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出会い編
13 過去を回想。
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それからは基本は遠巻きにされ、見返りもなしに助けて欲しいと言って来る冒険者は退けた。
ここで普通に活動している冒険者は他にもいるのだから、新参者のラウリーを頼る意味がわからない。
ラウリーは慈善事業をしている訳ではない。けれど、実力を認めてもらうのにいつまでもソロではいられない。
それに多少嫌がらせもされていたので、それなりに信用出来そうな実力者とはお近付きになりたかった。
けれどある程度まともな実力者にまでヤバい奴認定を受けてしまい、どうしたものかと思っていたら話しかけて来た二人組がいた。
二人は恋人同士で声を掛けて来たのはタチの方だったが、共闘してネコの方が実力が上だと直ぐにわかった。
隠していても共闘すればわかる。ネコは実力を隠してでも、恋人とロットにいることを選んでいた。
多分タチにもバレているだろうとは思ったが、ラウリーは敢えて何も言わなかった。
実力者の協力はとても助かり、ラウリーは無事に三か月ほどでオイデンへの紹介状を手に入れた。
ギルド職員としてもラウリーには早く出て行って欲しかったのだろう。かなり早かったと思う。
「今までありがとう。お陰でオイデンへの紹介状がもらえた」
「どういたしまして。力になれて良かったよ」
ネコはそう言ったがオイデンに行く夢が諦められないのか、複雑な気持ちが隠しきれていなかった。
「……なぁ、ラウリー。こいつもオイデンへ連れて行ってやってくれないか」
「えっ、どうしてそんな事を? 僕たちはずっと二人で……」
ラウリーは嫌な予感はしていた。けれどここまではっきりと、自分を巻き込んでくるとは思っていなかった。
話しかけて来たのはタチだったが、ラウリーの面倒を見てくれたのはほぼネコの方。
タチはヤバい奴と言われているラウリーの庇護者という立場で、優越感に浸りたいだけな感じが最初の頃から透けて見えていた。
ほぼ絡んでくる奴らに自力で対処が出来るラウリーは、実害や面倒が少なく便利だっただろう。
庇護どころかすぐに実力を抜いてしまった気もするが。今やラウリーへの劣等感を隠そうともしていなかった。
二人はオイデンを目指す途中で知り合い、意気投合して恋人になった。二人は共にロットへ来たが、ここでタチは自分の実力不足に気が付いた。
それだけならネコはタチに惚れているので問題はなかったが、タチはネコより上の存在でいたかったらしい。
タチはネコへの劣等感から、ラウリーとオイデンへ行こうが行くまいが別れるつもりだったと思う。
単に二人まとめて実力者が自分の前から消えてくれれば、自分がまた上にいると錯覚することが出来る。
格好つけたことを言ったのは、いい奴だったとネコに今後も思われていたいというただの自己満足だったとラウリーは考えている。
既にタチは自分より実力が下のネコに目移りしていた。それは多分恋人のネコも気が付いていたと思う。
それなのにタチに惚れていたネコには、ラウリーがタチを変えてしまったと恨まれた。
自分が嫌われていたことを認めたくなくて、八つ当たりされたのだとは思うが二人との縁は綺麗に切れた。
二人は人助けはしなかった。特にネコはタチが考えなしに助けに入っても、気付かれない程度にフォローしながら助けるだけの実力があった。
だからラウリーに声をかけたのも、ただのタチの気まぐれ。ネコがラウリーの面倒を見たのは、タチに良く思われたいから。
ラウリーでさえ慣れてからは待ち伏を教えたりと、多少は助けた。
だからあまり好ましい人たちだとは思っていなかった。今回のこれは正直ただの巻き込まれ事故。
あの二人がその後どうしたのかは知らないが、正直興味もない。
タチの実力に合わせてネコが立ち止まる様も実力を誤魔化している様も、ロットに至るまでにも沢山見て来た。
だらだらと過去のことを思い出していたが、オイデンで待ち伏せなどをされるとラウリーには対応できないということが問題だった。
ここは本当に本気で、今までとは冒険者のレベルが違う。それはギルドで他の冒険者を見ただけでわかった。
対人戦で徒党を組まれたらラウリーは負ける気しかしなかった。多分サシでも勝てる奴は少ない。
だから先に危険な人と場所の情報が欲しかった。誰に聞くか慎重に観察して選び、話しかけた。
「ロットだけが異常なんだよ。ギルドの責任者が変わってからだったかな」
「そうそう。徐々にギスギスして。俺らが護衛依頼で行くと集ってくるから面倒だった」
「何で俺らが立ち寄った先の冒険者を痛めつけなきゃなんねぇんだよ」
「それな。せめて数の暴力でやり返せよな。他力本願だし、痛めつけてくれっていうのも理解できん」
オイデンは新参者に対しても気さくな気がした。ロットに少し毒され過ぎていたかもしれない。
オイデンでもロットは問題視されていて、間もなく指定ギルドから外れるらしいことまで教えてくれた。
「そもそもロットの手前のギルドで、その説明がされていたはずだぞ。お前さては、職員に嫌われていたな?」
「冒険者にもだろ?」
けたけたと笑われたが、ラウリーには嫌がらせをされる心当たりがあったので曖昧に薄ら笑いを返した。
ここで普通に活動している冒険者は他にもいるのだから、新参者のラウリーを頼る意味がわからない。
ラウリーは慈善事業をしている訳ではない。けれど、実力を認めてもらうのにいつまでもソロではいられない。
それに多少嫌がらせもされていたので、それなりに信用出来そうな実力者とはお近付きになりたかった。
けれどある程度まともな実力者にまでヤバい奴認定を受けてしまい、どうしたものかと思っていたら話しかけて来た二人組がいた。
二人は恋人同士で声を掛けて来たのはタチの方だったが、共闘してネコの方が実力が上だと直ぐにわかった。
隠していても共闘すればわかる。ネコは実力を隠してでも、恋人とロットにいることを選んでいた。
多分タチにもバレているだろうとは思ったが、ラウリーは敢えて何も言わなかった。
実力者の協力はとても助かり、ラウリーは無事に三か月ほどでオイデンへの紹介状を手に入れた。
ギルド職員としてもラウリーには早く出て行って欲しかったのだろう。かなり早かったと思う。
「今までありがとう。お陰でオイデンへの紹介状がもらえた」
「どういたしまして。力になれて良かったよ」
ネコはそう言ったがオイデンに行く夢が諦められないのか、複雑な気持ちが隠しきれていなかった。
「……なぁ、ラウリー。こいつもオイデンへ連れて行ってやってくれないか」
「えっ、どうしてそんな事を? 僕たちはずっと二人で……」
ラウリーは嫌な予感はしていた。けれどここまではっきりと、自分を巻き込んでくるとは思っていなかった。
話しかけて来たのはタチだったが、ラウリーの面倒を見てくれたのはほぼネコの方。
タチはヤバい奴と言われているラウリーの庇護者という立場で、優越感に浸りたいだけな感じが最初の頃から透けて見えていた。
ほぼ絡んでくる奴らに自力で対処が出来るラウリーは、実害や面倒が少なく便利だっただろう。
庇護どころかすぐに実力を抜いてしまった気もするが。今やラウリーへの劣等感を隠そうともしていなかった。
二人はオイデンを目指す途中で知り合い、意気投合して恋人になった。二人は共にロットへ来たが、ここでタチは自分の実力不足に気が付いた。
それだけならネコはタチに惚れているので問題はなかったが、タチはネコより上の存在でいたかったらしい。
タチはネコへの劣等感から、ラウリーとオイデンへ行こうが行くまいが別れるつもりだったと思う。
単に二人まとめて実力者が自分の前から消えてくれれば、自分がまた上にいると錯覚することが出来る。
格好つけたことを言ったのは、いい奴だったとネコに今後も思われていたいというただの自己満足だったとラウリーは考えている。
既にタチは自分より実力が下のネコに目移りしていた。それは多分恋人のネコも気が付いていたと思う。
それなのにタチに惚れていたネコには、ラウリーがタチを変えてしまったと恨まれた。
自分が嫌われていたことを認めたくなくて、八つ当たりされたのだとは思うが二人との縁は綺麗に切れた。
二人は人助けはしなかった。特にネコはタチが考えなしに助けに入っても、気付かれない程度にフォローしながら助けるだけの実力があった。
だからラウリーに声をかけたのも、ただのタチの気まぐれ。ネコがラウリーの面倒を見たのは、タチに良く思われたいから。
ラウリーでさえ慣れてからは待ち伏を教えたりと、多少は助けた。
だからあまり好ましい人たちだとは思っていなかった。今回のこれは正直ただの巻き込まれ事故。
あの二人がその後どうしたのかは知らないが、正直興味もない。
タチの実力に合わせてネコが立ち止まる様も実力を誤魔化している様も、ロットに至るまでにも沢山見て来た。
だらだらと過去のことを思い出していたが、オイデンで待ち伏せなどをされるとラウリーには対応できないということが問題だった。
ここは本当に本気で、今までとは冒険者のレベルが違う。それはギルドで他の冒険者を見ただけでわかった。
対人戦で徒党を組まれたらラウリーは負ける気しかしなかった。多分サシでも勝てる奴は少ない。
だから先に危険な人と場所の情報が欲しかった。誰に聞くか慎重に観察して選び、話しかけた。
「ロットだけが異常なんだよ。ギルドの責任者が変わってからだったかな」
「そうそう。徐々にギスギスして。俺らが護衛依頼で行くと集ってくるから面倒だった」
「何で俺らが立ち寄った先の冒険者を痛めつけなきゃなんねぇんだよ」
「それな。せめて数の暴力でやり返せよな。他力本願だし、痛めつけてくれっていうのも理解できん」
オイデンは新参者に対しても気さくな気がした。ロットに少し毒され過ぎていたかもしれない。
オイデンでもロットは問題視されていて、間もなく指定ギルドから外れるらしいことまで教えてくれた。
「そもそもロットの手前のギルドで、その説明がされていたはずだぞ。お前さては、職員に嫌われていたな?」
「冒険者にもだろ?」
けたけたと笑われたが、ラウリーには嫌がらせをされる心当たりがあったので曖昧に薄ら笑いを返した。
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