とある冒険者セルジュ

相伽

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その後

70 新しい日常。

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 セルジュはラウリーと本当の意味で結ばれてからは、毎日が幸せ一杯で絶好調だった。
 外では今まで通り。会う頻度がセルジュがむらむらしていた時と変わりないくらいなのが少し不満なくらい。

 けれど仕事の関係で毎日会うのには無理があるし、それ以外も毎日二人だけでいるのは仕事に影響する。
 互いに命を預ける訳だから、やはり人間関係を円滑にする為の付き合いというのは重要になる。

 合鍵をもらえたので、会う約束がある日はセルジュ一人でも先にラウリーの部屋に行くようになった。
 致せる日ではなくても一緒に居たいから部屋に行く。今日は明日からラウリーが泊まりの狩りなので致さない。

 先に帰った方が夕飯を作ることになったので、先に帰ったセルジュが夕飯を作り始めた。
 途中で帰って来たラウリーと一緒に夕飯を作り終え、今日の話をしながら夕飯を食べる。

 ラウリーはその後風呂に行き、セルジュは部屋で魔法の練習をする。
 風呂上がりのラウリーはセルジュに必ず寄り添うように座る。

 そのまま少し話をしてから寝るのだが、布団に入るとどちらからともなくぴったりとくっつく。
 ただそれだけで、とても幸せな気持ちになれる。

「なんかセルジュと寝ると、熟睡出来るんだよなぁ。安心感……かな?」

「ならよかった」

 ラウリーは寝ている間も探索が出来るから、元々眠りが浅い人なのだとセルジュは思っていた。
 けれど恋人になってからは、朝起きるのがセルジュより遅い日の方が多くなった。

 探索は変わらずしているが、無関係な人の動きがあまり気にならなくなったらしい。
 ラウリーが早起きだったのは、周囲の人が動き出していたからだった。

 それは多分ラウリーが言うように、セルジュがいると安心するからなのだと思うとにやにやしてしまう。
 ぎゅっと抱きしめると、ラウリーもぎゅっとしてくれた。安心して眠って欲しい。

 今日もセルジュが先に目覚めた。ラウリーはぴったりと寄り添ったまますやすやと眠っている。
 愛おしさが爆発しそう。このままラウリーを堪能していたいが、セルジュは起きるようにしている。

 発散だけの関係の時は朝飯はラウリーに任せきりだった。セルジュの方が食べるのに、いつも用意してもらっていた申し訳なさが凄い。
 朝飯を作ろうと体を起こすと、ラウリーが無意識なのかしがみついて来た。愛おしさが爆発した気がする。

「んーっ?」

「まだ寝てろよ。朝飯出来たら起こすから」

 まだ眠くて目を開けられないラウリーのこめかみに口づけをして、離れるのがとても辛いが起きた。
 湯を沸かしつつ昨日の残りのスープを温め、パンを焼く。おかずも用意するがほとんどセルジュの分だ。

 準備が整うとラウリーを起こしにいくが、大抵セルジュの枕を抱っこして寝ている。可愛いが爆発しそうだ。

「ラウ、起きろ」

「うーん?」

 なかなか起きないラウリーが本来の姿かと思うと、可愛さが爆発した。朝から唇を食む。

「んんうっ、起きる」

 ぐっと押されてしまった。

 ちょっとショックを受けていると、これ以上はヤりたくなるから駄目と言われたので気分が持ち直した。
 ラウリーも起きて服を着替え──堂々とした生着替えにちょっとムラっとはしたが、一緒に食卓につく。

「朝飯、ありがと」

「どういたしまして」

「セルジュってさ、こんなに尽くすタイプだったの?」

 ラウリーの世話をするのが楽しくて意識していなかったが、そう言われて思わず目を逸らした。
 今までの自分はそういう深い関係の人がいなかったのもあるが、絶対に尽くすタイプではなかった。

「違うのか?」

「……」

 まだ寝起きのぽわぽわした感じで、首を傾げるラウリーが可愛い。
 追求からは逃れられなかった。何も言われなかったが、目が追及している気がしたのだ。

「今まで発散相手とは持ちつ持たれつだろって思っていたし、ヤるだけで他はドライな関係でございました」

「何その口調?」

 後ろめたい訳ではないが、何故だかこうなった。何と言えばいいかわからない感情だが、恥ずかしいようなそんな感じ。

「別に無理に話して欲しいなんて思ってないけど?」

「いや、ちゃんと話しておこうかと。ラウリーの世話は、焼きたくて焼きたくて仕方が無いんです」

「そうなの?」

 宣言しておいた方が、何となく色々とお世話させてくれる気がした。

「うん。本当は全ての飯を手ずから食べさせたいし、全ての移動を抱きかかえて行いたいです」

「いや、それはどうなの?」

「わかってはいるから我慢してる。でもさせてもらった時の幸福感が凄い」

「……」

 ラウリーはセルジュの言葉に耐えられなくて、目を逸らした。お世話されるのは腰が砕けた時だけだ。
 でもそれはそうした責任が、少なからずあるからだと思っていた。

 だから元からセルジュは甘やかしたい人なのだと思っていたが、どうもそうではないらしい。
 ただそれだけのことでセルジュの好きという気持ちを感じて、幸せな気持ちになる。

「待って? 発散相手じゃなくて今までの恋人とはどうだったの?」

「……恋人はラウリーが初めてです」

「……うっ、マジか」

 ラウリーの反応が可愛いので恥ずかしいような気持ちが消し飛んだセルジュは聞いた。

「ラウは?」

「俺も、初めて」

 セルジュはやっぱり今から押し倒したいなと思うくらい、嬉しい気持ちが溢れた。
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