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変化編
47 爛れた日常。
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「何か、凄いサービスされて」
「美形パワー凄いな」
「そんなんじゃない」
運ぶのを手伝うと言ってセルジュが付いて来た。何かある訳じゃないけれど両手が塞がるのは苦手なのと、セルジュの分もあるしと頼んだのだが。
料理の手伝いをすると帰らずに居座り続け、その後押し倒されて結局昼飯後から夕飯まで致した。
「やっぱり爛れている気がする……」
「どした?」
「今はいいや」
セルジュにぎゅっと抱き着くと、抱き締め返してくれた。セルジュの体はいつでも温かい。
それにラウリーが本当に嫌がることは絶対にしない。
頭では理解して、自分の決断にも納得はしている。けれど中央都市の件はそれなりにショックだったらしい。
自分の実力ではなく顔が原因。大嫌いな故郷を思い出した。
でもさっきも今も故郷と共にマオじいちゃんたちを思い出せるのは、身近にある体温のお陰かもしれない。
それなりに発散相手はいたが、こんなに頻繁に長く居座らせた相手はセルジュが初めてだった。
南部でも西部の南側でも、そんな油断をすれば搾取されてしまう。そこまで信用できる相手もいなかった。
こうやって特に理由もなく人から抱きしめてもらえたのは、マオじいちゃんが最後だったと思う。
「ラウ? 今から寝たら夕飯遅くなるぞ?」
「もうちょっと……」
こうやって普通に体の心配をしてもらうのも、いつぶりだろう。優しくされるからか人の体温が恋しい。
セルジュはしばらく好きにさせてくれた。頭と背中を撫でられるのも気持ちが良かった。
夕飯後には帰るだろうと思っていたセルジュが帰らなかったので、追い出すこともなく一緒にいた。
狭い部屋なのでリラックスして座れるのはベッドしかない。セルジュはヘッドボードにもたれながら、探索魔法の練習をもくもくとしていた。
その横で転がっていたラウリーは、触れていれば何となくわかるのでアドバイスを時々していた。
セルジュの傍は何だか眠くなる。ラウリーは本格的に寝ようと布団にくるまった。
「寝るのか?」
「うん。眠くなってきた」
セルジュが服を脱いでラウリーの横に来た。セルジュはパジャマを持っていない。
暑がりなセルジュは必要性を感じないらしい。穴のないズボンくらいは今度買っておこうかなと思った。
セルジュが全裸だと、無駄にドキドキしてしまう。
「抱き着いてもいい?」
「? いいよ」
セルジュは寝る体勢で抱き込んできて、ラウリーは当たり前のようにすっぽりと包まれた。落ち着く。
でもセルジュが優しいからといって甘えてはいけない。セルジュとはただの発散関係でしかない。
それなりに友人だとは思うが、恋人でも出来ればこういうことは出来なくなる。だから依存は出来ない。
でも今はいいかと思って、セルジュに甘えることにした。そもそも今日はセルジュはずっと甘かった。
多分弱っていることを察しているのだと思う。ラウリーにとってももう故郷での出来事は、随分と昔の話になる。
マオじいちゃんが病気になってからは、甘えていい人がいなくなった。それが寂しかったのは間違いない。
でも成人すれば独り立ちするのは当たり前。それが少し早かっただけなのに、未だに誰かに甘えたくなる。
それはラウリーの弱さだ。特に弱っていると人恋しくなる。今までは依存しないように頑張れていたのに、最近はまた弱くなった気がする。
甘えさせてもらっているが、いい加減独り立ちしないといけない。
それでもしばらくの間だけでいいから、セルジュの優しさに付け込んで甘えさせて欲しかった。
いつまでもずるずるするつもりはない。いい加減立ち直らないと。
目標が思わぬ形で途切れたダメージが思いのほか大きかった。多分、これで最後。だからもう少しだけ。
セルジュはラウリーが弱っていることに気が付いていて今日も居座ることにしたのだが、重症な気がしていた。
うっかり押し倒したがくっついていると落ち着くようなので、今は普通に頭や背中を撫でている。
明日からの事も考えて、ちゃんと加減が出来ていつ誘っても大丈夫な相手だとのアピールもしたつもりだ。
前からトぶと甘えて来たが、今日は関係なく甘えられていた気がする。
望むところだったので、散々甘やかしたつもりだ。今日たまたまだが会えて良かったと思う。
たまたまというか買い物に行くだろうと思って付近をウロウロしていたのだが、そうして正解だった。
気持ち悪い行動ではなかったはず。心配していただけだし。そう、心配だ。
ラウリーが甘える相手が自分で良かったと心から思う。それと自分が人をこれだけ甘やかせると初めて知った。
ラウリーの体から力が抜け、呼吸が深くなった。熟睡するとラウリーは多少の事では起きない。
だからそっと口づけをする。快感を高める為ではなく、愛しい人にする口づけ。起きている時にはまだ反応が怖くて出来ない。
「心配だな……。しばらくは一人にしないようにしないと」
セルジュはラウリーが他人と一緒に寝る時、ここまで気を許して熟睡しないことを知らなかった。
「美形パワー凄いな」
「そんなんじゃない」
運ぶのを手伝うと言ってセルジュが付いて来た。何かある訳じゃないけれど両手が塞がるのは苦手なのと、セルジュの分もあるしと頼んだのだが。
料理の手伝いをすると帰らずに居座り続け、その後押し倒されて結局昼飯後から夕飯まで致した。
「やっぱり爛れている気がする……」
「どした?」
「今はいいや」
セルジュにぎゅっと抱き着くと、抱き締め返してくれた。セルジュの体はいつでも温かい。
それにラウリーが本当に嫌がることは絶対にしない。
頭では理解して、自分の決断にも納得はしている。けれど中央都市の件はそれなりにショックだったらしい。
自分の実力ではなく顔が原因。大嫌いな故郷を思い出した。
でもさっきも今も故郷と共にマオじいちゃんたちを思い出せるのは、身近にある体温のお陰かもしれない。
それなりに発散相手はいたが、こんなに頻繁に長く居座らせた相手はセルジュが初めてだった。
南部でも西部の南側でも、そんな油断をすれば搾取されてしまう。そこまで信用できる相手もいなかった。
こうやって特に理由もなく人から抱きしめてもらえたのは、マオじいちゃんが最後だったと思う。
「ラウ? 今から寝たら夕飯遅くなるぞ?」
「もうちょっと……」
こうやって普通に体の心配をしてもらうのも、いつぶりだろう。優しくされるからか人の体温が恋しい。
セルジュはしばらく好きにさせてくれた。頭と背中を撫でられるのも気持ちが良かった。
夕飯後には帰るだろうと思っていたセルジュが帰らなかったので、追い出すこともなく一緒にいた。
狭い部屋なのでリラックスして座れるのはベッドしかない。セルジュはヘッドボードにもたれながら、探索魔法の練習をもくもくとしていた。
その横で転がっていたラウリーは、触れていれば何となくわかるのでアドバイスを時々していた。
セルジュの傍は何だか眠くなる。ラウリーは本格的に寝ようと布団にくるまった。
「寝るのか?」
「うん。眠くなってきた」
セルジュが服を脱いでラウリーの横に来た。セルジュはパジャマを持っていない。
暑がりなセルジュは必要性を感じないらしい。穴のないズボンくらいは今度買っておこうかなと思った。
セルジュが全裸だと、無駄にドキドキしてしまう。
「抱き着いてもいい?」
「? いいよ」
セルジュは寝る体勢で抱き込んできて、ラウリーは当たり前のようにすっぽりと包まれた。落ち着く。
でもセルジュが優しいからといって甘えてはいけない。セルジュとはただの発散関係でしかない。
それなりに友人だとは思うが、恋人でも出来ればこういうことは出来なくなる。だから依存は出来ない。
でも今はいいかと思って、セルジュに甘えることにした。そもそも今日はセルジュはずっと甘かった。
多分弱っていることを察しているのだと思う。ラウリーにとってももう故郷での出来事は、随分と昔の話になる。
マオじいちゃんが病気になってからは、甘えていい人がいなくなった。それが寂しかったのは間違いない。
でも成人すれば独り立ちするのは当たり前。それが少し早かっただけなのに、未だに誰かに甘えたくなる。
それはラウリーの弱さだ。特に弱っていると人恋しくなる。今までは依存しないように頑張れていたのに、最近はまた弱くなった気がする。
甘えさせてもらっているが、いい加減独り立ちしないといけない。
それでもしばらくの間だけでいいから、セルジュの優しさに付け込んで甘えさせて欲しかった。
いつまでもずるずるするつもりはない。いい加減立ち直らないと。
目標が思わぬ形で途切れたダメージが思いのほか大きかった。多分、これで最後。だからもう少しだけ。
セルジュはラウリーが弱っていることに気が付いていて今日も居座ることにしたのだが、重症な気がしていた。
うっかり押し倒したがくっついていると落ち着くようなので、今は普通に頭や背中を撫でている。
明日からの事も考えて、ちゃんと加減が出来ていつ誘っても大丈夫な相手だとのアピールもしたつもりだ。
前からトぶと甘えて来たが、今日は関係なく甘えられていた気がする。
望むところだったので、散々甘やかしたつもりだ。今日たまたまだが会えて良かったと思う。
たまたまというか買い物に行くだろうと思って付近をウロウロしていたのだが、そうして正解だった。
気持ち悪い行動ではなかったはず。心配していただけだし。そう、心配だ。
ラウリーが甘える相手が自分で良かったと心から思う。それと自分が人をこれだけ甘やかせると初めて知った。
ラウリーの体から力が抜け、呼吸が深くなった。熟睡するとラウリーは多少の事では起きない。
だからそっと口づけをする。快感を高める為ではなく、愛しい人にする口づけ。起きている時にはまだ反応が怖くて出来ない。
「心配だな……。しばらくは一人にしないようにしないと」
セルジュはラウリーが他人と一緒に寝る時、ここまで気を許して熟睡しないことを知らなかった。
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