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出会い編
31 相談。
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「なぁ、ラウ。相談があるんだ」
「どした?」
深刻そうに聞こえたのか、ラウリーが心配そうに顔を見て来る。ある意味深刻だが、そこまで深刻ではない。
「防具を買う金が貯まったんだが、俺の防具はどうしたらいいと思う?」
「……防具屋に聞けよ」
「それは勿論そうなんだが、俺って一歩間違うと蛮族感が出るだろ?」
「ふぁっ、はっ、そうだな」
ラウリーが笑ったのを誤魔化そうとして変な声を出した。
セルジュは今まで茶色の革と生地で防具を揃えていた。二つ前の拠点で購入したもので、オイデンに行ければ買い替えるつもりだった。
それなりに長く着ているからか、元の素材の影響か、白いと思っていた生地が少し黄みがかっている。
狙った訳ではなく、自分に合う物でいい物を選んだらそうなっただけ。けれど蛮族からは抜け出したい。
「ここだと黒の革と白い生地が主流だから、大丈夫じゃね?」
「でも同じ西側から来た奴よりも、俺の防具は蛮族じゃないか?」
ラウリーが目を逸らしたということは、つまりはそういうことだ。
「ラウみたいに格好良くなりたい!」
「へぇあ? 俺?」
「そう。ラウの防具はちゃんと機能性も兼ね備えていて格好良く見える! 普段も!」
ラウリーの部屋も普段持っている小物なども、セルジュは格好良いなと思いがちだった。
洗練されていると言うか選び方が上手と言うか、ちゃんと統一感もある。熱弁したらラウリーに止められた。
「んんっ、まぁ、落ち着け。ある意味セルジュの物選びは、自分の雰囲気に合い過ぎてるんだよ」
「え、それは俺が蛮族っぽいってこと?」
「あー、ちょっと違う。一つ一つは悪くないと思うけれど、全部揃ったらやり過ぎになるんじゃないか?」
「よくわからん。なぁ、飯奢るからオーダーの時付いて来てくれねぇ?」
「いいけど、俺も大したことないし、クルトさんとかに頼んだ方がいいんじゃないか?」
「ヤダ。ラウがいい」
「そお?」
クルトは冒険者なのに普段着からおしゃれだと有名ではある。でもセルジュがなりたいイメージとは違うのだ。
おしゃれではなく、ラウリーの様にさり気なく格好良くなりたい。顔面の問題で限界はあるだろうが。
休みの日、ラウリーに防具屋について来てもらった。
「防具を新調したいから、相談にのって欲しい」
まずはラウリーは口出しはしないとのことで、店員と話を進めていく。予算を告げたらラウリーが驚いていた。
「金持ってんな、セルジュ」
「そうか? 二つ前の拠点で新調してから貯めてたからかな?」
「あっ、いやそうか。俺南側で搾取されながら来たから少ないんだわ」
何か泣きそうになった。
上納金みたいな制度があると聞いたが、ラウリーは搾取する側になっても優しかったのだと想像がつく。
その後しっとりした気持ちにはなったが、真剣に選んだ。
「セルジュ、店員さんからの二択で蛮族を自ら揃えているな」
ガーンとなったら、店員も気まずそうに苦笑いしていた。セルジュはどうやら蛮族っぽいものが好きらしい。
「後、俺の偏見もあるとは思うが、その組み合わせで白い膝丈の腰布は変態臭がする」
店員もそっと目を逸らした。セルジュは切なくなった。
そこからはラウリーと店員が主に話し、聞かれたことにセルジュが答える形に変わった。
「だー、だからセルジュは何でそんなに蛮族スタイルに持って行こうとするんだよ。俺と店員の話聞いてた?」
ぐーぱんを食らったが、聞いててもわからないんだもん。
「あー悪かったよ、落ち込むなって」
結局ラウリーと店員が話を進め、何故か新染料を割引きで使用してくれることになった。
ラウリーの美形パワーが凄い。出来上がりが楽しみになった。何故か最後に店員が、購入したセルジュとではなくラウリーと握手していたが。
出来上がったと連絡を受けて受け取りに行き、そのままラウリーの部屋に突撃して一番にお披露目した。
「わざわざ来なくても」
「最初に見せたくて! 蛮族感が全くない!」
「……良かったね」
「ありがとう!」
この時ラウリーはマシにはなったがやっぱり蛮族系だなと思ったが、喜んでいるセルジュには言えなかった。
冒険者は足捌きにこだわるから腰布にもこだわりがある。セルジュのこだわりが容姿と合致すると、蛮族っぽくなるのだと気が付いた。
セルジュの新しい防具も革と生地の組み合わせになった。
首と肩から腕の全面と胸までが黒の革で、柔らかく可動部分に工夫もされていて動きやすい。
革は噛み付きや爪による物理攻撃に特に強い素材。前線で動き、魔法防御が苦手なセルジュには必要だった。
腕の裏側と胸の下からは染料で染めた黒い生地で、暑がりなセルジュの為に通気性が考慮されている。
生地は魔法防御に優れ、腕のガードをすり抜ける魔法に対応してくれる。
今回はセパレートではなくワンピースタイプ。丈は短いがラウリーと似た雰囲気になった。
生地は少し分厚くすることでさらに性能を強化し、重さで風に強くポロリもしにくい。
両側スリットで伸縮性も高く動きやすい。ウエスト部分は剣のホルターで押さえ、ズボンは白でブーツは黒。
茶系に黄ばんだ蛮族スタイルから、洗練されたモノトーンスタイルに変わったとセルジュは思った。
一か月後くらいに、金がないと言っていたラウリーも防具を新調したが、それでもペアルックみたいなままだったのでちょっと嬉しかった。
だけれどラウリーの方が余程格好良いと思うのは、やはり顔と雰囲気なのか。着こなし方? セルジュの悩みは完全には解消されなかった。
元々本人が思うほど周囲はセルジュを蛮族とは思っていなかった。単にラウリーと発想が同じだっただけ。
それとたまにえっちの時に出す雰囲気が粗野だからで、それはラウリーしか知らなかったりする。
********
お気に入り登録ありがとうございます。また、初めて❤頂けて嬉しいです。やっほい。
「どした?」
深刻そうに聞こえたのか、ラウリーが心配そうに顔を見て来る。ある意味深刻だが、そこまで深刻ではない。
「防具を買う金が貯まったんだが、俺の防具はどうしたらいいと思う?」
「……防具屋に聞けよ」
「それは勿論そうなんだが、俺って一歩間違うと蛮族感が出るだろ?」
「ふぁっ、はっ、そうだな」
ラウリーが笑ったのを誤魔化そうとして変な声を出した。
セルジュは今まで茶色の革と生地で防具を揃えていた。二つ前の拠点で購入したもので、オイデンに行ければ買い替えるつもりだった。
それなりに長く着ているからか、元の素材の影響か、白いと思っていた生地が少し黄みがかっている。
狙った訳ではなく、自分に合う物でいい物を選んだらそうなっただけ。けれど蛮族からは抜け出したい。
「ここだと黒の革と白い生地が主流だから、大丈夫じゃね?」
「でも同じ西側から来た奴よりも、俺の防具は蛮族じゃないか?」
ラウリーが目を逸らしたということは、つまりはそういうことだ。
「ラウみたいに格好良くなりたい!」
「へぇあ? 俺?」
「そう。ラウの防具はちゃんと機能性も兼ね備えていて格好良く見える! 普段も!」
ラウリーの部屋も普段持っている小物なども、セルジュは格好良いなと思いがちだった。
洗練されていると言うか選び方が上手と言うか、ちゃんと統一感もある。熱弁したらラウリーに止められた。
「んんっ、まぁ、落ち着け。ある意味セルジュの物選びは、自分の雰囲気に合い過ぎてるんだよ」
「え、それは俺が蛮族っぽいってこと?」
「あー、ちょっと違う。一つ一つは悪くないと思うけれど、全部揃ったらやり過ぎになるんじゃないか?」
「よくわからん。なぁ、飯奢るからオーダーの時付いて来てくれねぇ?」
「いいけど、俺も大したことないし、クルトさんとかに頼んだ方がいいんじゃないか?」
「ヤダ。ラウがいい」
「そお?」
クルトは冒険者なのに普段着からおしゃれだと有名ではある。でもセルジュがなりたいイメージとは違うのだ。
おしゃれではなく、ラウリーの様にさり気なく格好良くなりたい。顔面の問題で限界はあるだろうが。
休みの日、ラウリーに防具屋について来てもらった。
「防具を新調したいから、相談にのって欲しい」
まずはラウリーは口出しはしないとのことで、店員と話を進めていく。予算を告げたらラウリーが驚いていた。
「金持ってんな、セルジュ」
「そうか? 二つ前の拠点で新調してから貯めてたからかな?」
「あっ、いやそうか。俺南側で搾取されながら来たから少ないんだわ」
何か泣きそうになった。
上納金みたいな制度があると聞いたが、ラウリーは搾取する側になっても優しかったのだと想像がつく。
その後しっとりした気持ちにはなったが、真剣に選んだ。
「セルジュ、店員さんからの二択で蛮族を自ら揃えているな」
ガーンとなったら、店員も気まずそうに苦笑いしていた。セルジュはどうやら蛮族っぽいものが好きらしい。
「後、俺の偏見もあるとは思うが、その組み合わせで白い膝丈の腰布は変態臭がする」
店員もそっと目を逸らした。セルジュは切なくなった。
そこからはラウリーと店員が主に話し、聞かれたことにセルジュが答える形に変わった。
「だー、だからセルジュは何でそんなに蛮族スタイルに持って行こうとするんだよ。俺と店員の話聞いてた?」
ぐーぱんを食らったが、聞いててもわからないんだもん。
「あー悪かったよ、落ち込むなって」
結局ラウリーと店員が話を進め、何故か新染料を割引きで使用してくれることになった。
ラウリーの美形パワーが凄い。出来上がりが楽しみになった。何故か最後に店員が、購入したセルジュとではなくラウリーと握手していたが。
出来上がったと連絡を受けて受け取りに行き、そのままラウリーの部屋に突撃して一番にお披露目した。
「わざわざ来なくても」
「最初に見せたくて! 蛮族感が全くない!」
「……良かったね」
「ありがとう!」
この時ラウリーはマシにはなったがやっぱり蛮族系だなと思ったが、喜んでいるセルジュには言えなかった。
冒険者は足捌きにこだわるから腰布にもこだわりがある。セルジュのこだわりが容姿と合致すると、蛮族っぽくなるのだと気が付いた。
セルジュの新しい防具も革と生地の組み合わせになった。
首と肩から腕の全面と胸までが黒の革で、柔らかく可動部分に工夫もされていて動きやすい。
革は噛み付きや爪による物理攻撃に特に強い素材。前線で動き、魔法防御が苦手なセルジュには必要だった。
腕の裏側と胸の下からは染料で染めた黒い生地で、暑がりなセルジュの為に通気性が考慮されている。
生地は魔法防御に優れ、腕のガードをすり抜ける魔法に対応してくれる。
今回はセパレートではなくワンピースタイプ。丈は短いがラウリーと似た雰囲気になった。
生地は少し分厚くすることでさらに性能を強化し、重さで風に強くポロリもしにくい。
両側スリットで伸縮性も高く動きやすい。ウエスト部分は剣のホルターで押さえ、ズボンは白でブーツは黒。
茶系に黄ばんだ蛮族スタイルから、洗練されたモノトーンスタイルに変わったとセルジュは思った。
一か月後くらいに、金がないと言っていたラウリーも防具を新調したが、それでもペアルックみたいなままだったのでちょっと嬉しかった。
だけれどラウリーの方が余程格好良いと思うのは、やはり顔と雰囲気なのか。着こなし方? セルジュの悩みは完全には解消されなかった。
元々本人が思うほど周囲はセルジュを蛮族とは思っていなかった。単にラウリーと発想が同じだっただけ。
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