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変化編
57 教える。
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モナカに真剣な顔で呼び止められ、モナカの部屋に来た。そこで料理を教えて欲しいと頼まれた。
スノウに確実に惚れていると思った。けれどライバル? に料理を習うのはいいのかと疑問が残る。
「気付いてるでしょ? 俺の気持ち」
「まぁ、ふわっとは」
モナカが予想外に率直だったのでラウリーは驚いたが、顔には出ていなかった。
「タチ二人でどうすんだよって話だけど、なかなか諦めがなぁ……」
「……思い切って抱かれるとか?」
モナカが目を逸らした。それにはまだ抵抗があるようだ。
「抱かれたこと、無いんだよねぇ」
「スノウなら初めての相手でも優しいんじゃないか」
「うーっ、そうなんだけど、そうじゃないんだよね。ラウはネコだからわからないかも知れないけど」
確かにネコだから、抱かれる側に回るタチの気持ちはわからない。
「……よく、わかったな?」
「スノウを見てるとね。あいつ直感とか凄いから、過剰なスキンシップをするのは皆ネコなんだよねぇ。本人は気が付いてないけどね」
「そんなバレかたって……」
他の人にもバレるんじゃ。
「普通は気付かないレベルだから。それにスノウも無意識に気を遣っているから、過剰なのはセルジュと四人での共同依頼の時だけだよ」
「いや、それだとセルジュに……」
バレてもいいって判断したってこと? 何で? どういうこと?
「えっ?」
「えっ?」
モナカに驚かれた意味がわからなくて、ラウリーも驚いた。
「えっ、ごめん。ラウリーはセルジュと関係があると思ってた」
「ああ」
発散相手の一人ではあるが、今は距離を置こうと思っているので敢えて言及はしなかった。
精神的に独り立ち出来れば、元の関係に戻れたらいいなとは思うが。今は甘え過ぎなので駄目だ。
長く休み過ぎたから狩りを頑張りたいと言って誘いを断わり、今も先約があって断わることが多い。
いい感じに離れられていると思う。
「……セルジュの片思いか。やべ。二人で飲みたくなってきた」
モナカが小声でブツブツ言うので、ラウリーは聞き取れなかった。
「スノウはお子様味が好みだから、全体的に甘めにして具材を細かく切れば大体問題ない」
「いや、それだけなら俺はとっくに気が付いてた。多分だけど何かラウリーと味が違うんだよ」
「なんだろ?」
「それがわからないから教えてくれって言ってるんだよぉ」
「なるほど?」
モナカは料理の手際もいいしほとんど教えることはないと思ったのだが、細かいところが違っていた。
「何か、微妙に違うねぇ? でも味に変わりはあるかなぁ」
「東と南の違い? でもスノウは西側出身だし、何だろう?」
モナカの方が下処理が丁寧で、モナカの方が美味しい料理になると思う。
「あっ! それか!」
「えっ、なになに?」
「モナカがスノウに美味しいものを食べさせた過ぎて、気合が入り過ぎなんだよ!」
「え゛っ」
モナカが真っ赤になってしまって、何だか申し訳ない気がした。直接的に言い過ぎてしまった。
「ほどほどに手抜きくらいが丁度いいんだよ、多分」
「ええ~」
実際にモナカとラウリーのものを食べ比べてみると、違いがあった。
「やっぱりモナカのは、ちょっと上品過ぎる気がする」
「えー俺、わかんないよ」
「違う。だからちょっと手を抜こう」
「でもなぁ……料理だけじゃないんだろう?」
食べていた手を止めて、モナカが暗い表情で言って来た。流石というか何というか、色々と気付かれている。
「あ~、多分だけど。スノウはモナカの前では格好良くいたいんだと思う」
「それって弱みは見せられないってことじゃないか」
ますますモナカが落ち込むので、またラウリーは言葉選びを間違えたのだと思った。
「いや、そっちじゃなくて」
「どっちだよ」
「上手く言えないんだけど、見せられないんじゃなくて見せたくないっていう方向」
「よくわからない」
モナカにそう言われるが、ラウリーも上手く説明できない。
「うーん、説明できない」
「それ絶対、普段無口なせいだよね」
「うっ……」
「南側とこっちは違うから、そんなに警戒しなくてもいいんだよ?」
「頭では理解しつつあるけど、なかなか変えられないっていうか」
モナカも東側では容姿で苦労したらしい。
「ネコがまぁ寄って来てね。決まったネコだけ抱いてたらその子が他のネコに虐められるし、タチからも嫌がらせをされるしで」
「へぇ。東もあんまりなんだな」
「オイデンが逆に特殊な気がする。でも西側は似た感じだって聞いた」
「南側でも寝取られたとか言われてた。ネコがどうやって寝取るんだよっていつも思ってた」
「タチはやらないの?」
「やらないね」
「ふーん? 相手探しに苦労してるなら、俺でもよければ抱くよ?」
「えっ、以前ならまだしも今は嫌だ」
モナカがにやりと笑った。あれだ。多分モナカと関係があるとわかれば、スノウが引くからだろう。
「自分で余計に拗らせてどうすんだよ。そんな事するくらいなら、潔く抱かれろよ」
「すみません……」
「それかもうはっきりと、好きだから抱きたいって言ったら?」
「えー!? 無理無理。恥ずかしくて死んじゃう。それに断わられたらどうすんの。気まずい」
「料理を習うくらいなんだから、もうベタ惚れだろ? 二人でどっちがタチをするか話し合え」
「ラウリーが無駄に潔い」
「無駄って何だよ、無駄って!」
何だかんだで以前よりもモナカと仲良くなった。どちらかの部屋でモナカの惚気? 話を聞くだけだが。
だが大変失礼ながら、スノウがモナカを気にしているので面白い。求婚しているのに、ラウリーよりもモナカを気にしている。
それがわかっているのか、モナカから頻繁に誘われるようになった。スノウが完全に弄ばれている。
直感的にラウリーがネコだと気が付いているなら、この急接近は気になるところなのだろう。
タチかネコかはおいて置いて、さっさと告白しろと思ってしまった。
多分抱かれると言い辛いだけで、どちらも押し倒されたら受け入れるんじゃないのかと思う。
スノウに確実に惚れていると思った。けれどライバル? に料理を習うのはいいのかと疑問が残る。
「気付いてるでしょ? 俺の気持ち」
「まぁ、ふわっとは」
モナカが予想外に率直だったのでラウリーは驚いたが、顔には出ていなかった。
「タチ二人でどうすんだよって話だけど、なかなか諦めがなぁ……」
「……思い切って抱かれるとか?」
モナカが目を逸らした。それにはまだ抵抗があるようだ。
「抱かれたこと、無いんだよねぇ」
「スノウなら初めての相手でも優しいんじゃないか」
「うーっ、そうなんだけど、そうじゃないんだよね。ラウはネコだからわからないかも知れないけど」
確かにネコだから、抱かれる側に回るタチの気持ちはわからない。
「……よく、わかったな?」
「スノウを見てるとね。あいつ直感とか凄いから、過剰なスキンシップをするのは皆ネコなんだよねぇ。本人は気が付いてないけどね」
「そんなバレかたって……」
他の人にもバレるんじゃ。
「普通は気付かないレベルだから。それにスノウも無意識に気を遣っているから、過剰なのはセルジュと四人での共同依頼の時だけだよ」
「いや、それだとセルジュに……」
バレてもいいって判断したってこと? 何で? どういうこと?
「えっ?」
「えっ?」
モナカに驚かれた意味がわからなくて、ラウリーも驚いた。
「えっ、ごめん。ラウリーはセルジュと関係があると思ってた」
「ああ」
発散相手の一人ではあるが、今は距離を置こうと思っているので敢えて言及はしなかった。
精神的に独り立ち出来れば、元の関係に戻れたらいいなとは思うが。今は甘え過ぎなので駄目だ。
長く休み過ぎたから狩りを頑張りたいと言って誘いを断わり、今も先約があって断わることが多い。
いい感じに離れられていると思う。
「……セルジュの片思いか。やべ。二人で飲みたくなってきた」
モナカが小声でブツブツ言うので、ラウリーは聞き取れなかった。
「スノウはお子様味が好みだから、全体的に甘めにして具材を細かく切れば大体問題ない」
「いや、それだけなら俺はとっくに気が付いてた。多分だけど何かラウリーと味が違うんだよ」
「なんだろ?」
「それがわからないから教えてくれって言ってるんだよぉ」
「なるほど?」
モナカは料理の手際もいいしほとんど教えることはないと思ったのだが、細かいところが違っていた。
「何か、微妙に違うねぇ? でも味に変わりはあるかなぁ」
「東と南の違い? でもスノウは西側出身だし、何だろう?」
モナカの方が下処理が丁寧で、モナカの方が美味しい料理になると思う。
「あっ! それか!」
「えっ、なになに?」
「モナカがスノウに美味しいものを食べさせた過ぎて、気合が入り過ぎなんだよ!」
「え゛っ」
モナカが真っ赤になってしまって、何だか申し訳ない気がした。直接的に言い過ぎてしまった。
「ほどほどに手抜きくらいが丁度いいんだよ、多分」
「ええ~」
実際にモナカとラウリーのものを食べ比べてみると、違いがあった。
「やっぱりモナカのは、ちょっと上品過ぎる気がする」
「えー俺、わかんないよ」
「違う。だからちょっと手を抜こう」
「でもなぁ……料理だけじゃないんだろう?」
食べていた手を止めて、モナカが暗い表情で言って来た。流石というか何というか、色々と気付かれている。
「あ~、多分だけど。スノウはモナカの前では格好良くいたいんだと思う」
「それって弱みは見せられないってことじゃないか」
ますますモナカが落ち込むので、またラウリーは言葉選びを間違えたのだと思った。
「いや、そっちじゃなくて」
「どっちだよ」
「上手く言えないんだけど、見せられないんじゃなくて見せたくないっていう方向」
「よくわからない」
モナカにそう言われるが、ラウリーも上手く説明できない。
「うーん、説明できない」
「それ絶対、普段無口なせいだよね」
「うっ……」
「南側とこっちは違うから、そんなに警戒しなくてもいいんだよ?」
「頭では理解しつつあるけど、なかなか変えられないっていうか」
モナカも東側では容姿で苦労したらしい。
「ネコがまぁ寄って来てね。決まったネコだけ抱いてたらその子が他のネコに虐められるし、タチからも嫌がらせをされるしで」
「へぇ。東もあんまりなんだな」
「オイデンが逆に特殊な気がする。でも西側は似た感じだって聞いた」
「南側でも寝取られたとか言われてた。ネコがどうやって寝取るんだよっていつも思ってた」
「タチはやらないの?」
「やらないね」
「ふーん? 相手探しに苦労してるなら、俺でもよければ抱くよ?」
「えっ、以前ならまだしも今は嫌だ」
モナカがにやりと笑った。あれだ。多分モナカと関係があるとわかれば、スノウが引くからだろう。
「自分で余計に拗らせてどうすんだよ。そんな事するくらいなら、潔く抱かれろよ」
「すみません……」
「それかもうはっきりと、好きだから抱きたいって言ったら?」
「えー!? 無理無理。恥ずかしくて死んじゃう。それに断わられたらどうすんの。気まずい」
「料理を習うくらいなんだから、もうベタ惚れだろ? 二人でどっちがタチをするか話し合え」
「ラウリーが無駄に潔い」
「無駄って何だよ、無駄って!」
何だかんだで以前よりもモナカと仲良くなった。どちらかの部屋でモナカの惚気? 話を聞くだけだが。
だが大変失礼ながら、スノウがモナカを気にしているので面白い。求婚しているのに、ラウリーよりもモナカを気にしている。
それがわかっているのか、モナカから頻繁に誘われるようになった。スノウが完全に弄ばれている。
直感的にラウリーがネコだと気が付いているなら、この急接近は気になるところなのだろう。
タチかネコかはおいて置いて、さっさと告白しろと思ってしまった。
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