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出会い編
14 オイデンとは。
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「その顔だから職員にまで誘われて断ったとか、そういうのか?」
にやにやもされてしまったが、ほぼ正解だろう。嫌な奴だとは思われたくないので、正直に言っておこう。
「途中から担当だって必ず出て来る職員がいて、毎回誘われたが断った。ロットに行けるレベルの冒険者にはずっとここで一緒に活動しようと言われたけれど、それも断った」
「うわぁ。普通に嫌がらせされてんじゃん。痛い目見て戻って来るのを期待されてたんじゃないか? 南ってどこもイマイチらしいよなぁ」
「そうですね。権力者至上主義って言うか。利用出来る立場は利用して当然みたいな空気感がありますね」
ラウリーの故郷である南部はまさにそうだった。権力と金さえあればなんでも出来た。
良い人もいたが少数派に近かった気がする。ただの良い人は搾取される側になって、消えていく場所だった。
だからラウリー的には大森林を迂回して西部に移動した際、随分西部は穏やかな場所だなと思っていた。
けれどそれも西部全体では認識違いで、自分が全般的に南部に毒されていることをようやく認識し始めた。
「ここは実力者と職員が共同でそういうのはしっかり潰していくから、助けてくれるし、した奴は追放だ」
「へぇ……しっかりしてるんですね」
「話でしか聞いたことはないが、南が全般的に異常なんだよ。土地柄っつうの?」
「西部でも西側や東側はここと同じ感じだからな? 勘違いするなよ」
「ここは特にアホなことしたら実力者でもイケメンでも、数の暴力で沈めるからな」
オイデンでも多少の妬みは普通にあるが、わざわざ手を出す馬鹿はいないらしい。それを聞いて安心した。
ラウリーも釘を刺された気がしないでもないが、ギルドが冒険者のことも考えて運営していて頼もしく思った。
目指していた場所がロットみたいだったらがっかりだし、今までかけた労力と時間を考えて今後について悩んでいただろう。
その後話を聞いた冒険者が職員に言ったのか、現在の南側の状況を聞き取りしたいと言われた。
ギルドで一番偉いギルド長まで出て来たのでかなり驚いた。髭もじゃだが愛想のいい人だった。
どうやらロットからぶっちぎりの早さで紹介状が出された為、あちらからも観察されていたらしい。
「悪かったな、様子見しちまって」
「いえ……」
ラウリーは聞かれるままに答えた。
「南側はえげつなさに拍車がかかっているな。最近では南から冒険者が来ても碌な奴らがいなくてな」
「はぁ……」
「悪さしねぇように、普通とは違う紹介状を書いて中央都市に送ってやってるんだよ」
「はぁ……」
ギルド長は中央都市で普通に活躍していた元冒険者らしい。
中央都市は各地方のオイデンのようなギルドからの紹介がないと行けない場所だ。
そして、冒険者の中でも化け物だけが辿り着ける場所だと言われている。
稼げる額も凄いが、魔物の強さも半端ではないらしい。噂でしか聞いたことはないが。
「まぁ、よく来た。ここでは安心して実力を伸ばすことに注力しろ。むしろここはそうする場所だ」
「はぁ……」
「お前、ラウリーだったか。愛想なしだと言われたことねぇか?」
「……よく、言われますね」
「ここではそれじゃ損するぞ。まぁ実力がわかれば皆構わず話しかけてくるだろうが。一度の人生だ。楽しめよ」
「はぁ、ありがとうございます?」
それからは安心してソロで励んだ。職員からのバックアップが手厚い。初めての経験でかなり戸惑ったら笑われてしまった。
他の町で考えたらソロをするような場所ではもちろんないが、今のところ大きな問題はない。
オイデン生まれの冒険者もいるが、そちらにはちゃんと実力者が指導にあたる仕組みがあった。
オイデンで活動出来るレベルにはなれないと判断されれば、実力に見合った町を紹介されるそうだ。
共闘や共同依頼は実力が確認されてからでないと受けられない。足手纏いになるし、寄生になるからだ。
だからソロでこれくらいの実力だと周囲に示して、職員から声がかかるのを待つのだと教えられた。
共同依頼は共同でこなすべきレベルの魔物相手の狩りで、収入がいい。
安全性も高まるし、オイデンでは共同依頼が冒険者としての収入のメインになると教えられた。
南部や西部でも南側は自分の実力が不足している間は、相手に対価を渡して共闘するのが当たり前。
実際にラウリーは儲けのほとんどを渡していた。それ以上に危険な目に遭う可能性も高く、人を見極める能力がなければそこで終わりだった。
新鮮過ぎて、戸惑った。最初に話しかけた冒険者には覚えられていて、何度も冷やかされたが悪くない。
オイデンでは冒険者の実力だけでなく人格も重視されるようなので、ある意味安心でもある。
ここでは最初から大人しくしているのでヤバい奴認定をされる要素はないと思いたいが、自分が人格で弾かれる可能性については今は置いておく。
ラウリーの顔は正直言ってキツイ。更に無表情なので何を考えているかわからなくて、怖いとよく言われる。
怖いのは見た目だけで、ヤバい奴ではないと自分では思っている。多分。
南部の感覚が抜けていないので、ここではヤバい奴かもしれないが。
にやにやもされてしまったが、ほぼ正解だろう。嫌な奴だとは思われたくないので、正直に言っておこう。
「途中から担当だって必ず出て来る職員がいて、毎回誘われたが断った。ロットに行けるレベルの冒険者にはずっとここで一緒に活動しようと言われたけれど、それも断った」
「うわぁ。普通に嫌がらせされてんじゃん。痛い目見て戻って来るのを期待されてたんじゃないか? 南ってどこもイマイチらしいよなぁ」
「そうですね。権力者至上主義って言うか。利用出来る立場は利用して当然みたいな空気感がありますね」
ラウリーの故郷である南部はまさにそうだった。権力と金さえあればなんでも出来た。
良い人もいたが少数派に近かった気がする。ただの良い人は搾取される側になって、消えていく場所だった。
だからラウリー的には大森林を迂回して西部に移動した際、随分西部は穏やかな場所だなと思っていた。
けれどそれも西部全体では認識違いで、自分が全般的に南部に毒されていることをようやく認識し始めた。
「ここは実力者と職員が共同でそういうのはしっかり潰していくから、助けてくれるし、した奴は追放だ」
「へぇ……しっかりしてるんですね」
「話でしか聞いたことはないが、南が全般的に異常なんだよ。土地柄っつうの?」
「西部でも西側や東側はここと同じ感じだからな? 勘違いするなよ」
「ここは特にアホなことしたら実力者でもイケメンでも、数の暴力で沈めるからな」
オイデンでも多少の妬みは普通にあるが、わざわざ手を出す馬鹿はいないらしい。それを聞いて安心した。
ラウリーも釘を刺された気がしないでもないが、ギルドが冒険者のことも考えて運営していて頼もしく思った。
目指していた場所がロットみたいだったらがっかりだし、今までかけた労力と時間を考えて今後について悩んでいただろう。
その後話を聞いた冒険者が職員に言ったのか、現在の南側の状況を聞き取りしたいと言われた。
ギルドで一番偉いギルド長まで出て来たのでかなり驚いた。髭もじゃだが愛想のいい人だった。
どうやらロットからぶっちぎりの早さで紹介状が出された為、あちらからも観察されていたらしい。
「悪かったな、様子見しちまって」
「いえ……」
ラウリーは聞かれるままに答えた。
「南側はえげつなさに拍車がかかっているな。最近では南から冒険者が来ても碌な奴らがいなくてな」
「はぁ……」
「悪さしねぇように、普通とは違う紹介状を書いて中央都市に送ってやってるんだよ」
「はぁ……」
ギルド長は中央都市で普通に活躍していた元冒険者らしい。
中央都市は各地方のオイデンのようなギルドからの紹介がないと行けない場所だ。
そして、冒険者の中でも化け物だけが辿り着ける場所だと言われている。
稼げる額も凄いが、魔物の強さも半端ではないらしい。噂でしか聞いたことはないが。
「まぁ、よく来た。ここでは安心して実力を伸ばすことに注力しろ。むしろここはそうする場所だ」
「はぁ……」
「お前、ラウリーだったか。愛想なしだと言われたことねぇか?」
「……よく、言われますね」
「ここではそれじゃ損するぞ。まぁ実力がわかれば皆構わず話しかけてくるだろうが。一度の人生だ。楽しめよ」
「はぁ、ありがとうございます?」
それからは安心してソロで励んだ。職員からのバックアップが手厚い。初めての経験でかなり戸惑ったら笑われてしまった。
他の町で考えたらソロをするような場所ではもちろんないが、今のところ大きな問題はない。
オイデン生まれの冒険者もいるが、そちらにはちゃんと実力者が指導にあたる仕組みがあった。
オイデンで活動出来るレベルにはなれないと判断されれば、実力に見合った町を紹介されるそうだ。
共闘や共同依頼は実力が確認されてからでないと受けられない。足手纏いになるし、寄生になるからだ。
だからソロでこれくらいの実力だと周囲に示して、職員から声がかかるのを待つのだと教えられた。
共同依頼は共同でこなすべきレベルの魔物相手の狩りで、収入がいい。
安全性も高まるし、オイデンでは共同依頼が冒険者としての収入のメインになると教えられた。
南部や西部でも南側は自分の実力が不足している間は、相手に対価を渡して共闘するのが当たり前。
実際にラウリーは儲けのほとんどを渡していた。それ以上に危険な目に遭う可能性も高く、人を見極める能力がなければそこで終わりだった。
新鮮過ぎて、戸惑った。最初に話しかけた冒険者には覚えられていて、何度も冷やかされたが悪くない。
オイデンでは冒険者の実力だけでなく人格も重視されるようなので、ある意味安心でもある。
ここでは最初から大人しくしているのでヤバい奴認定をされる要素はないと思いたいが、自分が人格で弾かれる可能性については今は置いておく。
ラウリーの顔は正直言ってキツイ。更に無表情なので何を考えているかわからなくて、怖いとよく言われる。
怖いのは見た目だけで、ヤバい奴ではないと自分では思っている。多分。
南部の感覚が抜けていないので、ここではヤバい奴かもしれないが。
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