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第六章 おいでよ!男性保護省の巻
第六十二話 ラッキーワンコ
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朝日と二人で各課を案内することになり、ご機嫌の餡子が通路をスキップで進んで行く。「あっ、ここのトイレはだいたい空いてるっス、穴場っス」や「あっ、ここの自販機は品揃えがいいっス」など、必要の無い場所を必要以上に案内をしながら朝日を先導する。
そんな二人から離れること数メートル。なんと、この男性保護省内で朝日と餡子をつけ狙う不届きな影が三つ。廊下の陰から仲良く頭を三つ並べ、何かを相談しながらのぞき込んでいる。
「三ちゃん……マジでやんの?」
一番上に頭を出している細身で黒髪ロングの女性が呟く。名札にはBランクMaps門馬と記されている。
「何言ってんの、あたしの仕入れた情報通りっしょ。今なら矢地課長も大和の奴もいないし、ワンコ一人のここしかないっしょ?」
そう意気込むのは真ん中にいる中肉中背の金髪ショート。名札には同じくBランクMaps三条と記されている。察するに彼女がリーダー格らしい。
ちなみに『ワンコ』とは餡子のあだ名である。犬顔に名前が餡子なので、一部の連中からはワンコと呼ばれているのだ。
「で、でもあんま乱暴なことするの……い、いけないと思うけど」
最後に気弱そうに発言をしたのは、一番下にいる背が低くゴツゴツとした四角い体格で黒髪おかっぱの女性だ。弱気な発言とは正反対で、角ばってゴツい印象の顔立ちをしている。これまたBランクMaps鹿松と名札に記されている。
「はあ……門ちゃん、鹿っち。見たっしょ? 食堂での光景。あんなドジかましても優しくされてさ、その上――」
『あ、そうだ餡子ちゃんにも僕の卵焼きあげるね。はい、あーん』
『はわあっ!? あ、ああああーんっスか? 伝説のあれっスか? ふおおおっ! も、もう自分、これが最後の食事でも悔いなしッス!!」
『あはは、大袈裟だなあ。どうぞ――って、ちょっと餡子ちゃん!? ああっ!? お、お箸の先まで……』
『むはあああっ! この卵焼き、具に竹が入ってるっスね? 歯ごたえあっておいしいっス』
「――神崎さんの竹箸までボリボリ幸せそうにかじってやがったっしょ。ふああああっ! なーにが『食物繊維たっぷりっスね』だああっ!? こんなおいしいヘルプ役をワンコなんかに取られてどうすんの? そもそもあたしらが一番先に立候補したっしょ」
「ちょっと三ちゃん落ち着いて! 気付かれるわよ」
興奮気味の三条を門馬がなだめる。
「ともかくワンコにゃ不慮の事故で退場して貰って、あたしらが代わりにあの素敵な神崎さんのヘルプにつく! これしかないっしょ」
「でも、実際どうするのよ?」
「ふふん! ちょうど今ワンコたちが向かってる先は突き当たりで左側に階段、右側は通路……そこであたしらは通路側に先回りして待ち構える。でもって鹿っちが出会いがしらにショルダータックルかまして、ワンコは階段落ちをして退場。完璧っしょ」
どうやら実力行使で餡子を退場させ、交代要員として名乗りでるつもりらしい。なんとも体育会系な発想である。
「そ、それはちょっと露骨だと思うけど?」
「構やしないっしょ! 通りすがりのショルダータックルくらい警護課じゃ普通普通」
「三ちゃんそれはいいけど、どうやって神崎さんのヘルプにつくのよ」
「もちろんワンコの介抱と称して近づいて……後はこの”トークの三ちゃん”にお任せっしょ!」
トークの三ちゃんがどうなのかはさておき、待機中のMapsにAランクはいない為、確かに三条たちBランクMapsはランクからすればヘルプ対象としては妥当ではある。
そんな企みも露知らず、案内と称した寄り道をする餡子は進行速度がとても遅い。三条たちにしっかり先回りをされ、待ち構えられていた。そして餡子が階段手前に来た瞬間!
((今だ。鹿っち行けえええっ!!))
「あっ、朝日さん。喉乾いたっスね。ちょっとさっきの自販機コーナーに戻っていいっスか?」
鹿松が通路から飛び出たまさにその時! まるでそれに呼応するかのように餡子がUターンをした。
「え???」
((何いいいいいいいっ!?))
「い、いやあああああっ!?」
あまりに絶妙なタイミングで勢い止まらず。鹿松はそのまま階段へとダイブしていった。その姿を餡子の後ろで見届けた朝日が驚きながら声を上げる。
「あ、餡子ちゃん……今、なんか……誰かが凄い勢いで階段を飛び降りて行ったけど……」
「ん? そうっスか、まあ警護課では良くあることっスよ。普通普通っス」
「へえー、そ、そうなんだ……」
――その後、朝日たちは順調に調査課、広報課へと回っていた。一方、これまたしつこく背後を狙う三つの影。しかし、なんと今度は門馬の両手に小型のライフル銃が握られていた。Maps専用の対暴女鎮圧用麻酔銃である。
「さ、三ちゃん……ま、麻酔銃を使うのはさすがにマズいと思うけど……」
アザだらけでゴツい顔立ちがよりゴツくなった鹿松が気弱そうに呟く。
「うっさい! バレなきゃ犯罪じゃないっしょ。それに門ちゃんの腕なら一発で夢の中へ直行便さ。そこであたしらが颯爽と登場してワンコを介抱しながら、神崎さんのヘルプに付く。完璧っしょ」
「おっと、広報室から出て来たわよ。三ちゃん、鹿っち、後ろから人が来ないか確認よろしく」
「「了解」」
餡子たちが広報室から出たところで、三人も同じ通路の数メートル後ろ側から姿を現す。門馬は素早くしゃがんでライフルを構え、スコープをのぞき込んだ。そして……。
(今だ!!)
餡子の肩に照準を合わせて引き金を引く!
「へっくち!」
――と同時にこれまた偶然餡子がくしゃみをして、オーバーアクション気味に身体を屈ませた。そして弾丸は餡子の上を通り抜け、たまたまその先に設置されていた消火器に当たる。軽い金属音と共に弾き返された弾丸は……。
「あ痛っ!?」
「「あ痛???」」
その声に門馬と鹿松が振り返ると、左肩にしっかりと麻酔弾が突き刺さっている三条がいた。
「ちょっ? えっ? あ……、なんか……、眠いっしょ―――ふうっ」
「「さ、三ちゃーーん!?」」
――それからも懲りずにあの手この手で餡子を退場させようとする三条たちだが、ことごとく回避されるか、カウンターを食らう始末であった。
「一体どうなってんのよワンコの奴? おかしいっしょ」
「あの噂、やっぱり本当なんじゃない? 絶対異常だよ……」
餡子は実のところMapsとしての能力判定はDランク下位だ。さらにそそっかしくてドジっ子属性のサービス付きである。それでもCランクなのには理由があった。
彼女は男性警護――男性の近くにいる時に限って恐ろしい強運を発揮することが多い。さらにその強運は警護対象にも及ぶ。過去の警護任務中、餡子が突然お腹を壊したとトイレに駆け込み、警護対象の男性を含めて電車に乗り遅れたことがあった。しかし、乗る予定だった電車はその後に脱線事故を起こし、結果的には事故を回避する形となっている。
餡子のこう言った類似案件をあげると枚挙に暇がないのだ。その為、結果的にどうしても評価が上がる謎のCランクとして、上層部からは一目置かれている。『餅月餡子』――通称”激運”餡子。梅も餡子がただ可愛い後輩だから、とヘルプに指名した訳ではない。
「ラッキーワンコか……」
「三ちゃん、まだ何か手があるの?」
「も、もう諦めた方がいいと思うんだけど……」
「大丈夫! こう言った場合のセオリーは強運を発動させないこと。攻撃を仕掛けずに複数人で包囲してゆっくり拘束をすれば完璧っしょ、つまり――」
三条が強運封じとして、餡子に直接的な危害を加えず囲んで交代を説得することを提案する。しかし、それを実行すればいっしょにいる朝日を怯えさせてしまうのでは? との意見も飛び交う。それでも朝日は従順そうだから強引にお願いするのもありじゃないか? など、だんだんと都合の良い悪巧み話になってきたその時――。
「ふぎゃああああっ!?」
「「!?」」
突然、一番後ろにいた鹿松の悲鳴が響き渡り、驚いた三条と門馬が後ろを振り向く。するとガッチリと頭を掴まれて宙に浮き呻いている鹿松の姿――そして、その手の持ち主はと言うと。
「ほう三馬鹿ども……面白い話をしてるじゃないか? 神崎君はおとなしそうだからなんだって……?」
「「や、やややややや矢地課長」」
一気に二人の顔が青ざめる。
「三条……貴様、ヘルプ希望に来た時に余計なことはするなと言っておいたハズだが……いや、何より食堂でした私の注意を聞いてないとは言わせんぞ」
「い、いや……あ、あたしらが……か、神崎さんに何かするわけないっしょ。そうで無くて、ああああああ」
どうしたトークの三ちゃん。
「やたら餅月から不在着信が入っていたから早めに切り上げて来てみれば……貴様ら……余罪ありだな!!」
そう言って、矢地は右手でビクンビクンと痙攣しながら泡を吹いている鹿松を投げ捨てる。そして何やらポケットから黒色の革手袋を取り出して装着する。
「「ちょ、ちょちょちょちょ!?」」
「問答無用だ! 喜べ!! たっぷりと指導してやろう」
「「ヒイイイイイイイイイイッ!!」」
現役時代に使っていた黒革手袋。指導と言う名の本気のアイアンクロー時に装着される為、Mapsたちの間では恐怖の対象である。元SランクMapsにして警護課長兼戦闘訓練担当教官『矢地亮子』。黒皮手袋をはめたその姿は畏怖を込めて”黒の万力”と呼ばれている――。
「餡子ちゃん、どしたの? 困った顔して……」
「やっちまったっス」
「え? 何を?」
「スマホのロックをし忘れて……矢地課長にポケット発信二十連かましてたっス……後で絶対怒られるっス……」
そんな二人から離れること数メートル。なんと、この男性保護省内で朝日と餡子をつけ狙う不届きな影が三つ。廊下の陰から仲良く頭を三つ並べ、何かを相談しながらのぞき込んでいる。
「三ちゃん……マジでやんの?」
一番上に頭を出している細身で黒髪ロングの女性が呟く。名札にはBランクMaps門馬と記されている。
「何言ってんの、あたしの仕入れた情報通りっしょ。今なら矢地課長も大和の奴もいないし、ワンコ一人のここしかないっしょ?」
そう意気込むのは真ん中にいる中肉中背の金髪ショート。名札には同じくBランクMaps三条と記されている。察するに彼女がリーダー格らしい。
ちなみに『ワンコ』とは餡子のあだ名である。犬顔に名前が餡子なので、一部の連中からはワンコと呼ばれているのだ。
「で、でもあんま乱暴なことするの……い、いけないと思うけど」
最後に気弱そうに発言をしたのは、一番下にいる背が低くゴツゴツとした四角い体格で黒髪おかっぱの女性だ。弱気な発言とは正反対で、角ばってゴツい印象の顔立ちをしている。これまたBランクMaps鹿松と名札に記されている。
「はあ……門ちゃん、鹿っち。見たっしょ? 食堂での光景。あんなドジかましても優しくされてさ、その上――」
『あ、そうだ餡子ちゃんにも僕の卵焼きあげるね。はい、あーん』
『はわあっ!? あ、ああああーんっスか? 伝説のあれっスか? ふおおおっ! も、もう自分、これが最後の食事でも悔いなしッス!!」
『あはは、大袈裟だなあ。どうぞ――って、ちょっと餡子ちゃん!? ああっ!? お、お箸の先まで……』
『むはあああっ! この卵焼き、具に竹が入ってるっスね? 歯ごたえあっておいしいっス』
「――神崎さんの竹箸までボリボリ幸せそうにかじってやがったっしょ。ふああああっ! なーにが『食物繊維たっぷりっスね』だああっ!? こんなおいしいヘルプ役をワンコなんかに取られてどうすんの? そもそもあたしらが一番先に立候補したっしょ」
「ちょっと三ちゃん落ち着いて! 気付かれるわよ」
興奮気味の三条を門馬がなだめる。
「ともかくワンコにゃ不慮の事故で退場して貰って、あたしらが代わりにあの素敵な神崎さんのヘルプにつく! これしかないっしょ」
「でも、実際どうするのよ?」
「ふふん! ちょうど今ワンコたちが向かってる先は突き当たりで左側に階段、右側は通路……そこであたしらは通路側に先回りして待ち構える。でもって鹿っちが出会いがしらにショルダータックルかまして、ワンコは階段落ちをして退場。完璧っしょ」
どうやら実力行使で餡子を退場させ、交代要員として名乗りでるつもりらしい。なんとも体育会系な発想である。
「そ、それはちょっと露骨だと思うけど?」
「構やしないっしょ! 通りすがりのショルダータックルくらい警護課じゃ普通普通」
「三ちゃんそれはいいけど、どうやって神崎さんのヘルプにつくのよ」
「もちろんワンコの介抱と称して近づいて……後はこの”トークの三ちゃん”にお任せっしょ!」
トークの三ちゃんがどうなのかはさておき、待機中のMapsにAランクはいない為、確かに三条たちBランクMapsはランクからすればヘルプ対象としては妥当ではある。
そんな企みも露知らず、案内と称した寄り道をする餡子は進行速度がとても遅い。三条たちにしっかり先回りをされ、待ち構えられていた。そして餡子が階段手前に来た瞬間!
((今だ。鹿っち行けえええっ!!))
「あっ、朝日さん。喉乾いたっスね。ちょっとさっきの自販機コーナーに戻っていいっスか?」
鹿松が通路から飛び出たまさにその時! まるでそれに呼応するかのように餡子がUターンをした。
「え???」
((何いいいいいいいっ!?))
「い、いやあああああっ!?」
あまりに絶妙なタイミングで勢い止まらず。鹿松はそのまま階段へとダイブしていった。その姿を餡子の後ろで見届けた朝日が驚きながら声を上げる。
「あ、餡子ちゃん……今、なんか……誰かが凄い勢いで階段を飛び降りて行ったけど……」
「ん? そうっスか、まあ警護課では良くあることっスよ。普通普通っス」
「へえー、そ、そうなんだ……」
――その後、朝日たちは順調に調査課、広報課へと回っていた。一方、これまたしつこく背後を狙う三つの影。しかし、なんと今度は門馬の両手に小型のライフル銃が握られていた。Maps専用の対暴女鎮圧用麻酔銃である。
「さ、三ちゃん……ま、麻酔銃を使うのはさすがにマズいと思うけど……」
アザだらけでゴツい顔立ちがよりゴツくなった鹿松が気弱そうに呟く。
「うっさい! バレなきゃ犯罪じゃないっしょ。それに門ちゃんの腕なら一発で夢の中へ直行便さ。そこであたしらが颯爽と登場してワンコを介抱しながら、神崎さんのヘルプに付く。完璧っしょ」
「おっと、広報室から出て来たわよ。三ちゃん、鹿っち、後ろから人が来ないか確認よろしく」
「「了解」」
餡子たちが広報室から出たところで、三人も同じ通路の数メートル後ろ側から姿を現す。門馬は素早くしゃがんでライフルを構え、スコープをのぞき込んだ。そして……。
(今だ!!)
餡子の肩に照準を合わせて引き金を引く!
「へっくち!」
――と同時にこれまた偶然餡子がくしゃみをして、オーバーアクション気味に身体を屈ませた。そして弾丸は餡子の上を通り抜け、たまたまその先に設置されていた消火器に当たる。軽い金属音と共に弾き返された弾丸は……。
「あ痛っ!?」
「「あ痛???」」
その声に門馬と鹿松が振り返ると、左肩にしっかりと麻酔弾が突き刺さっている三条がいた。
「ちょっ? えっ? あ……、なんか……、眠いっしょ―――ふうっ」
「「さ、三ちゃーーん!?」」
――それからも懲りずにあの手この手で餡子を退場させようとする三条たちだが、ことごとく回避されるか、カウンターを食らう始末であった。
「一体どうなってんのよワンコの奴? おかしいっしょ」
「あの噂、やっぱり本当なんじゃない? 絶対異常だよ……」
餡子は実のところMapsとしての能力判定はDランク下位だ。さらにそそっかしくてドジっ子属性のサービス付きである。それでもCランクなのには理由があった。
彼女は男性警護――男性の近くにいる時に限って恐ろしい強運を発揮することが多い。さらにその強運は警護対象にも及ぶ。過去の警護任務中、餡子が突然お腹を壊したとトイレに駆け込み、警護対象の男性を含めて電車に乗り遅れたことがあった。しかし、乗る予定だった電車はその後に脱線事故を起こし、結果的には事故を回避する形となっている。
餡子のこう言った類似案件をあげると枚挙に暇がないのだ。その為、結果的にどうしても評価が上がる謎のCランクとして、上層部からは一目置かれている。『餅月餡子』――通称”激運”餡子。梅も餡子がただ可愛い後輩だから、とヘルプに指名した訳ではない。
「ラッキーワンコか……」
「三ちゃん、まだ何か手があるの?」
「も、もう諦めた方がいいと思うんだけど……」
「大丈夫! こう言った場合のセオリーは強運を発動させないこと。攻撃を仕掛けずに複数人で包囲してゆっくり拘束をすれば完璧っしょ、つまり――」
三条が強運封じとして、餡子に直接的な危害を加えず囲んで交代を説得することを提案する。しかし、それを実行すればいっしょにいる朝日を怯えさせてしまうのでは? との意見も飛び交う。それでも朝日は従順そうだから強引にお願いするのもありじゃないか? など、だんだんと都合の良い悪巧み話になってきたその時――。
「ふぎゃああああっ!?」
「「!?」」
突然、一番後ろにいた鹿松の悲鳴が響き渡り、驚いた三条と門馬が後ろを振り向く。するとガッチリと頭を掴まれて宙に浮き呻いている鹿松の姿――そして、その手の持ち主はと言うと。
「ほう三馬鹿ども……面白い話をしてるじゃないか? 神崎君はおとなしそうだからなんだって……?」
「「や、やややややや矢地課長」」
一気に二人の顔が青ざめる。
「三条……貴様、ヘルプ希望に来た時に余計なことはするなと言っておいたハズだが……いや、何より食堂でした私の注意を聞いてないとは言わせんぞ」
「い、いや……あ、あたしらが……か、神崎さんに何かするわけないっしょ。そうで無くて、ああああああ」
どうしたトークの三ちゃん。
「やたら餅月から不在着信が入っていたから早めに切り上げて来てみれば……貴様ら……余罪ありだな!!」
そう言って、矢地は右手でビクンビクンと痙攣しながら泡を吹いている鹿松を投げ捨てる。そして何やらポケットから黒色の革手袋を取り出して装着する。
「「ちょ、ちょちょちょちょ!?」」
「問答無用だ! 喜べ!! たっぷりと指導してやろう」
「「ヒイイイイイイイイイイッ!!」」
現役時代に使っていた黒革手袋。指導と言う名の本気のアイアンクロー時に装着される為、Mapsたちの間では恐怖の対象である。元SランクMapsにして警護課長兼戦闘訓練担当教官『矢地亮子』。黒皮手袋をはめたその姿は畏怖を込めて”黒の万力”と呼ばれている――。
「餡子ちゃん、どしたの? 困った顔して……」
「やっちまったっス」
「え? 何を?」
「スマホのロックをし忘れて……矢地課長にポケット発信二十連かましてたっス……後で絶対怒られるっス……」
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