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変化編
49 過去が来た。
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セルジュから頻繁に誘われ、セルジュが気にかけて甘やかしてくれる。
どうにも居心地が良くて抜け出せないでいた。今日もやっぱりセルジュに捕獲されて、一緒に飯屋に入った。
「ラウリー、ずっと探していたんだ。俺と帰ろう!」
忘れたかった過去が来た。というかもうほぼ忘れていた。ギリギリ誰かがわかったレベルだ。
大声で騒ぐものだから、注目を浴びている。店内が混んでいるからと、外の席にするんじゃなかった。
「あんな男をけしかけたことを反省しているんだ。俺が大事にする。だから結婚しよう!」
何を言われているのか、理解が出来なかった。
「何か言ってるけど、知り合いか?」
セルジュは男の顔と服装を見て、すぐにヤバい奴だとわかった。完全に目がイっているし、服はボロボロ。
普通じゃないし、ましてや人を見るラウリーがこんな男と親しくしていたとは思えなかった。
しかもこの男、ラウリーに結婚しようって言いやがった。
「いや。顔を知っている程度だ」
セルジュに聞かれてラウリーは答えた。本当にその程度の関係だけれど、出奔を早めた存在ではある。
彼は確かイルマ。じいちゃんが亡くなった後に親に連れて行かれた家の、二軒隣に住むぼんぼんだった。
上から数えた方が早いような家柄だったと思う。身分が下の者として、すれ違えば隅に避けるだけの関係。
故郷は家族に限らず排他的で余所者をいつも馬鹿にしていたし、権力者に選ばれるのを最上としていた。
自分より上の家柄には媚び、下の家柄には横暴に振る舞う家族や周囲がラウリーは大嫌いだった。
イルマは家族と同じ人種のようだったので、近寄らないようにしていた。
ラウリーは親と住むようになってから、自分の将来を知った。顔がいいから誰かの愛人になるらしかった。
両親もそのつもりで権力者のおこぼれに預かろうと考えていたし、兄もそうだった。
『子どもなんだから、親の役に立て』
『育ててもらった恩を返せることを誇りに思え』
『弟なんだから、兄の役に立つのは当然のことだ』
家でそう言われていたが、彼らと家族だった記憶も彼らに育てられた記憶も事実もない。
誇りに思う訳がない。愛人でもいいところに売られるのは羨ましいらしく、周囲からも色々と言われていた。
『顔がいいって得だよね』
『顔がいいだけだろ』
『誰の愛人になってくわえ込むなのかな』
『敢えて無表情で無口にして、それで気を惹いているつもり?』
『ジジイにヤられる前にヤらせろよ』
ラウリーが誰かに差し出されるのは確実。そしてそれは故郷の慣習により十五歳になった時だった。
じいちゃんが十五になる前にと言っていた意味を理解したが、出奔するなら冒険者資格が得られる十五歳直前がいいと考えていた。
じいちゃんが貯めていてくれた金はあるが、一部以外は見付かって取られた。だから額はそれほど多くない。
田舎から出て来たガキでは、普通の仕事はなかなか見付からない。後およそ一年半。それがとても長かった。
じいちゃんが亡くなってからは孤独で、親や兄にいつ気まぐれに売られるかわからない状態が続いていた。
売られる前にヤらせろと言われることも多かった。
外出も決められた時だけ。親が用意した同類に見張られ、生活は商品価値を維持されているだけだった。
親がラウリーをジジイに売る前に、毎晩体を売らせて稼ごうかと相談しているのを聞いた。
心が疲れていたのだろう。せめて初めての相手は自分で選びたいと考え、相手を探していた。
今思えば初めての相手くらい、ちゃんと選べばよかったとは思う。最初の相手はほぼ条件で選んだ。
旅の途中の冒険者でそこそこ好みのタイプで、ラウリーを対象として見ている男を自分から誘った。
目的は果たせたが、こんなものかと言う感想しかなかった。
その後に寝込みを襲われ、親が誰かに売ったのだろうと思った。
いいように使われたくなくて必死に抵抗していると、突然現れたイルマが背後からその男を刺し殺した。
その時にイルマは錯乱したかのように、以前の行為を覗き見ていたらしいことなどを叫んでいた。
意味がわからなかったが、イルマが騒いだことで大騒ぎになってラウリーは牢に入れられた。
イルマとは言葉を交わしたこともなかったが、助けられたのかと思った。でも違うとすぐにわかった。
牢番に聞かされた話ではイルマがいないことになっていて、ラウリーが殺人犯になっていた。
夜とはいえ、多くの人が集まっていた。皆血塗れの剣を持っているイルマを見ていたのにだ。
死んだ男が旅人だったので、自身の商品価値を守ったラウリーは大きな罪にはならない。釈放は十五歳の誕生日になると説明された。
つまり十五歳になると売られる。拘束がキツくなる可能性も高く、書類上だけですぐに売られる可能性もある。
だからラウリーは必要最低限の物だけは何とか持ち出して、出奔した。故郷の性質上、出奔して遠くまで来たラウリーを構うとは思っていなかった。
どうにも居心地が良くて抜け出せないでいた。今日もやっぱりセルジュに捕獲されて、一緒に飯屋に入った。
「ラウリー、ずっと探していたんだ。俺と帰ろう!」
忘れたかった過去が来た。というかもうほぼ忘れていた。ギリギリ誰かがわかったレベルだ。
大声で騒ぐものだから、注目を浴びている。店内が混んでいるからと、外の席にするんじゃなかった。
「あんな男をけしかけたことを反省しているんだ。俺が大事にする。だから結婚しよう!」
何を言われているのか、理解が出来なかった。
「何か言ってるけど、知り合いか?」
セルジュは男の顔と服装を見て、すぐにヤバい奴だとわかった。完全に目がイっているし、服はボロボロ。
普通じゃないし、ましてや人を見るラウリーがこんな男と親しくしていたとは思えなかった。
しかもこの男、ラウリーに結婚しようって言いやがった。
「いや。顔を知っている程度だ」
セルジュに聞かれてラウリーは答えた。本当にその程度の関係だけれど、出奔を早めた存在ではある。
彼は確かイルマ。じいちゃんが亡くなった後に親に連れて行かれた家の、二軒隣に住むぼんぼんだった。
上から数えた方が早いような家柄だったと思う。身分が下の者として、すれ違えば隅に避けるだけの関係。
故郷は家族に限らず排他的で余所者をいつも馬鹿にしていたし、権力者に選ばれるのを最上としていた。
自分より上の家柄には媚び、下の家柄には横暴に振る舞う家族や周囲がラウリーは大嫌いだった。
イルマは家族と同じ人種のようだったので、近寄らないようにしていた。
ラウリーは親と住むようになってから、自分の将来を知った。顔がいいから誰かの愛人になるらしかった。
両親もそのつもりで権力者のおこぼれに預かろうと考えていたし、兄もそうだった。
『子どもなんだから、親の役に立て』
『育ててもらった恩を返せることを誇りに思え』
『弟なんだから、兄の役に立つのは当然のことだ』
家でそう言われていたが、彼らと家族だった記憶も彼らに育てられた記憶も事実もない。
誇りに思う訳がない。愛人でもいいところに売られるのは羨ましいらしく、周囲からも色々と言われていた。
『顔がいいって得だよね』
『顔がいいだけだろ』
『誰の愛人になってくわえ込むなのかな』
『敢えて無表情で無口にして、それで気を惹いているつもり?』
『ジジイにヤられる前にヤらせろよ』
ラウリーが誰かに差し出されるのは確実。そしてそれは故郷の慣習により十五歳になった時だった。
じいちゃんが十五になる前にと言っていた意味を理解したが、出奔するなら冒険者資格が得られる十五歳直前がいいと考えていた。
じいちゃんが貯めていてくれた金はあるが、一部以外は見付かって取られた。だから額はそれほど多くない。
田舎から出て来たガキでは、普通の仕事はなかなか見付からない。後およそ一年半。それがとても長かった。
じいちゃんが亡くなってからは孤独で、親や兄にいつ気まぐれに売られるかわからない状態が続いていた。
売られる前にヤらせろと言われることも多かった。
外出も決められた時だけ。親が用意した同類に見張られ、生活は商品価値を維持されているだけだった。
親がラウリーをジジイに売る前に、毎晩体を売らせて稼ごうかと相談しているのを聞いた。
心が疲れていたのだろう。せめて初めての相手は自分で選びたいと考え、相手を探していた。
今思えば初めての相手くらい、ちゃんと選べばよかったとは思う。最初の相手はほぼ条件で選んだ。
旅の途中の冒険者でそこそこ好みのタイプで、ラウリーを対象として見ている男を自分から誘った。
目的は果たせたが、こんなものかと言う感想しかなかった。
その後に寝込みを襲われ、親が誰かに売ったのだろうと思った。
いいように使われたくなくて必死に抵抗していると、突然現れたイルマが背後からその男を刺し殺した。
その時にイルマは錯乱したかのように、以前の行為を覗き見ていたらしいことなどを叫んでいた。
意味がわからなかったが、イルマが騒いだことで大騒ぎになってラウリーは牢に入れられた。
イルマとは言葉を交わしたこともなかったが、助けられたのかと思った。でも違うとすぐにわかった。
牢番に聞かされた話ではイルマがいないことになっていて、ラウリーが殺人犯になっていた。
夜とはいえ、多くの人が集まっていた。皆血塗れの剣を持っているイルマを見ていたのにだ。
死んだ男が旅人だったので、自身の商品価値を守ったラウリーは大きな罪にはならない。釈放は十五歳の誕生日になると説明された。
つまり十五歳になると売られる。拘束がキツくなる可能性も高く、書類上だけですぐに売られる可能性もある。
だからラウリーは必要最低限の物だけは何とか持ち出して、出奔した。故郷の性質上、出奔して遠くまで来たラウリーを構うとは思っていなかった。
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