とある冒険者セルジュ

相伽

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出会い編

25 充実。

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 ラウリーはセルジュと関係を持つようになって、性生活が安定した。やはり発散は適度にしないと自分は駄目なタイプなのだと思い知った。

 一般的な魔物はセルジュと共闘し、魔法に強い魔物はラウリーと同じ魔法が得意な冒険者と共闘していた。
 共闘を頻繁にするようになって、生活も安定しつつある。
 宿暮らしも悪くはないが、ラウリーは賃貸の方が人の出入りが少なくて落ち着くタイプだった。

「なぁ、この後飲まねぇ? 明日休みだろ」

 今日はセルジュと共闘して、そのまま飯屋に来ていた。ラウリーがネコバレしないように気遣ってくれている。
 飲まないかとは言っているが、顔からして夜のお誘い。最近お馴染みになりつつ展開ではあるが。

「俺、明日朝から用事があるから、他の奴と飲んでくれ」

「えー、何の用事だよ」

「物件探し」

「えっ、誰かと同居すんの?」

「いや? 賃貸の方が落ち着くから」

「ふーん。俺も行っていい?」

「何で?」

「興味ある」

「……まぁ、いいけど」

 朝から物件を探しに来た。それに何故かセルジュが付いて来た。

「何で……?」

「ん? 俺も今後の為に見たいって言ったろ?」

 昨日も興味があると言われたがまだ賃貸に移る予定はないと言うし、微妙に納得がいかない。
 同居の予定があるなら、その相手と休みを合わせて一緒に探すべきだと思う。

「何処から行くんだ?」

「ああ。クルトさんが教えてくれた店に」

 クルトはロイと同じようにオイデンの上澄みで、新人の指導にあたっている人。その縁で知り合った。
 柔和な笑顔に長髪の美人系で、面倒見がいい。ラウリーの勝手な判断では基本ネコで相手によってはタチ。
 止めようと思ってはいるがついタチかネコかを考えてしまうのは、最早ラウリーの癖に近い。

 セルジュと同じくらいの背はあるが細身で、ラウリーと同じ様にパワー不足を魔法で補っている。
 だから指導込みの共同依頼に誘ってもらえると、とても勉強をさせてくれる人だった。
 クルトも賃貸暮らしを始めた時に世話になった店で、冒険者向け物件の取り扱いがオイデンで一番多いところを教えてもらった。

「一人用の物件をお願いします」

「俺は同居用の物件を」

 セルジュは同居用の物件を見たいようだった。

 賃貸と宿暮らしでは賃貸の方が安いが、誰かと同居した方が広くてもっと安上がりではある。
 職業上日中は互いに外に出ていることが多いし、休みもそこまで重ならない。必ず重なる休みは雨の日くらい。

 だからか同居する人は多いと聞く。仕事上の信頼と条件で選ぶ人もいるが、仲が良いと急な休みは一緒に酒盛りしたりでだらだらするらしい。
 セルジュは賞賛したくなるくらいに仲の良い冒険者が多い。既に話が出ているのかも知れない。

 ラウリーは一人の方が落ち着く。休みに人に会いに出かけるのも苦ではないので、一人暮らしが一択だった。
 自炊したいのでキッチンは欲しいが、広すぎる部屋は掃除が面倒。風呂が好きなので風呂付がいい。

 色々と条件を出したがそれでも物件が幾つもあり、逆に絞るのに苦労した。店員に相談しながら絞り、数件見て回った。
 内見を終える頃には昼になり、お店も昼休憩になるので昼飯をセルジュと食べている。

「んん~~」

 ラウリーは二つの物件のどちらにするかで悩んでいた。内見でこの二つに絞れたが、ここから絞れないでいた。
 間取りはどちらもラウリーの好み。片方はギルドに近くて便利そうだが、その分家賃がお高め。

「絶対にこっち」

 渡された間取りを睨んでいると、今まで何も言わなかったセルジュがギルドから遠い方を指さした。

「その心は?」

「こっちはギルドに近過ぎるから、常に誰かがいる状態になる」

「え、どゆこと?」

 そんな恐ろしい状況は嫌だった。

「疲れているとか帰りが遅くなった時に、宿まで帰るのを面倒くさがる奴っているんだよ。宿なら追加料金とか支払いとか考えなきゃだけど、賃貸なら酒を渡せばいいだろみたいな感じ」

 冒険者用に宿は多くあるが、ギルドに近いほど宿も料金は高い。今はラウリーもセルジュもギルドから離れた宿を定宿にしている。
 そんなことをラウリーは考えたことは無かったが、言われればそういう奴がいそうな気はする。でも。

「……俺の部屋に入り浸る奴なんかいるか?」

「いる、絶対に」

 セルジュに強く断言されるとそんな気がして来た。
 もしそうなったら嫌なので、結局今の宿よりは少しギルドに近付くが、それなりに離れたままの部屋に決めた。

「じゃ、俺契約してその後家具買いに行くから」

「えっ、俺も行きたい」

 食後そのまま別れようとしたら、セルジュはまだ付いて来た。何故だ。
 部屋は空いていたのでそのまま契約し、次はベッドを買いに行く。物は少ないので他の家具はいらない。

 セルジュが大きくて高いベッドばかり勧めて来るので無視した。
 次の休みには引っ越せるように段取りも終わった時には、中途半端な時間になっていた。夕飯には早いが、今から何かするには遅い。

「ヤろ?」

「おま、それが目的だったとかじゃないよな?」

「興味があったのはほんと。でも今ヤりたいなと思ったのも事実」

「キリっとした顔して言うな!」

 結局ラウリーはセルジュの勢いに流されて、致した。泣かされて夕飯を食べるのが遅くなったが、気持ちいい誘惑には逆らえないラウリーだった。

「快感に弱過ぎる気がする……」

「モロ感が何言ってんだ?」

「いや、そっちじゃなくて。誘惑に弱いっていう」

 流石にこれだけヤって、モロ感を誤魔化そうとするのは諦めた。
 セルジュがじっと見ていたことに、ラウリーは気が付かなかった。
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