って新人の指導にあたるまでにはなった。そこでラウリーに出会った。
ラウリーは無表情だがクルトよりも美形。今のロットから来たと聞いて、自分と同じ様に容姿を最大限に活かして来たのだと思った。
昔の自分を見ているようでロイにほとんど任せていたが、ラウリーも魔法が得意で関わらざるを得なかった。
魔法のレベルはオイデンでも既に上澄みなのに、それでも熱心にクルトに教えを乞うてきた。
クルトでさえパワー不足が足を引っ張っているのに、より背が低いラウリーに中央都市は遠いだろう。
それは本人もわかっているようだったが、それでも前に進もうとする。
彼が愛するのはこういう人かも知れないと思って、勝手に妬んだ。
ラウリーはすぐにドSのタチとして有名になったが、ほぼ同期のセルジュとアランの視線をいつも集めていた。
二人共タチなのにも関わらず、暇さえあればラウリーを見ていた。
欲求不満そうなセルジュを誘えば乗って来た。セルジュの夜は強くて、なのに優しさもあって最高だった。
好きになるかもしれない。そんな予感があった。けれどセルジュとの関係に進展はなかった。
それに接すれば接するほど、ラウリーが容姿を利用したことはないと気付き始めていた。
ラウリーの生き方があまりに不器用過ぎた。ついクルトも構うようになってしまうレベルだった。
なのにタチ同士であってもラウリーは人を魅了する。クルトにとって眩しいが妬ましい存在になっていた。
ラウリーと同じテントで寝られるようにしたが、ロイは止めなかった。
さっさと寝てしまったラウリーをじっくりと眺めた。本当に容姿が整っていて、だけれど寝ていると年相応で。
流石に依頼中に何かを仕掛けるつもりはなかった。
けれどセルジュの匂いがする毛布にくるまっているラウリーが羨ましかった。だから敢えてすぐ傍で寝た。
ラウリーがそれに気が付いて何かしてくれば、という期待もあったかもしれない。
欲望に弱い普通のタチだと、セルジュに見せたかっただけかもしれない。
自然にすっと抱き寄せられて、ドキリとした。優しいが強い抱擁。ラウリーがタチとして人気な理由がわかった気がした。
しかも朝起きた時のあの反応。寝ぐせも付いて頭もボサボサで。本当に真面目なのだなと思うと、彼をまた思い出した。
ラウリーは昔の自分になど欠片も似ていない。真面目で、一途な彼に似ていたのだ。
そして、やはり自分には眩し過ぎる人種だったのだと思い知った。クルトは自分が少し前に進める気がした。
あれは初恋だったからこその背伸びの恋。だから憧れも多くて自分との性格の相性を考えていなかった。
今ならわかる。クルトに似合うのは欲望に忠実でそれなりに遊んでいる男で、包容力のある男だ。
「本格的にセルジュを落としにかかろうかな……?」
片思いはしているようだが、上手くいっている気配はない。だったらまだチャンスはあるはずだった。
だからクルトはそれも才能の一つと考え、それを存分に使ってロットまで最年少で辿り着いた。ここに至るまでも何の苦労もなかった。
オイデンへはロットで紹介状をもらわなければ行けない。だからクルトはギルド長に近付いた。
別に実力が伴わない不正で紹介状が欲しかった訳ではない。ただ注目されていれば、それだけ早く評価も行われると考えただけだった。
自分の実力がオイデンに足りないとは欠片も思っていなかった。それくらいの突出した実力はあった。
それから少しして、新しい冒険者が来た。彼はとても強くて容姿にも優れ、初めてクルトは欲しいと思った。
必要だから落とすのではなく、欲しいから落としたいと思ってクルトは彼に近付いた。そして拒絶された。
彼はクルトがギルド長と関係を持っていることを知っていたのだ。思えばあれがクルトの初恋だったと思う。
拒絶されても何度もクルトは彼に迫り続けたが、相手にされなかった。
彼は後から来たのにクルトと同時に、つまり彼は最速で紹介状を手にして共にオイデンへ拠点を移した。
そこでもクルトは諦めなかったが相手にされず、そして彼との圧倒的な実力差を見せ付けられた。
「中央都市に行く冒険者は本当の化け物だけで充分だ」といつか誰かが言っていた言葉を思い出した。
彼はクルトに最後まで興味を示さないまま、僅か半年で中央都市へ拠点を移した。
それから二年。真面目に取り組んだが中央都市は遠いまま、風の噂で彼が結婚したと聞いた。
一途でそこそこ美人なネコ。クルトの方が美人だと聞いた。しかも中央都市の住人で、冒険者でさえなかった。
クルトに足りなかったのは実力でも容姿でもなく、一途さだったのだと思い至った。
狡猾に生きて来たつもりはなかったが、振り返ればそんな生き方だった。
それからクルトは本質は変えられないものの、表面上は品行方正に整えて冒険者生活を送った。
伴侶を溺愛しているらしい彼がそれで振り向いてくれるはずもないが、再会した時に胸を張って会いたかった。
再会するかもわからないのに、ただそれだけで表面上クルトは変わった。
けれど実力は伸び悩み、行けないことはないが最低辺の冒険者になるとギルド長に言われた。
得意だと思っていた魔法は、中央都市では厳しいレベルだと知った。
もやもやはするが、最低辺か上澄みの冒険者どちらの生活を選ぶかと言われればもちろん上澄み。
オイデンに残って新人の指導にあたるまでにはなった。そこでラウリーに出会った。
ラウリーは無表情だがクルトよりも美形。今のロットから来たと聞いて、自分と同じ様に容姿を最大限に活かして来たのだと思った。
昔の自分を見ているようでロイにほとんど任せていたが、ラウリーも魔法が得意で関わらざるを得なかった。
魔法のレベルはオイデンでも既に上澄みなのに、それでも熱心にクルトに教えを乞うてきた。
クルトでさえパワー不足が足を引っ張っているのに、より背が低いラウリーに中央都市は遠いだろう。
それは本人もわかっているようだったが、それでも前に進もうとする。
彼が愛するのはこういう人かも知れないと思って、勝手に妬んだ。
ラウリーはすぐにドSのタチとして有名になったが、ほぼ同期のセルジュとアランの視線をいつも集めていた。
二人共タチなのにも関わらず、暇さえあればラウリーを見ていた。
欲求不満そうなセルジュを誘えば乗って来た。セルジュの夜は強くて、なのに優しさもあって最高だった。
好きになるかもしれない。そんな予感があった。けれどセルジュとの関係に進展はなかった。
それに接すれば接するほど、ラウリーが容姿を利用したことはないと気付き始めていた。
ラウリーの生き方があまりに不器用過ぎた。ついクルトも構うようになってしまうレベルだった。
なのにタチ同士であってもラウリーは人を魅了する。クルトにとって眩しいが妬ましい存在になっていた。
ラウリーと同じテントで寝られるようにしたが、ロイは止めなかった。
さっさと寝てしまったラウリーをじっくりと眺めた。本当に容姿が整っていて、だけれど寝ていると年相応で。
流石に依頼中に何かを仕掛けるつもりはなかった。
けれどセルジュの匂いがする毛布にくるまっているラウリーが羨ましかった。だから敢えてすぐ傍で寝た。
ラウリーがそれに気が付いて何かしてくれば、という期待もあったかもしれない。
欲望に弱い普通のタチだと、セルジュに見せたかっただけかもしれない。
自然にすっと抱き寄せられて、ドキリとした。優しいが強い抱擁。ラウリーがタチとして人気な理由がわかった気がした。
しかも朝起きた時のあの反応。寝ぐせも付いて頭もボサボサで。本当に真面目なのだなと思うと、彼をまた思い出した。
ラウリーは昔の自分になど欠片も似ていない。真面目で、一途な彼に似ていたのだ。
そして、やはり自分には眩し過ぎる人種だったのだと思い知った。クルトは自分が少し前に進める気がした。
あれは初恋だったからこその背伸びの恋。だから憧れも多くて自分との性格の相性を考えていなかった。
今ならわかる。クルトに似合うのは欲望に忠実でそれなりに遊んでいる男で、包容力のある男だ。
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