56 / 83
変化編
56 懐かれる。
しおりを挟む
「ありがとなぁ。俺が弱っているラウリーを慰めるつもりだったのに」
スノウにも気が付かれていたのか。
「お礼だからいいんだよ」
スノウが落ち着いた後に食事を温めなおして完食した。お礼を言われてはいるが、ラウリーは話を聞いただけ。
いい言葉も何も浮かんで来なかった。ただこんな時、セルジュならどんな言葉をかけるのかと想像しただけ。
距離を置こうと思っているのに、またセルジュのことを考えている。独り立ちがまだ遠そうだ。
お礼を言われたのでスノウの家からは出たものの、見送る時の顔が気になって仕方がなかった。
話を聞くにしてもまだ足りない気がする。セルジュは不安定な間ずっと一緒にいてくれたけれど、それでも落ち着くのには時間がかかった。
結局酒を買ってから戻ったラウリーは、朝までスノウと飲んだ。スノウは沢山話して泣いた。
スノウは泥酔したが、酒に酔ったことのないラウリーは普通にスノウをベッドに放り込んで帰った。
流石に添い寝までする気持ちにはなれなかった。出来たら良かったのかもしれないが、何か無理。
友人としての添い寝くらい、すればいいとは思ったのだが。
その後からスノウが尋常ではないくらいに懐いた。年上相手に言い方はおかしいかも知れないが、懐いた。
それしか言いようがないくらい、周囲が驚くくらいに懐かれた。
「ラウ~、結婚してくれ。そして俺に毎日飯を作ってくれ~」
顔を見れば抱き着いて来て、何故か毎回求婚されるようになった。
結婚してくれとラウリーに言いつつ他で発散は続けているので、冗談だと放置している。
今も腰にスノウをくっつけたまま、次の共同依頼の打ち合わせ中。スノウはこの依頼のメンバーではないのに、それでも離れない。
それで気持ちが落ち着くならと、腰にくっつけたまま話を終えた。
「ところで、ラウリーはスノウに何したの?」
やはりモナカから見ても、不思議だったらしい。
「……特に、何も?」
「ヤダ、ドSのタチが怖い」
クルトにまで言われたが、自分でもよくわからない。
「抱いた?」
「抱いてない」
「……抱かれた?」
「抱かれてない」
モナカの追及が別の意味で怖い。
「ヤダ、ドSのタチが怖い」
何故だ。俺のせいなの? お礼に飯を作ったのは知られているし、泣いたのを慰めるのは普通のことだろ?
そう思うのに下半身クズ男のヤリちんをドSが陥落させたと、ギルドでかなり話題になった。
しかもラウリーが抱いたのではないかと噂になっていた。ちゃんとどちらも否定したのに、何故だ。
モナカに聞いたら、聞かれて否定した人たち以外から出た噂らしい。
スノウも聞かれたら否定はしているが、世話になった人の話をしないのでイマイチ信用されていないとか。
合わせてラウリーの料理が美味いと話題にもなっていたが、それについてはラウリーは知らない。
その噂の影響で、ネコたちの間で料理ブームが起こったことも。
スノウはキャラ的に雑に扱われがちだが、ちゃんと下半身も優しいタチ。
毎晩抱くのは違うネコだが、声を掛けるのは別のタチを誘って断られたネコが多い。
それに来るもの拒まずを徹底しているので、容姿では絶対に断らない。今日が駄目でも明日になるだけ。
ちゃんとその約束は果たされる。だから密かにスノウに好意を寄せているネコが多くいた。
タチは何だかんだ言いながらも、発散相手を容姿で選ぶことが多い。逆にネコは性格や収入で選ぶことが多い。
その辺に差があるから、お互いに妥協したとしてもどうしても人気のないタチとネコが出る。
スノウはその妥協した感を相手に一切感じさせない。そもそもネコは皆可愛いと言い切っている。
実力や容姿ではなく、性格で欲しいと願うネコは普通に多い。そうなるとスノウは完璧な優良物件になる。
スノウの特別になりたいなら、料理が必須だと思ったネコは多かった。
スノウがネコに転向する前に引き留めなければと、ネコたちの間に焦りが生まれた。
ラウリー狙いのネコにしても料理でまで負けてはいられないし、セルジュがラウリーの料理を褒めていた話も広まったこともある。
「ラウの飯が毎日食べたい」
スノウが会う度煩いので、時々ラウリーは自分の夕飯をスノウの部屋で一緒に作って食べるようになった。
スノウは自分がお子様向けが好みだと気が付いていなかった。
料理は恩人にお返しで作る為に他の人に教えてもらい、恩人からは教わっていなかった。
だからスノウが自分でもお子様用の料理が作れるようにと、一緒に作るたびに教えている。
それでも作ってもらえる方が嬉しいようだが、それはラウリーも同じ。
ついスノウからは、西側の郷土料理を教えてもらってしまった。
スノウはいい奴だしラウリーとしてもスノウを理由にセルジュとの距離を置けて、丁度良かった。
けれど何かとセルジュを思い出すのは、やっぱり最近一緒に居すぎた影響だろう。
独り立ちしなければ。でも大丈夫。きっと時間と共に段々と薄れていく。今までがそうであったように。
何も表には出さず、今までと変わらない様子で過ごしていた。けれど頭の中では色々と考えていた。
だから同じように表向きは普通で、内心冷や汗だらだらになりながらラウリーを見ているセルジュには気が付かなかった。
周囲の人がセルジュ、何かやらかしたんだなと思っていたことにも気が付かなかった。
スノウにも気が付かれていたのか。
「お礼だからいいんだよ」
スノウが落ち着いた後に食事を温めなおして完食した。お礼を言われてはいるが、ラウリーは話を聞いただけ。
いい言葉も何も浮かんで来なかった。ただこんな時、セルジュならどんな言葉をかけるのかと想像しただけ。
距離を置こうと思っているのに、またセルジュのことを考えている。独り立ちがまだ遠そうだ。
お礼を言われたのでスノウの家からは出たものの、見送る時の顔が気になって仕方がなかった。
話を聞くにしてもまだ足りない気がする。セルジュは不安定な間ずっと一緒にいてくれたけれど、それでも落ち着くのには時間がかかった。
結局酒を買ってから戻ったラウリーは、朝までスノウと飲んだ。スノウは沢山話して泣いた。
スノウは泥酔したが、酒に酔ったことのないラウリーは普通にスノウをベッドに放り込んで帰った。
流石に添い寝までする気持ちにはなれなかった。出来たら良かったのかもしれないが、何か無理。
友人としての添い寝くらい、すればいいとは思ったのだが。
その後からスノウが尋常ではないくらいに懐いた。年上相手に言い方はおかしいかも知れないが、懐いた。
それしか言いようがないくらい、周囲が驚くくらいに懐かれた。
「ラウ~、結婚してくれ。そして俺に毎日飯を作ってくれ~」
顔を見れば抱き着いて来て、何故か毎回求婚されるようになった。
結婚してくれとラウリーに言いつつ他で発散は続けているので、冗談だと放置している。
今も腰にスノウをくっつけたまま、次の共同依頼の打ち合わせ中。スノウはこの依頼のメンバーではないのに、それでも離れない。
それで気持ちが落ち着くならと、腰にくっつけたまま話を終えた。
「ところで、ラウリーはスノウに何したの?」
やはりモナカから見ても、不思議だったらしい。
「……特に、何も?」
「ヤダ、ドSのタチが怖い」
クルトにまで言われたが、自分でもよくわからない。
「抱いた?」
「抱いてない」
「……抱かれた?」
「抱かれてない」
モナカの追及が別の意味で怖い。
「ヤダ、ドSのタチが怖い」
何故だ。俺のせいなの? お礼に飯を作ったのは知られているし、泣いたのを慰めるのは普通のことだろ?
そう思うのに下半身クズ男のヤリちんをドSが陥落させたと、ギルドでかなり話題になった。
しかもラウリーが抱いたのではないかと噂になっていた。ちゃんとどちらも否定したのに、何故だ。
モナカに聞いたら、聞かれて否定した人たち以外から出た噂らしい。
スノウも聞かれたら否定はしているが、世話になった人の話をしないのでイマイチ信用されていないとか。
合わせてラウリーの料理が美味いと話題にもなっていたが、それについてはラウリーは知らない。
その噂の影響で、ネコたちの間で料理ブームが起こったことも。
スノウはキャラ的に雑に扱われがちだが、ちゃんと下半身も優しいタチ。
毎晩抱くのは違うネコだが、声を掛けるのは別のタチを誘って断られたネコが多い。
それに来るもの拒まずを徹底しているので、容姿では絶対に断らない。今日が駄目でも明日になるだけ。
ちゃんとその約束は果たされる。だから密かにスノウに好意を寄せているネコが多くいた。
タチは何だかんだ言いながらも、発散相手を容姿で選ぶことが多い。逆にネコは性格や収入で選ぶことが多い。
その辺に差があるから、お互いに妥協したとしてもどうしても人気のないタチとネコが出る。
スノウはその妥協した感を相手に一切感じさせない。そもそもネコは皆可愛いと言い切っている。
実力や容姿ではなく、性格で欲しいと願うネコは普通に多い。そうなるとスノウは完璧な優良物件になる。
スノウの特別になりたいなら、料理が必須だと思ったネコは多かった。
スノウがネコに転向する前に引き留めなければと、ネコたちの間に焦りが生まれた。
ラウリー狙いのネコにしても料理でまで負けてはいられないし、セルジュがラウリーの料理を褒めていた話も広まったこともある。
「ラウの飯が毎日食べたい」
スノウが会う度煩いので、時々ラウリーは自分の夕飯をスノウの部屋で一緒に作って食べるようになった。
スノウは自分がお子様向けが好みだと気が付いていなかった。
料理は恩人にお返しで作る為に他の人に教えてもらい、恩人からは教わっていなかった。
だからスノウが自分でもお子様用の料理が作れるようにと、一緒に作るたびに教えている。
それでも作ってもらえる方が嬉しいようだが、それはラウリーも同じ。
ついスノウからは、西側の郷土料理を教えてもらってしまった。
スノウはいい奴だしラウリーとしてもスノウを理由にセルジュとの距離を置けて、丁度良かった。
けれど何かとセルジュを思い出すのは、やっぱり最近一緒に居すぎた影響だろう。
独り立ちしなければ。でも大丈夫。きっと時間と共に段々と薄れていく。今までがそうであったように。
何も表には出さず、今までと変わらない様子で過ごしていた。けれど頭の中では色々と考えていた。
だから同じように表向きは普通で、内心冷や汗だらだらになりながらラウリーを見ているセルジュには気が付かなかった。
周囲の人がセルジュ、何かやらかしたんだなと思っていたことにも気が付かなかった。
2
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
父の男
上野たすく
BL
*エブリスタ様にて『重なる』というタイトルで投稿させていただいているお話です。ところどころ、書き直しています。
~主な登場人物~渋谷蛍(しぶや けい)高校二年生・桜井昭弘(さくらい あきひろ)警察官・三十五歳
【あらすじ】実父だと信じていた男、桜井が父の恋人だと知ってから、蛍はずっと、捨てられる恐怖と戦っていた。ある日、桜井と見知らぬ男の情事を目にし、苛立ちから、自分が桜井を好きだと自覚するのだが、桜井は蛍から離れていく。
【R18】泊まった温泉旅館はエッチなハプニングが起きる素敵なところでした
桜 ちひろ
恋愛
性欲オバケ主人公「ハル」
性欲以外は普通のOLだが、それのせいで結婚について悩むアラサーだ。
お酒を飲んだ勢いで同期の茜に勧められたある温泉旅館へ行くことにした。そこは紹介された人のみ訪れることのできる特別な温泉旅館だった。
ハルのある行動から旅館の秘密を知り、素敵な時間を過ごすことになる。
ほぼセックスしかしていません。
男性とのプレイがメインですが、レズプレイもあるので苦手な方はご遠慮ください。
絶倫、巨根、連続絶頂、潮吹き、複数プレイ、アナル、性感マッサージ、覗き、露出あり。
EDEN ―孕ませ―
豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。
平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。
【ご注意】
※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。
※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。
※前半はほとんどがエロシーンです。
【R18】エロ短編集❤︎
猫(*´∇`*)
BL
【随時更新中】
短編のBLエロ小説を集めた物です。
1、2話あたりで完結するので、どこからでも入れます。
登場人物など考えていないので、
ストーリー <<<< エロ
重視になっております。
エロいのが読みたい!という時に読んで貰えると幸いです。
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる