74 / 83
その後
74 嫉妬の相手。
しおりを挟む
ラウリーとスノウが二人で新人指導に駆り出されているのには、ちゃんとした理由があるとわかってはいる。
ギルド長の変更でロットが正常化しつつあるので、そろそろロットからの冒険者を受け入れる。
それがまた大人数になりそうで、しかも南側の冒険者には見張りをつける予定だと聞いている。
人手不足は間違いないので、それまでに使える人員を増やしておきたいと言ってはいるが。
確かにその思惑もあるのだろうが、二人が性格的に向いていないからと楽な奴らばかりを担当させれば他から不満が出る。
だからいきなり厄介な冒険者の担当をさせられている。スノウが痩せるのまでは予想外だったようだが。
それでスノウは周囲から向いていないのに頑張っていると評価されたし、ラウリーは変なのに粘着されて美形は大変だと思われている。
これでギルド長の本来の思惑通り、二人はあまりロットからの冒険者には関わらなくてもよくなるだろう。
ラウリーが新人教育の鬱憤晴らしを兼ねて、ロイたちと一緒に二泊三日の狩りに行ってしまった。
ラウリーがとてもウキウキしていたので言えなかったが、普通に寂しかった。今日の夜も寂しくて泣きそう。
そんなセルジュは今日はスノウと共闘する。本当はスノウも鬱憤晴らしに行く予定だったが、痩せすぎていたので居残り組になっていた。
スノウは本当にいい奴で、先輩冒険者としても素晴らしい人で。でもラウリーと仲良しなので嫉妬はする。
「おっ、あっち。鹿の亜種だ。俺が受け止めるから魔法で角を落とせよ」
こうやってセルジュが苦手なことを練習できるようにしてくれる。本当にいい奴だからこそ嫉妬する。
ちなみに探索範囲も広くて、セルジュではまだ探知出来ていなかった。
鹿の亜種は頭から立派な枝分かれした角が生えている。これは固いので魔法で落とすのが高価買取の秘訣。
けれどコントロールも威力もイマイチなセルジュではかなり難しい。スノウは上手にするので嫉妬する。
「おぃいい! 俺に当たるだろが!」
普通にスノウに当たる軌道で放ってしまったが、避けてくれた。嫉妬から来るわざとじゃない。
スノウなら当たっても平気だが、よくはない。当たっても大丈夫だからこそ練習台になってくれている。
ラウリーだと個体によっては押し負けるが、それをスノウはしっかりきっちり押し留めている。
本来なら前衛にとって危険な角を先に落とすという目的なのだが、今は練習だからと頑張ってくれている。
「すまん! ちょっとでも動くと外れちまう!」
「これ以上動かさないのは普通に無理だぞ~。落ち着いて、冷静に」
何とか二本とも切り落とせて、スノウが普通に首を落とした。ラウリーなら魔法で角も首もさくっと同時に落としてくれるので、前衛として楽だ。
「切り口はまぁまぁ上達したな。でも大きいほど金になるんだから、もっと根元からギリギリを狙わなきゃな」
落ち込む。でも優しくアドバイスもしてくれるのだ。
「セルジュはもう、頭もこそげるつもりで狙えばいいんじゃないか?」
「その辺の匙加減も上手くいかないんだよなぁ」
頭もこそげると無駄な血は出るが、頭は特別な依頼でない限り現地で処分するので買取価格に差は出ない。
抑えてくれている前衛に血が飛ぶし暴れることもあるので普通に嫌がられるが、洗浄で綺麗になるので許してはもらえる。
荷物をスノウに渡し魔物を背負った。血抜きしつつこのまま町へ戻る。
往復は面倒だが、皮も肉も金になるので充分な稼ぎにはなる。
「帰りは探索の練習しろよ。もうちょっと範囲が広くないとな。魔力は薄く広くだ」
やっぱりスノウはいい奴なんだよなぁ。だからこそラウリーを取られるならスノウだと思ってしまう。
セルジュは魔力の濃度調整が下手で、近辺なら反応を拾いまくるが代わりに広範囲が出来ない。
「うーん、揺れが酷いし密度も安定しないなぁ。歩く度に揺れる」
「練習あるのみだな。ケツの穴閉めるみたいな感じで」
「アドバイスが下品だよな」
「ラウは何て?」
「……筋肉しめる感じでって」
「一緒じゃねぇか」
違う、とは言えない。最初はそう言っていたが、今は射精を堪える感じでやってみろと言われている。
ラウリーを気持ち良くさせる為に射精は耐えられるが、必要以上に出て来る魔力を抑えられない。
「なぁ、ラウのことなんだけど。あのキモイのを引き取ってくれて助かってはいるが、大丈夫なのか?」
「今んところは家もバレてないし、大丈夫は大丈夫だ。気持ち悪がってはいるけれど」
あの変態が、スノウがラウリーに抱かれていると勘違いしなければよかったのにと今でも思うが。
「後さぁ、教えてもらったんだけど、ラウに粘着しているネコがいるって」
「またぁ?」
言った途端にぶわっと魔力が漏れてしまった。
「またっていうか、以前ラウと共同依頼で一緒になった時に、庇われてから惚れたんだって」
軽く怪我をする程度で庇う必要がない状態だったが、ラウリーはきっちり間に入ったらしい。
「ラウは本当にどれだけ惚れさせたら気が済むんだ」
「な~。聞いた話では後姿が格好良過ぎて見惚れていたら、振り返ったラウの顔を見て撃ち抜かれたんだと」
「あ~目力凄いもんな、ラウ」
気持ち良過ぎて泣いている時も可愛いという意味で、破壊力が凄い。
「今日は二人で寂しく飲もうぜ~」
「はぁ、飲む。だけどスノウは飯も食え」
「……」
ギルド長の変更でロットが正常化しつつあるので、そろそろロットからの冒険者を受け入れる。
それがまた大人数になりそうで、しかも南側の冒険者には見張りをつける予定だと聞いている。
人手不足は間違いないので、それまでに使える人員を増やしておきたいと言ってはいるが。
確かにその思惑もあるのだろうが、二人が性格的に向いていないからと楽な奴らばかりを担当させれば他から不満が出る。
だからいきなり厄介な冒険者の担当をさせられている。スノウが痩せるのまでは予想外だったようだが。
それでスノウは周囲から向いていないのに頑張っていると評価されたし、ラウリーは変なのに粘着されて美形は大変だと思われている。
これでギルド長の本来の思惑通り、二人はあまりロットからの冒険者には関わらなくてもよくなるだろう。
ラウリーが新人教育の鬱憤晴らしを兼ねて、ロイたちと一緒に二泊三日の狩りに行ってしまった。
ラウリーがとてもウキウキしていたので言えなかったが、普通に寂しかった。今日の夜も寂しくて泣きそう。
そんなセルジュは今日はスノウと共闘する。本当はスノウも鬱憤晴らしに行く予定だったが、痩せすぎていたので居残り組になっていた。
スノウは本当にいい奴で、先輩冒険者としても素晴らしい人で。でもラウリーと仲良しなので嫉妬はする。
「おっ、あっち。鹿の亜種だ。俺が受け止めるから魔法で角を落とせよ」
こうやってセルジュが苦手なことを練習できるようにしてくれる。本当にいい奴だからこそ嫉妬する。
ちなみに探索範囲も広くて、セルジュではまだ探知出来ていなかった。
鹿の亜種は頭から立派な枝分かれした角が生えている。これは固いので魔法で落とすのが高価買取の秘訣。
けれどコントロールも威力もイマイチなセルジュではかなり難しい。スノウは上手にするので嫉妬する。
「おぃいい! 俺に当たるだろが!」
普通にスノウに当たる軌道で放ってしまったが、避けてくれた。嫉妬から来るわざとじゃない。
スノウなら当たっても平気だが、よくはない。当たっても大丈夫だからこそ練習台になってくれている。
ラウリーだと個体によっては押し負けるが、それをスノウはしっかりきっちり押し留めている。
本来なら前衛にとって危険な角を先に落とすという目的なのだが、今は練習だからと頑張ってくれている。
「すまん! ちょっとでも動くと外れちまう!」
「これ以上動かさないのは普通に無理だぞ~。落ち着いて、冷静に」
何とか二本とも切り落とせて、スノウが普通に首を落とした。ラウリーなら魔法で角も首もさくっと同時に落としてくれるので、前衛として楽だ。
「切り口はまぁまぁ上達したな。でも大きいほど金になるんだから、もっと根元からギリギリを狙わなきゃな」
落ち込む。でも優しくアドバイスもしてくれるのだ。
「セルジュはもう、頭もこそげるつもりで狙えばいいんじゃないか?」
「その辺の匙加減も上手くいかないんだよなぁ」
頭もこそげると無駄な血は出るが、頭は特別な依頼でない限り現地で処分するので買取価格に差は出ない。
抑えてくれている前衛に血が飛ぶし暴れることもあるので普通に嫌がられるが、洗浄で綺麗になるので許してはもらえる。
荷物をスノウに渡し魔物を背負った。血抜きしつつこのまま町へ戻る。
往復は面倒だが、皮も肉も金になるので充分な稼ぎにはなる。
「帰りは探索の練習しろよ。もうちょっと範囲が広くないとな。魔力は薄く広くだ」
やっぱりスノウはいい奴なんだよなぁ。だからこそラウリーを取られるならスノウだと思ってしまう。
セルジュは魔力の濃度調整が下手で、近辺なら反応を拾いまくるが代わりに広範囲が出来ない。
「うーん、揺れが酷いし密度も安定しないなぁ。歩く度に揺れる」
「練習あるのみだな。ケツの穴閉めるみたいな感じで」
「アドバイスが下品だよな」
「ラウは何て?」
「……筋肉しめる感じでって」
「一緒じゃねぇか」
違う、とは言えない。最初はそう言っていたが、今は射精を堪える感じでやってみろと言われている。
ラウリーを気持ち良くさせる為に射精は耐えられるが、必要以上に出て来る魔力を抑えられない。
「なぁ、ラウのことなんだけど。あのキモイのを引き取ってくれて助かってはいるが、大丈夫なのか?」
「今んところは家もバレてないし、大丈夫は大丈夫だ。気持ち悪がってはいるけれど」
あの変態が、スノウがラウリーに抱かれていると勘違いしなければよかったのにと今でも思うが。
「後さぁ、教えてもらったんだけど、ラウに粘着しているネコがいるって」
「またぁ?」
言った途端にぶわっと魔力が漏れてしまった。
「またっていうか、以前ラウと共同依頼で一緒になった時に、庇われてから惚れたんだって」
軽く怪我をする程度で庇う必要がない状態だったが、ラウリーはきっちり間に入ったらしい。
「ラウは本当にどれだけ惚れさせたら気が済むんだ」
「な~。聞いた話では後姿が格好良過ぎて見惚れていたら、振り返ったラウの顔を見て撃ち抜かれたんだと」
「あ~目力凄いもんな、ラウ」
気持ち良過ぎて泣いている時も可愛いという意味で、破壊力が凄い。
「今日は二人で寂しく飲もうぜ~」
「はぁ、飲む。だけどスノウは飯も食え」
「……」
1
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる