とある冒険者セルジュ

相伽

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その後

76 久しぶりの。

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 同棲後は泊まりがけの共同依頼に来客もパラパラあり、忙しくて夜にまとまった時間が取れない日が続いた。
 ラウリーの体力の問題もあるが、セルジュと普通に一緒に寝るだけで満たされていたのも大きい。

 だが折角恋人と同棲しているのだから、がっつりシたい。そして今日、ようやく面倒な新人たちが片付いた。
 補佐ではあるがロイやクルトを更に尊敬してしまうほどには、新人指導にはかなり神経を使った。

 スノウ狙いのネコとそのネコに惚れていたタチは、オイデンにいる資格を取り消された。
 指導の邪魔になっていたのが主な理由で、やる気なしとみなされた。

 ネコは仕事よりもタチを探すことに執着しているし、それをタチが妨害して二人は今も揉めている。
 オイデンで受け入れられる冒険者の人数には限りがある。色恋優先で狩りに興味がない冒険者に、オイデンに留まる資格はない。

 魔法が出来ないフリをしていたネコは、実力不足としてこちらも資格を取り消された。
 男を漁りたいだけなら、普通に長期滞在の観光客としてオイデンに出入りすればいいだけだ。

 どちらも紹介した指定ギルドの面子を潰したから、表向きはなくても裏でそれなりの待遇があるだろう。
 また冒険者としてオイデンに来る可能性は、ほぼない。何の為に来たのかよくわからない人たちだった。

 変態は一応育成システムに組み込まれることにはなったが、その育成からラウリーとスノウは外れた。
 誰かが共闘してくれないとその後がないが、タチからは嫌がられているしネコからは嫌われているらしい。

 ネコから愛されているスノウを痩せさせたのが、ネコから大きな反感を買う原因になったようだった。
 どうするかは本人次第だが、共闘相手を見つからなければ前の拠点に戻った方が稼げる。

 目が死んでいたタチだけが、オイデンに優しく迎えられる結果となった。彼は今先輩たちと組めるように、ビシバシ指導されている。
 既に共闘相手も紹介されていて、魔法が苦手らしいのでラウリーもそのうち共闘することになるだろう。

 スノウは依頼が終わっただけでも大分楽になったようで、まずは体を戻すようにと言われている。
 痩せたスノウを心配した人たちが結束しているらしいので、そのうち元気になるだろう。モナカがライバルが多過ぎると文句を言っていたが。

「ラウリーさん、隣いいですか?」

 スノウとモナカ、セルジュの四人で飯を食べていたら、普通に変態がやって来た。楽しい食事の時間が、一瞬で剣呑な雰囲気に変わった。

「断わる」

「えっ!?」

 驚かれる意味がラウリーにはわからなかった。

「新人指導の共同依頼はもう終わったから、俺がお前の面倒を見る理由はなくなった」

「え、でも……」

「でももクソもない」

 その言葉を最後に、ラウリーは完全に変態を無視した。

 今までは望まれれば飯を一緒に食っていたし、多少のお触りも我慢していた。けれどもう我慢する理由がない。
 不快だという意思表示は常にしていた。それでも不快なことを続けてきた変態に、優しくする理由もない。

 この時たまたま飯屋に居合わせた人たちは、ラウリーの本気の拒絶を知って肝が冷えた。
 普段でも目線だけで人を殺せそうだったが、あれはほぼ通常モードだったのだと改めて理解した。

「おい、突っ立ってないでどっか行けよ。邪魔だ」

 誰にでも優しいスノウがそう言い、同じく優しいモナカが手でしっしと追い払う仕草をする。
 誰とでも友好的なセルジュでさえ、変態を一瞥もせずに普通にラウリーとの会話を再開させた。

 こいつ終わったなと飯屋にいる誰もが思った。

 スノウもモナカもセルジュも、交友関係が広い。ラウリーは親しい友人は少ないが、慕われてはいる。
 しかもラウリーは住人人気が異常なほどに高い。あっという間に町中に噂が広がるだろう。

 変態はこの場から立ち去るしか無かった。

「やっとすっきりしたな?」

 セルジュの言葉にラウリーはきつくなっていた視線を緩めた。

「マジでもう、関わりたくない」

「関わらないでいいだろ」

「そうだよ」

 その後は四人で楽しく食事をした。それからは狩りも通常に戻り、ギルドもいつもの雰囲気を取り戻した。

 そして二人はようやく纏まった休みを同時に取ることが出来た。二人共二連休。よく働いた。

「流石に気疲れしたわ」

「だな。俺も」

「セルジュでも疲れるの?」

「疲れた。ラウの癒しが足りない」

「へぇ?」

「ヤろ?」

 二連休だからと、早めに戻れたラウリーが食材の買い物は多めにしておいた。疲れもあるし明日でいいかなと思っていたのだが。

「ヤるか」

 敢えてにやりと笑ってから抱き寄せて口づけをした。
 セルジュが慌てたようにラウリーを抱えて部屋に連れ込んで服を脱がすので、ちょっと笑いそうになった。

「逃げねぇよ」

「わかってるけど、なんか」

 それだけシたいと思ってくれていることも嬉しいが、性欲の強いセルジュが今まで我慢していたのだと思うとついにやけてしまう。
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