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第五章 特殊保護事例Ⅹ案件~五月雨家へようこそ!
第五十七話 ありがとうお母さん
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――別の建物となるホテルに宿泊して朝日たちは一晩を過ごす。そして翌日の朝食時。新月が帰り道での予定を突然宣言した。
「はーい。今日の帰りにー朝日ちゃんをー遊園地に連れて行ってあげまーす」
「「「はいいっ!?」」」
「えっ? 遊園地ですか?」
「そー、ここでーす」
控えていた蘭子が朝日にパンフレットを手渡す。最初は何気なく目を通していた朝日だが、だんだんと表情が明るくなる。
「あっすごい! ここジェットコースター系が充実してる」
「武蔵エクストリームランド。多彩な絶叫マシンがあるので有名」
こういった情報には無駄に強い深夜子、聞かれてもない説明を開始する。
「朝日君。ここの目玉マシン”ヴァルハラ”はヤバい。フロアレス型な上に高さ、落差とも100メートル越えで、最高速度158キロの怪物」
「やたら詳しいな、おい?」
パンフをながめながら盛り上がる朝日たちとは逆に難しそうな顔をして五月が新月の側へと駆け寄る。
「ちょっとお待ちください。遊園地!? お母様、少々こちらへ――」
そのまま新月とテーブルを少し離れ、ヒソヒソと話を始める。
(お母様……まさか遊園地を貸し切るおつもりでも?)
(それじゃボンが楽しめんじゃろうが、なんのためにど平日の昼間を選んどると思うとんじゃ)
(ちょっとお母様! 男性福祉対応でも無い施設で朝日様が一般の女性に混じっては危ないですわ。何かあったらどうするんですの!?)
(まだわからんのか? じゃからええんじゃ。五月……お前、ボンの資料は頭に入ってるじゃろう。心配ならうちの連中も使え、そうすりゃ頭数に問題はなかろうが。ボンが楽しめる場所に連れて行ってやれえや)
(それは……それはわかりますが……)
(いつもとは言わん、できる時にはしてやれや。ワシらのルールで縛り続けりゃいつか破綻するで)
五月にも心当たりがないわけでは無い。深夜子などはどちらかと言えば新月の考え方に近く、五月と意見が別れることも多々あった。例えば朝日と自身や深夜子とのデート――本来、非番のもの以外に一人側へつけるのをさせなかったのは深夜子であったし、花火大会での神社の件などは最たるものであった。
(五月……少しは頭を柔らこうせえ。このままじゃ朝焼子の娘に先こされるぞ)
(うぐっ……で、でも私は朝日様に信頼されて身辺警護を任され――)
(ふーん……ほれ見てみい。あがいに嬉しそうなボンに今さら連れてかんちゅうんか? 情けないのお……ワシの娘は男の一人も喜ばせれん甲斐性なしじゃったとはのお)
(んなぁ!? わっ、わかりましたわ! やってみせますわよっ! 朝日様を安全に、かつ楽しませて満足させて差し上げますわ!!)
――『武蔵エクストリームランド』
国内最大級のテーマパークの一つ、百万平米超の敷地面積を持ち、乗り物系アトラクションを中心とした九十八種類の豊富なアトラクション数が売りである。
平日だけOL層を中心とした若い女性が多く、客入りは少な目でまばらだ。休日なら必ず待ち時間が発生するアトラクションも今日はどれも待つ必要はない。
最初に朝日が選んだのは通称『バイキング』と呼ばれる海賊船を模した言うなれば超大型ブランコ。20メートルに届かんばかりの高さと急な角度からフリーフォール感を味わえる絶叫系アトラクションだ。
「ちょ……向かいの席にいるのって男の子?」
「めちゃくちゃ美形……なんで……普通に遊びに来てるの?」
「え? マスコットキャラ……とかでも無いよね」
男性福祉対応では無い施設は男性が基本来ないだけであり、男性使用への配慮は当然なされている。まあ、朝日の姿を見た係員たちはみな運用ガイドを再確認する羽目になる――その位のレア度ではあった。その存在に気づいた他の乗客にも動揺が走しりまくっている。
「ねえ……それよりも……あんな可愛い子がこれからいっしょにキャーとかワーとか言うの?」
「「「「「…………ごくり」」」」」
――アトラクション終了後。
「楽しかったねー」
「朝日君。次は何にする?」
「もうちっと激しい奴にしようぜ!」
「私は激しいのは……ちょっと……」
朝日たちはそれぞれの感想を話しながら、次のアトラクションへと移動して行った。
「だ、誰かーーっ、医療班をーーーーっ!!」
係員からヘルプが飛ぶ。
「ひゃーって、うふふ、男の子が、ひゃーって……」
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い」
「声も……表情も……うへえへへはへへへ」
死屍累々、朝日たち以外の乗客は全員が気絶か放心状態となっていた。
当然ながらこの後も朝日たちが乗ったアトラクションはほぼ全てが一旦使用停止に追い込まれる。しかし失神した乗客たちからのクレームは一切なく、むしろ感謝のアンケートが殺到したと言う。
――そんなこんなで朝日たちがめぼしいアトラクションを終えた頃。
ここは目玉と言われるジェットコースター”ヴァルハラ”のコース下で、ベンチなどが設置されているちょっとした休憩所である。遊び疲れた女性たちがジュースなど飲み一息をいれていた。そんな彼女らの上でヴァルハラが通過して、乗客の悲鳴や歓声が響いてくる。
「ん……雨?」
「えー!? 今日は全然晴れてるのに……あっ、ほんと――」
空は晴天、なのにパラパラとベンチや周りに水滴の落ちる音がする。ふと湿ったその手を一人が確認した途端に悲鳴が響く。
「きゃあああああっ!! いやあっ、何これぇーーっ!?」
「ひいっ!? こ、こここここれ、血っ、血ぃーーっ!!」
驚きパニックになりながらも上空を見上げる。そこにはジェットコースターヴァルハラが縦横無尽に駆け巡る姿、それに乗って楽しげにしている朝日たち、それと――。
「美少年の悲鳴で耳が妊娠すりゅうううううう!!」
「あ゛あ゛ー美少年の悲鳴超やっヴェエエエエエエ!!」
朝日らが乗っている座席より、前後方数名の女性客の鼻から流れでる歓喜の血が雨となって注いでいる。フロアレス型ジェットコースターゆえの悲劇であった。
とまあリアクションの豊富さはともかく、朝日にとって一般客といっしょに乗るアトラクションには忘れかけていた賑やかさ、楽しさがあった。五月もその朝日の笑顔には色々と思うところがあったようで、途中からずいぶんと積極的になっていた。奮い立った五月らの警護対応に黒服らのサポートもあって、特に問題もなく無事遊び終えて遊園地を後にする。
以降しばらくの間、武蔵エクストリームランドには奇妙な噂が飛び交い、平日の入場者数が過去最高記録を叩き出すこととなった――。
五月雨家へ戻ってからゆっくりと一晩を過ごして疲れを癒し、三泊四日の五月雨家訪問は終わりを告げる。翌日、新月に蘭子と黒服、メイドたちが集まった屋敷の玄関前で朝日が最後の挨拶をしていた。
深夜子と梅はその間にせっせと車へ荷物を積んでいる。帰り道は送迎でなく、新月から五月に『乗って帰れ』と高級ミニバンの新車が一台用意してあった。無論、税金やメンテなどの維持費も新月持ちの甘々仕様車だ。
今日は白色を基調としたお姫様ドレス姿の新月が、号泣しながら朝日にしがみついている。
「う゛……う゛……う゛え゛え゛え゛え゛ん! 朝日ちゃーん! 帰らないでー、お家にいてー、ここで暮らしましょー、もしくはー五月ちゃんのお婿さんになってーーーっ!」
「お母様ッ! 本当に、本当に恥ずかしいですからこれ以上は――」
五月に引き剥がされブスッと不満げな表情を見せる新月。もちろん嘘泣きである。それでも朝日は再度新月の前に行くと深々と頭を下げた。
「うえっ!? ――あ、朝日ちゃん?」
「あの……改めてですけど、海土路君との件。それから色々と楽しいところに連れて行って貰って嬉しかったです。あと僕は子供だから……あんまり詳しくはわからないですけど……見えない部分でとても良くして貰っているのはなんとなくわかりました――」
きゅっと新月を抱きしめる。
「本当にありがとう――お母さん」
「っ!? ……ボ、ボン?」
「……先のことはすぐに答えは出せそうには無いですけど……深夜子さん、五月さん、梅ちゃんがいなかったら、今僕は笑っていられなかったと思います。だから――しっかり考えますね!」
笑顔を見せながらそう言って、深夜子たちの待つ車へと小走りで去っていく。
新月は目を見開き固まっていたが、少しすると何やら納得したのか微笑みながら軽いため息をつく。そして、朝日たちの乗る車へと笑顔を向け直して手を振る。
「そっかー、ありがとねー朝日ちゃーん。アタシも楽しかったわー。ここをー自分のお家だと思ってーまた遊びに着てねー」
「はい、ありがとうございます! それじゃあ皆さんお元気で」
「「「「「坊ちゃーーーん、また来てくださいねーーーっ!!!」」」」」
朝日たちは新月ら見送りの蘭子に黒服、メイドたち全員と挨拶を交わして帰路に着いた。
「ふう……聡い子じゃな……五月……大魚を逃すなよ――」
「ところで社長」
「ん? なんじゃい」
「この四日間。経推同盟の会合以外、全ての商談アポをキャンセルかつ業務放棄いただきましたので――」
「おい!? ちょっと待てえや。少しくらいボンとの別れの余韻を――おい? ――こら?」
「はっはっは、社長心配ご無用です。余韻にひたる間も無いくらいには仕事が溜まってございます!」
蘭子に引きずられ車の後部座席に乱雑に放り込まれ、その脇は黒服にガッチリ固められる。何やら喚いている新月――悲しそうな瞳で五月雨コーポレーション本社へと運ばれる晴天の昼下がりであった。
「はーい。今日の帰りにー朝日ちゃんをー遊園地に連れて行ってあげまーす」
「「「はいいっ!?」」」
「えっ? 遊園地ですか?」
「そー、ここでーす」
控えていた蘭子が朝日にパンフレットを手渡す。最初は何気なく目を通していた朝日だが、だんだんと表情が明るくなる。
「あっすごい! ここジェットコースター系が充実してる」
「武蔵エクストリームランド。多彩な絶叫マシンがあるので有名」
こういった情報には無駄に強い深夜子、聞かれてもない説明を開始する。
「朝日君。ここの目玉マシン”ヴァルハラ”はヤバい。フロアレス型な上に高さ、落差とも100メートル越えで、最高速度158キロの怪物」
「やたら詳しいな、おい?」
パンフをながめながら盛り上がる朝日たちとは逆に難しそうな顔をして五月が新月の側へと駆け寄る。
「ちょっとお待ちください。遊園地!? お母様、少々こちらへ――」
そのまま新月とテーブルを少し離れ、ヒソヒソと話を始める。
(お母様……まさか遊園地を貸し切るおつもりでも?)
(それじゃボンが楽しめんじゃろうが、なんのためにど平日の昼間を選んどると思うとんじゃ)
(ちょっとお母様! 男性福祉対応でも無い施設で朝日様が一般の女性に混じっては危ないですわ。何かあったらどうするんですの!?)
(まだわからんのか? じゃからええんじゃ。五月……お前、ボンの資料は頭に入ってるじゃろう。心配ならうちの連中も使え、そうすりゃ頭数に問題はなかろうが。ボンが楽しめる場所に連れて行ってやれえや)
(それは……それはわかりますが……)
(いつもとは言わん、できる時にはしてやれや。ワシらのルールで縛り続けりゃいつか破綻するで)
五月にも心当たりがないわけでは無い。深夜子などはどちらかと言えば新月の考え方に近く、五月と意見が別れることも多々あった。例えば朝日と自身や深夜子とのデート――本来、非番のもの以外に一人側へつけるのをさせなかったのは深夜子であったし、花火大会での神社の件などは最たるものであった。
(五月……少しは頭を柔らこうせえ。このままじゃ朝焼子の娘に先こされるぞ)
(うぐっ……で、でも私は朝日様に信頼されて身辺警護を任され――)
(ふーん……ほれ見てみい。あがいに嬉しそうなボンに今さら連れてかんちゅうんか? 情けないのお……ワシの娘は男の一人も喜ばせれん甲斐性なしじゃったとはのお)
(んなぁ!? わっ、わかりましたわ! やってみせますわよっ! 朝日様を安全に、かつ楽しませて満足させて差し上げますわ!!)
――『武蔵エクストリームランド』
国内最大級のテーマパークの一つ、百万平米超の敷地面積を持ち、乗り物系アトラクションを中心とした九十八種類の豊富なアトラクション数が売りである。
平日だけOL層を中心とした若い女性が多く、客入りは少な目でまばらだ。休日なら必ず待ち時間が発生するアトラクションも今日はどれも待つ必要はない。
最初に朝日が選んだのは通称『バイキング』と呼ばれる海賊船を模した言うなれば超大型ブランコ。20メートルに届かんばかりの高さと急な角度からフリーフォール感を味わえる絶叫系アトラクションだ。
「ちょ……向かいの席にいるのって男の子?」
「めちゃくちゃ美形……なんで……普通に遊びに来てるの?」
「え? マスコットキャラ……とかでも無いよね」
男性福祉対応では無い施設は男性が基本来ないだけであり、男性使用への配慮は当然なされている。まあ、朝日の姿を見た係員たちはみな運用ガイドを再確認する羽目になる――その位のレア度ではあった。その存在に気づいた他の乗客にも動揺が走しりまくっている。
「ねえ……それよりも……あんな可愛い子がこれからいっしょにキャーとかワーとか言うの?」
「「「「「…………ごくり」」」」」
――アトラクション終了後。
「楽しかったねー」
「朝日君。次は何にする?」
「もうちっと激しい奴にしようぜ!」
「私は激しいのは……ちょっと……」
朝日たちはそれぞれの感想を話しながら、次のアトラクションへと移動して行った。
「だ、誰かーーっ、医療班をーーーーっ!!」
係員からヘルプが飛ぶ。
「ひゃーって、うふふ、男の子が、ひゃーって……」
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い」
「声も……表情も……うへえへへはへへへ」
死屍累々、朝日たち以外の乗客は全員が気絶か放心状態となっていた。
当然ながらこの後も朝日たちが乗ったアトラクションはほぼ全てが一旦使用停止に追い込まれる。しかし失神した乗客たちからのクレームは一切なく、むしろ感謝のアンケートが殺到したと言う。
――そんなこんなで朝日たちがめぼしいアトラクションを終えた頃。
ここは目玉と言われるジェットコースター”ヴァルハラ”のコース下で、ベンチなどが設置されているちょっとした休憩所である。遊び疲れた女性たちがジュースなど飲み一息をいれていた。そんな彼女らの上でヴァルハラが通過して、乗客の悲鳴や歓声が響いてくる。
「ん……雨?」
「えー!? 今日は全然晴れてるのに……あっ、ほんと――」
空は晴天、なのにパラパラとベンチや周りに水滴の落ちる音がする。ふと湿ったその手を一人が確認した途端に悲鳴が響く。
「きゃあああああっ!! いやあっ、何これぇーーっ!?」
「ひいっ!? こ、こここここれ、血っ、血ぃーーっ!!」
驚きパニックになりながらも上空を見上げる。そこにはジェットコースターヴァルハラが縦横無尽に駆け巡る姿、それに乗って楽しげにしている朝日たち、それと――。
「美少年の悲鳴で耳が妊娠すりゅうううううう!!」
「あ゛あ゛ー美少年の悲鳴超やっヴェエエエエエエ!!」
朝日らが乗っている座席より、前後方数名の女性客の鼻から流れでる歓喜の血が雨となって注いでいる。フロアレス型ジェットコースターゆえの悲劇であった。
とまあリアクションの豊富さはともかく、朝日にとって一般客といっしょに乗るアトラクションには忘れかけていた賑やかさ、楽しさがあった。五月もその朝日の笑顔には色々と思うところがあったようで、途中からずいぶんと積極的になっていた。奮い立った五月らの警護対応に黒服らのサポートもあって、特に問題もなく無事遊び終えて遊園地を後にする。
以降しばらくの間、武蔵エクストリームランドには奇妙な噂が飛び交い、平日の入場者数が過去最高記録を叩き出すこととなった――。
五月雨家へ戻ってからゆっくりと一晩を過ごして疲れを癒し、三泊四日の五月雨家訪問は終わりを告げる。翌日、新月に蘭子と黒服、メイドたちが集まった屋敷の玄関前で朝日が最後の挨拶をしていた。
深夜子と梅はその間にせっせと車へ荷物を積んでいる。帰り道は送迎でなく、新月から五月に『乗って帰れ』と高級ミニバンの新車が一台用意してあった。無論、税金やメンテなどの維持費も新月持ちの甘々仕様車だ。
今日は白色を基調としたお姫様ドレス姿の新月が、号泣しながら朝日にしがみついている。
「う゛……う゛……う゛え゛え゛え゛え゛ん! 朝日ちゃーん! 帰らないでー、お家にいてー、ここで暮らしましょー、もしくはー五月ちゃんのお婿さんになってーーーっ!」
「お母様ッ! 本当に、本当に恥ずかしいですからこれ以上は――」
五月に引き剥がされブスッと不満げな表情を見せる新月。もちろん嘘泣きである。それでも朝日は再度新月の前に行くと深々と頭を下げた。
「うえっ!? ――あ、朝日ちゃん?」
「あの……改めてですけど、海土路君との件。それから色々と楽しいところに連れて行って貰って嬉しかったです。あと僕は子供だから……あんまり詳しくはわからないですけど……見えない部分でとても良くして貰っているのはなんとなくわかりました――」
きゅっと新月を抱きしめる。
「本当にありがとう――お母さん」
「っ!? ……ボ、ボン?」
「……先のことはすぐに答えは出せそうには無いですけど……深夜子さん、五月さん、梅ちゃんがいなかったら、今僕は笑っていられなかったと思います。だから――しっかり考えますね!」
笑顔を見せながらそう言って、深夜子たちの待つ車へと小走りで去っていく。
新月は目を見開き固まっていたが、少しすると何やら納得したのか微笑みながら軽いため息をつく。そして、朝日たちの乗る車へと笑顔を向け直して手を振る。
「そっかー、ありがとねー朝日ちゃーん。アタシも楽しかったわー。ここをー自分のお家だと思ってーまた遊びに着てねー」
「はい、ありがとうございます! それじゃあ皆さんお元気で」
「「「「「坊ちゃーーーん、また来てくださいねーーーっ!!!」」」」」
朝日たちは新月ら見送りの蘭子に黒服、メイドたち全員と挨拶を交わして帰路に着いた。
「ふう……聡い子じゃな……五月……大魚を逃すなよ――」
「ところで社長」
「ん? なんじゃい」
「この四日間。経推同盟の会合以外、全ての商談アポをキャンセルかつ業務放棄いただきましたので――」
「おい!? ちょっと待てえや。少しくらいボンとの別れの余韻を――おい? ――こら?」
「はっはっは、社長心配ご無用です。余韻にひたる間も無いくらいには仕事が溜まってございます!」
蘭子に引きずられ車の後部座席に乱雑に放り込まれ、その脇は黒服にガッチリ固められる。何やら喚いている新月――悲しそうな瞳で五月雨コーポレーション本社へと運ばれる晴天の昼下がりであった。
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