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その後
75 弱る二人。
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何処に部屋を借りたかは敢えて周囲には言わなかったし、周囲の人も誰も聞いては来ない。
やはりオイデンは居心地が良い。来る人も新人たちにつけられていないか、気を付けて訪ねてくれる。
来るのはロイとクルト、スノウにモナカくらいだが、地味にセルジュが抱いた人が二人もいる。
そしてセルジュの嫉妬の対象になっている人もいる。
彼らもラウリーのことを心配してのことなので、セルジュも含めて何も言えなかった。
とにかく周囲からはキレたラウリーが魔法で対処してしまうのではと、驚く程に疑われている。
ちなみに二人共外泊は仕事以外でしていないにもかかわらず、抱きたい時はネコの部屋に行っているらしい。
互いに付き合う前から他の人との体の関係は切れていたし、何かが噂になることも無かった。
お互いに別々で飲みに行くこともあるし、夜に同じ家に帰って一緒に寝る以外はあまり変わらない生活だった。
夜はセルジュの部屋に置いたベッドで寝ているので、ラウリーがセルジュの部屋に入り浸りになっている。
今日は来客もなく、久しぶりに二人の夜を過ごせている。
セルジュがヘッドボードにもたれて座っているラウリーの腹に、がっちり抱き着いている。
「なんか折角同棲を始めたのに、人の出入りが多過ぎて落ち着かない」
ラウリーの言葉に同意するように、セルジュの抱きしめる力が強くなった。本気を出されたら背骨が折れる気がする。
「スノウも憎いが、それよりもあの変態が憎い」
「俺はモナカが怖い」
「俺も嫉妬してるからな?」
「わかってる。けどモナカがスノウを見る目がいよいよヤバくないか?」
「さっさと押し倒して、ひっくり返されればいいんだ」
セルジュが低い声で言って来た。
「……セルジュ的にはあの二人だと、モナカが抱かれる方なの?」
「心底どっちでもいい」
「確かに。どっちでもいいな」
言いながらセルジュの頭を撫でる。むしろ片方に拘らず、毎回変わればいいと思う。
そういう問題ではないのだろうなとは思うが、所詮他人事だ。それよりもセルジュの方が重要だった。
「変態にセルジュのネコだって言ったら、信じると思う?」
「……信じないと思う。ラウリーは絶対にタチだと信じてるみたいだ」
「やっぱり? 元からネコだから、屈服もクソも無いんだけどなぁ……」
「スノウに襲い掛かって、殴られていれば良かったのに」
「確かになぁ……。別に俺も殴ればいいんだけど、皆俺が先に魔法が出ると思って心配するんだよなぁ」
「それは俺も心配」
「マジで?」
そんなに判断力が鈍いと思われているのかと思うと、少し傷つく。
「マジで。あの変態、普通に押し倒すんじゃなくて毒とか使いそうでヤダ」
「あーそうなったら迷わず魔法を使うわ。首ちょんぱするわ」
「だから心配されてるんだ」
「なるほどなぁ。あんな変態にヤられるくらいなら、って思うからな」
「……俺、今すぐ変態を森に捨てて来ようかな」
「セルジュ。ギルド長からも、もう少しの辛抱だって言われているから」
「わかってるけど、あいつ変態なだけで指導は真面目に受けてるんだろ?」
「それな~」
真面目に指導を受けているので、変態はこのままオイデンに残る。つまりこれからも付きまとわれる。
そう思うと手が止まらなくなり、セルジュの頭を撫でまわし過ぎて髪の毛をぐちゃぐちゃにしてしまった。
セルジュは全く気にしていなかったが、ラウリーは慌てて整え始めた。ラウリーとスノウは根が真面目過ぎるのだとセルジュは思う。
変態ではあってもちゃんと指導を受けている以上、新人としてきちんと扱わなければと考え過ぎている。
ラウリーが静かに弱っていて、スノウを跳ね除ける気力もなくなっていることにセルジュは気が付いていた。
今ここでセルジュが嫉妬を表に出し過ぎると、ラウリーも痩せてしまうかもしれない。
スノウは変態からは逃れたものの、未だに毎回あちこちで修羅場に巻き込まれている。
それにスノウはラウリーに変態を押し付ける形になったことを気に病んでしまい、痩せるのが止まっていない。
何故ラウリーに抱き着くのかまでは不明だが、二人共弱っているのは間違いない。
だから何だかんだでセルジュもモナカも、二人に強く言えないでいた。
モナカに至っては友人なので言う権利もないが、セルジュが強く言えないのはそういう理由からだった。
セルジュはモナカと協力して、ほぼ全ての冒険者を味方にしていた。
二人が好かれていたので簡単ではあったが、一部二人に嫉妬している冒険者の存在が不安だった。
だから不安は拭えないし、スノウがラウリーにベタベタしていてやっぱりもやもやして仕方がない。
急にラウリーに両手で頬を支えられ、軽く口づけをされた。そのまま頭を抱き込まれた。
「はぁ。セルジュの癒しで乗り切るしかないよなぁ……」
こういうことを言うラウリーがずるい。セルジュのもやもやが一瞬で吹き飛ばされてしまう。
セルジュからもがっつり口づけをしたが、互いに明日の朝は早い。シたいけど出来ない。
「あ~がっつり訳がわからなくなるくらい、セルジュとえっちしたい」
「……俺も」
「寝ようか」
「うん。上に乗る?」
「いや。シたくなるから普通でいい」
そう言いながら、ラウリーはいつもよりセルジュにぴったりとくっついて来た。完全に弱っている。
真面目なところが好きだし、絶対に浮気しないとはわかってはいるが色々なことが上手くいかない。
やはりオイデンは居心地が良い。来る人も新人たちにつけられていないか、気を付けて訪ねてくれる。
来るのはロイとクルト、スノウにモナカくらいだが、地味にセルジュが抱いた人が二人もいる。
そしてセルジュの嫉妬の対象になっている人もいる。
彼らもラウリーのことを心配してのことなので、セルジュも含めて何も言えなかった。
とにかく周囲からはキレたラウリーが魔法で対処してしまうのではと、驚く程に疑われている。
ちなみに二人共外泊は仕事以外でしていないにもかかわらず、抱きたい時はネコの部屋に行っているらしい。
互いに付き合う前から他の人との体の関係は切れていたし、何かが噂になることも無かった。
お互いに別々で飲みに行くこともあるし、夜に同じ家に帰って一緒に寝る以外はあまり変わらない生活だった。
夜はセルジュの部屋に置いたベッドで寝ているので、ラウリーがセルジュの部屋に入り浸りになっている。
今日は来客もなく、久しぶりに二人の夜を過ごせている。
セルジュがヘッドボードにもたれて座っているラウリーの腹に、がっちり抱き着いている。
「なんか折角同棲を始めたのに、人の出入りが多過ぎて落ち着かない」
ラウリーの言葉に同意するように、セルジュの抱きしめる力が強くなった。本気を出されたら背骨が折れる気がする。
「スノウも憎いが、それよりもあの変態が憎い」
「俺はモナカが怖い」
「俺も嫉妬してるからな?」
「わかってる。けどモナカがスノウを見る目がいよいよヤバくないか?」
「さっさと押し倒して、ひっくり返されればいいんだ」
セルジュが低い声で言って来た。
「……セルジュ的にはあの二人だと、モナカが抱かれる方なの?」
「心底どっちでもいい」
「確かに。どっちでもいいな」
言いながらセルジュの頭を撫でる。むしろ片方に拘らず、毎回変わればいいと思う。
そういう問題ではないのだろうなとは思うが、所詮他人事だ。それよりもセルジュの方が重要だった。
「変態にセルジュのネコだって言ったら、信じると思う?」
「……信じないと思う。ラウリーは絶対にタチだと信じてるみたいだ」
「やっぱり? 元からネコだから、屈服もクソも無いんだけどなぁ……」
「スノウに襲い掛かって、殴られていれば良かったのに」
「確かになぁ……。別に俺も殴ればいいんだけど、皆俺が先に魔法が出ると思って心配するんだよなぁ」
「それは俺も心配」
「マジで?」
そんなに判断力が鈍いと思われているのかと思うと、少し傷つく。
「マジで。あの変態、普通に押し倒すんじゃなくて毒とか使いそうでヤダ」
「あーそうなったら迷わず魔法を使うわ。首ちょんぱするわ」
「だから心配されてるんだ」
「なるほどなぁ。あんな変態にヤられるくらいなら、って思うからな」
「……俺、今すぐ変態を森に捨てて来ようかな」
「セルジュ。ギルド長からも、もう少しの辛抱だって言われているから」
「わかってるけど、あいつ変態なだけで指導は真面目に受けてるんだろ?」
「それな~」
真面目に指導を受けているので、変態はこのままオイデンに残る。つまりこれからも付きまとわれる。
そう思うと手が止まらなくなり、セルジュの頭を撫でまわし過ぎて髪の毛をぐちゃぐちゃにしてしまった。
セルジュは全く気にしていなかったが、ラウリーは慌てて整え始めた。ラウリーとスノウは根が真面目過ぎるのだとセルジュは思う。
変態ではあってもちゃんと指導を受けている以上、新人としてきちんと扱わなければと考え過ぎている。
ラウリーが静かに弱っていて、スノウを跳ね除ける気力もなくなっていることにセルジュは気が付いていた。
今ここでセルジュが嫉妬を表に出し過ぎると、ラウリーも痩せてしまうかもしれない。
スノウは変態からは逃れたものの、未だに毎回あちこちで修羅場に巻き込まれている。
それにスノウはラウリーに変態を押し付ける形になったことを気に病んでしまい、痩せるのが止まっていない。
何故ラウリーに抱き着くのかまでは不明だが、二人共弱っているのは間違いない。
だから何だかんだでセルジュもモナカも、二人に強く言えないでいた。
モナカに至っては友人なので言う権利もないが、セルジュが強く言えないのはそういう理由からだった。
セルジュはモナカと協力して、ほぼ全ての冒険者を味方にしていた。
二人が好かれていたので簡単ではあったが、一部二人に嫉妬している冒険者の存在が不安だった。
だから不安は拭えないし、スノウがラウリーにベタベタしていてやっぱりもやもやして仕方がない。
急にラウリーに両手で頬を支えられ、軽く口づけをされた。そのまま頭を抱き込まれた。
「はぁ。セルジュの癒しで乗り切るしかないよなぁ……」
こういうことを言うラウリーがずるい。セルジュのもやもやが一瞬で吹き飛ばされてしまう。
セルジュからもがっつり口づけをしたが、互いに明日の朝は早い。シたいけど出来ない。
「あ~がっつり訳がわからなくなるくらい、セルジュとえっちしたい」
「……俺も」
「寝ようか」
「うん。上に乗る?」
「いや。シたくなるから普通でいい」
そう言いながら、ラウリーはいつもよりセルジュにぴったりとくっついて来た。完全に弱っている。
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