34 / 100
間章 番外編
閑話 頑張れ!看護師さん(後編)
しおりを挟む
視聴覚検査エリアの惨状を横目に、案内係は不安に駆られながらも、問題の男性確保を優先するため素通りする。
その先で視力検査を終え、採血検査に向かう朝日たちの後ろ姿を見つけた。
「すっ、すみません。神崎様でいらっしゃいますか?」
「はい、そうですけど?」
呼び止められた朝日が振り向く――。
「遅いわね……何かあったのかしら……!! ――はいっ、ナビ本部です」
待機中の案内係が、いまだ連絡がないことに心配を募らせていた矢先、連絡の着信ランプが光った! 呼び出し音が鳴る暇もない速さでインカムを繋ぎ、早口で確認を急ぐ。
「ああ、良かった。それで、例の男性。神崎さんはどうでしたか?」
『それが……とんでもない美少年なんです。それだけでなくて、ほんとヤバいんです。なのでちょっと見てきますね』
「はい? 貴女、見てくる? 一体……何を……言って……」
『だから神崎様って、超可愛いんです。素敵なんです。あっ! ……早くしないと行ってしまわれるじゃないですか。じゃあ、見てきますね』
「いや、だから見てくる見てくるって貴女!? ちょっと、確保、神崎さんの確保を――」
『うへへ。可愛い……可愛いよう……』
あっ、これダメな奴だ。なにかを察してインカムを外し、天を仰ぐ待機中の案内係であった。
それとほぼ時を同じくして、看護師ステーションでは看護十三隊十一番隊隊長『柊明日火』と副隊長の『鳴四場エミリ』がこの惨状に気づき、必死に各ラインの立て直しを指示し始めるところである。
そんな朝日は――看護師さんたちリアクション好きなんだなぁ……。とあえて追究はせず、次の採血検査会場に到着していた。今までと違い採血検査は個室型になっており、部屋は五つ程ある。二番の部屋が空き表示になっており、そこに入ることにした。
「採血か……うーん、注射ってあんまり気がのらないよね」
「うん。だから採血担当はメンタル強くないとできないらしいよ」
「はい?」
朝日の耳にこれまた想像の難しい説明が返ってくる。どういうことかと確認をすると――。
深夜子によると、男性健康診断での採血担当者は嫌われ者の役どころで、男性にとっては注射器を刺すイコール苦痛を与える女性、という扱いらしい。
罵詈雑言を浴びせる者も多く。担当看護師は罵られても宥めすかし、ひたすら気を使わなければならない。実際、この採血担当になって耐えきれず退職する者も珍しい話では無い、とのことだ。
さて、その話しを聞いた。いや、聞いてしまった朝日の頭の中では、採血の担当看護師はとても可哀想な女性のイメージが出来上がってしまうことになった。
「次の方どうぞ」
採血検査では個室対応のため、深夜子は待機室へ、朝日は診察室へと別れる。
「こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」
「あ……はい? ……よ、よろしくお願いします」
さすがはメンタルが必要と言われる採血担当の看護師である。朝日の容姿と愛想のよさに、動揺はするが対応は崩れない。すぐに採血前の問診へとうつる。
「神崎朝日さん……ですね。あまりに素敵な男性でびっくりしました。それで、今日の体調はいかがですか?」
「あっ、あの……僕、採血の注射とか全然平気ですからっ、気にしないでくださいね」
「はい!?」
いきなり採血対象の男性に気を使われる。多分、健康診断採血の歴史始まって以来の事態であろう。危うく思考が停止しかける看護師であったが、見事踏みとどまり問診を進める。
「え……えーと。本日は……採血と言うことですが、こちらの注射器は痛みの少ない最新型です。なので安心して――」
「僕なら、痛くても平気です! 看護師さんは僕たちの為に頑張ってくれてるんですから! 文句とか言ったりしないですから!」
「はへ!?」
お気遣いマックスハートの朝日に容赦なくペースを崩される看護師。こんなすれ違いの会話が続くこと数分。
「――うっ、ううう……それで、それでね……本当はあたし、辛くて……辛くて……」
「ですよね。大変なお仕事ですもんね。でも、こんなに優しい看護師さんに酷いことを言うなんて、信じれないです」
「優しい! 優しいって言ってくれるの!? て、天使?」
いつの間にか美少年の人生相談室に成り変わっていた。あれやこれやと朝日が看護師を慰め、しばらくしてから落ち着いたようである。
「ありがとう! あたし……頑張れる気がしてきた!」
「良かったです。じゃあ、そろそろ採血をお願いしますね」
「あっ、そうだったわ。あたしったら……うふふ」
職務を忘れてしまうとは恥ずかしい。看護師はさっと我に帰り朝日の腕を取って、ゴムチューブを軽く巻き血管を浮きだたせる。そして、注射器を手にして腕の血管に針を向けようとしたその時!
――突如、彼女の脳裏に先ほどまでの光景がフラッシュバックする。
自分の事を心配してくれた。
仕事について励ましてくれた。
愛らしい笑顔を向けてくれた。
何より自分を優しいと言ってくれた。
そんな心優しい美少年に、こんな野蛮な針を刺して苦痛をあたえる?
「えっ? ……あり得ない……そんなの……そんな……」
「ちょっ!? な、なんか注射器が三本に見えるくらいに手が震えてますよ?」
ガクガクと震えながら、真っ青な顔で注射器と朝日の顔を交互に見る看護師……そして。
「いやぁあああっ、こんな子にっ! こんな可愛くて優しい子に採血なんて残酷なマネ、あたしできないっ!!」
「えええー?」
逃げる様に部屋を出て行く採血担当であった。
「うわっ!? あれ、朝日君何かあった?」
驚いた深夜子が付き添いの待機部屋から顔を覗かせている。そして部屋に残されたインカムから、雑音と共に何やら聞こえてくるのであった。
『隊長! さ、採血担当が一名逃げ出しました……』
『なんだとぉ! そ、それでも名誉ある十一番隊の隊員かぁっ!?』
そのあと、医師と看護師が数人かがりでなんとか朝日の採血を終わらせる。そのままその医師たちに囲まれながら、内科検診の会場へと移動となった。
その内科検診会場では、何やらもの凄く一仕事終えた感が漂っていた。あちらこちらから安堵の会話が聞こえてくる。どうやら、朝日はこの内科検診を終えれば、レントゲンなどの機械による検診を残すのみとなっており、もう問題はないであろうという判断である。
それに内科部門は、自身も優秀な内科医師の一人である柊明日火直轄の部隊だ。皆、朝日の美貌を楽しめる程度の自制心は持ちあわせている。
しかし、そんな彼女らの余裕は医師が、聴診器をとって発した一言のあと、崩壊する。
「それでは最後に心音などを聞かせてもらいますね」
「あっ、はい。ちょっと待ってくださいね」
おもむろに上半身の診察衣を脱ぎ始める朝日がそこにいた――。
「み、見えちゃってるううっ! これはあたしが隠さねばぁ! いやっふう!」
「ちょっと、深夜子さん!? なんで抱きついて来るのさ! これじゃ服着れないよ? それに、なんか、みんな困ってるみたいだし……」
「くっ……あのMapsは何故……事態を悪化させているのだ?」
そう呟くのは看護十三隊十一番隊第九席内科部隊所属『最峰川キヤラ』である。彼女は朝日についても充分に把握し、隊長の柊とも相談した結果。もう無事に終わるはずだと認識していた。
しかし事態は一転。担当医師は満面の笑みをたたえ卒倒。歓喜の悲鳴を上げた看護師たちにつられて、別ラインの医師と看護師まで集まり、次々とパニックにおちいる始末。
現在、隊長と副隊長は別のライン復帰に手を取られているはず。ならばここは自分が納めるしかないと考える。この現場で最も上席者たる最峰川は、その責務を果たすべく声を張りあげた。
「皆、落ち着けーーーっ! 我々は名誉ある看護十三隊の十一番隊だぞ! この様なことで己を見失ってどうするっ、看護道の心得を思い出せ!」
『看護道の心得』
男性医療の歴史は、Mapsなどの男性保護業と違い非常に古い。当然、その長い歴史の中で、彼女たちは男性対応や自制心を養う為に色々と研鑽を重ね、淑女たり得る教えを説いた、その四十八ヶ条の心得こそが男性医療に携わる者達の教訓となっている。
無論、医師や看護師たちはそれを暗記し、朝礼などで日々斉唱することによって男性への節度ある対応を戒めているのだ!
最峰川は有象無象に成り果てそうな周りにいるものを一喝。その一節を皆で斉唱し、場を収めることを試みる。
「よぉし、全員!『男子ニ見惚レヌ対処法』を斉唱だ! 私に続けぇ!」
「「「「「応!!」」」」」
「看護道の三十三『男子ニ見惚レヌ対処法』! 看護師よ。禁欲の仮面・恋慕・懸想・オトコの名を冠す者に潔癖・節制――」
「んーと、とにかく。ち、ちく……おっぱい隠して! 朝日君」
「えっ? え……と、こう? かな?」
「「「「「てっ、てっ、手ブラぁあああああっ!?」」」」」
嗚呼、誰が言ったのだろうか……手ブラはヘタな上半身裸よりエロいと。嗚呼、わかる。こんな美少年の手ブラ……嗚呼、無理だ。これは無理だ。絶対にあがらえぬ、全てをなぎ払う圧倒的な破壊がそこにある。言葉で拒絶しようと、心で拒絶しようと、魂がそれを理解しているのだ――最峰川キヤラ、七月某日のブログより抜粋。
そして、会場は一瞬にして壊滅した。そんな中で薄れゆく意識を繋ぎ止め、最後の意地をみせる最峰川がいた。
「タダでは、タダではやられんぞ……それでも隊長なら……隊長なら、きっとなんとかしてくれるハズだ……!!」
もう目も見えない。音もほとんど聞き取れない。それでも震える手で、インカム呼び出しに応答をオンにする。
『どうしたっ!? 何がっ、一体何があった!?』
「た、隊長……そ……その、男性が……美少年が……内科検診時に突然上半身裸に――あふん!」
見事に散りゆく最峰川……そんな彼女の想いは届かず。当日、十一番ルートは健康診断続行が不可能となり閉鎖と相成った。そして復旧には丸一日以上の時間を要したと言う。
その先で視力検査を終え、採血検査に向かう朝日たちの後ろ姿を見つけた。
「すっ、すみません。神崎様でいらっしゃいますか?」
「はい、そうですけど?」
呼び止められた朝日が振り向く――。
「遅いわね……何かあったのかしら……!! ――はいっ、ナビ本部です」
待機中の案内係が、いまだ連絡がないことに心配を募らせていた矢先、連絡の着信ランプが光った! 呼び出し音が鳴る暇もない速さでインカムを繋ぎ、早口で確認を急ぐ。
「ああ、良かった。それで、例の男性。神崎さんはどうでしたか?」
『それが……とんでもない美少年なんです。それだけでなくて、ほんとヤバいんです。なのでちょっと見てきますね』
「はい? 貴女、見てくる? 一体……何を……言って……」
『だから神崎様って、超可愛いんです。素敵なんです。あっ! ……早くしないと行ってしまわれるじゃないですか。じゃあ、見てきますね』
「いや、だから見てくる見てくるって貴女!? ちょっと、確保、神崎さんの確保を――」
『うへへ。可愛い……可愛いよう……』
あっ、これダメな奴だ。なにかを察してインカムを外し、天を仰ぐ待機中の案内係であった。
それとほぼ時を同じくして、看護師ステーションでは看護十三隊十一番隊隊長『柊明日火』と副隊長の『鳴四場エミリ』がこの惨状に気づき、必死に各ラインの立て直しを指示し始めるところである。
そんな朝日は――看護師さんたちリアクション好きなんだなぁ……。とあえて追究はせず、次の採血検査会場に到着していた。今までと違い採血検査は個室型になっており、部屋は五つ程ある。二番の部屋が空き表示になっており、そこに入ることにした。
「採血か……うーん、注射ってあんまり気がのらないよね」
「うん。だから採血担当はメンタル強くないとできないらしいよ」
「はい?」
朝日の耳にこれまた想像の難しい説明が返ってくる。どういうことかと確認をすると――。
深夜子によると、男性健康診断での採血担当者は嫌われ者の役どころで、男性にとっては注射器を刺すイコール苦痛を与える女性、という扱いらしい。
罵詈雑言を浴びせる者も多く。担当看護師は罵られても宥めすかし、ひたすら気を使わなければならない。実際、この採血担当になって耐えきれず退職する者も珍しい話では無い、とのことだ。
さて、その話しを聞いた。いや、聞いてしまった朝日の頭の中では、採血の担当看護師はとても可哀想な女性のイメージが出来上がってしまうことになった。
「次の方どうぞ」
採血検査では個室対応のため、深夜子は待機室へ、朝日は診察室へと別れる。
「こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」
「あ……はい? ……よ、よろしくお願いします」
さすがはメンタルが必要と言われる採血担当の看護師である。朝日の容姿と愛想のよさに、動揺はするが対応は崩れない。すぐに採血前の問診へとうつる。
「神崎朝日さん……ですね。あまりに素敵な男性でびっくりしました。それで、今日の体調はいかがですか?」
「あっ、あの……僕、採血の注射とか全然平気ですからっ、気にしないでくださいね」
「はい!?」
いきなり採血対象の男性に気を使われる。多分、健康診断採血の歴史始まって以来の事態であろう。危うく思考が停止しかける看護師であったが、見事踏みとどまり問診を進める。
「え……えーと。本日は……採血と言うことですが、こちらの注射器は痛みの少ない最新型です。なので安心して――」
「僕なら、痛くても平気です! 看護師さんは僕たちの為に頑張ってくれてるんですから! 文句とか言ったりしないですから!」
「はへ!?」
お気遣いマックスハートの朝日に容赦なくペースを崩される看護師。こんなすれ違いの会話が続くこと数分。
「――うっ、ううう……それで、それでね……本当はあたし、辛くて……辛くて……」
「ですよね。大変なお仕事ですもんね。でも、こんなに優しい看護師さんに酷いことを言うなんて、信じれないです」
「優しい! 優しいって言ってくれるの!? て、天使?」
いつの間にか美少年の人生相談室に成り変わっていた。あれやこれやと朝日が看護師を慰め、しばらくしてから落ち着いたようである。
「ありがとう! あたし……頑張れる気がしてきた!」
「良かったです。じゃあ、そろそろ採血をお願いしますね」
「あっ、そうだったわ。あたしったら……うふふ」
職務を忘れてしまうとは恥ずかしい。看護師はさっと我に帰り朝日の腕を取って、ゴムチューブを軽く巻き血管を浮きだたせる。そして、注射器を手にして腕の血管に針を向けようとしたその時!
――突如、彼女の脳裏に先ほどまでの光景がフラッシュバックする。
自分の事を心配してくれた。
仕事について励ましてくれた。
愛らしい笑顔を向けてくれた。
何より自分を優しいと言ってくれた。
そんな心優しい美少年に、こんな野蛮な針を刺して苦痛をあたえる?
「えっ? ……あり得ない……そんなの……そんな……」
「ちょっ!? な、なんか注射器が三本に見えるくらいに手が震えてますよ?」
ガクガクと震えながら、真っ青な顔で注射器と朝日の顔を交互に見る看護師……そして。
「いやぁあああっ、こんな子にっ! こんな可愛くて優しい子に採血なんて残酷なマネ、あたしできないっ!!」
「えええー?」
逃げる様に部屋を出て行く採血担当であった。
「うわっ!? あれ、朝日君何かあった?」
驚いた深夜子が付き添いの待機部屋から顔を覗かせている。そして部屋に残されたインカムから、雑音と共に何やら聞こえてくるのであった。
『隊長! さ、採血担当が一名逃げ出しました……』
『なんだとぉ! そ、それでも名誉ある十一番隊の隊員かぁっ!?』
そのあと、医師と看護師が数人かがりでなんとか朝日の採血を終わらせる。そのままその医師たちに囲まれながら、内科検診の会場へと移動となった。
その内科検診会場では、何やらもの凄く一仕事終えた感が漂っていた。あちらこちらから安堵の会話が聞こえてくる。どうやら、朝日はこの内科検診を終えれば、レントゲンなどの機械による検診を残すのみとなっており、もう問題はないであろうという判断である。
それに内科部門は、自身も優秀な内科医師の一人である柊明日火直轄の部隊だ。皆、朝日の美貌を楽しめる程度の自制心は持ちあわせている。
しかし、そんな彼女らの余裕は医師が、聴診器をとって発した一言のあと、崩壊する。
「それでは最後に心音などを聞かせてもらいますね」
「あっ、はい。ちょっと待ってくださいね」
おもむろに上半身の診察衣を脱ぎ始める朝日がそこにいた――。
「み、見えちゃってるううっ! これはあたしが隠さねばぁ! いやっふう!」
「ちょっと、深夜子さん!? なんで抱きついて来るのさ! これじゃ服着れないよ? それに、なんか、みんな困ってるみたいだし……」
「くっ……あのMapsは何故……事態を悪化させているのだ?」
そう呟くのは看護十三隊十一番隊第九席内科部隊所属『最峰川キヤラ』である。彼女は朝日についても充分に把握し、隊長の柊とも相談した結果。もう無事に終わるはずだと認識していた。
しかし事態は一転。担当医師は満面の笑みをたたえ卒倒。歓喜の悲鳴を上げた看護師たちにつられて、別ラインの医師と看護師まで集まり、次々とパニックにおちいる始末。
現在、隊長と副隊長は別のライン復帰に手を取られているはず。ならばここは自分が納めるしかないと考える。この現場で最も上席者たる最峰川は、その責務を果たすべく声を張りあげた。
「皆、落ち着けーーーっ! 我々は名誉ある看護十三隊の十一番隊だぞ! この様なことで己を見失ってどうするっ、看護道の心得を思い出せ!」
『看護道の心得』
男性医療の歴史は、Mapsなどの男性保護業と違い非常に古い。当然、その長い歴史の中で、彼女たちは男性対応や自制心を養う為に色々と研鑽を重ね、淑女たり得る教えを説いた、その四十八ヶ条の心得こそが男性医療に携わる者達の教訓となっている。
無論、医師や看護師たちはそれを暗記し、朝礼などで日々斉唱することによって男性への節度ある対応を戒めているのだ!
最峰川は有象無象に成り果てそうな周りにいるものを一喝。その一節を皆で斉唱し、場を収めることを試みる。
「よぉし、全員!『男子ニ見惚レヌ対処法』を斉唱だ! 私に続けぇ!」
「「「「「応!!」」」」」
「看護道の三十三『男子ニ見惚レヌ対処法』! 看護師よ。禁欲の仮面・恋慕・懸想・オトコの名を冠す者に潔癖・節制――」
「んーと、とにかく。ち、ちく……おっぱい隠して! 朝日君」
「えっ? え……と、こう? かな?」
「「「「「てっ、てっ、手ブラぁあああああっ!?」」」」」
嗚呼、誰が言ったのだろうか……手ブラはヘタな上半身裸よりエロいと。嗚呼、わかる。こんな美少年の手ブラ……嗚呼、無理だ。これは無理だ。絶対にあがらえぬ、全てをなぎ払う圧倒的な破壊がそこにある。言葉で拒絶しようと、心で拒絶しようと、魂がそれを理解しているのだ――最峰川キヤラ、七月某日のブログより抜粋。
そして、会場は一瞬にして壊滅した。そんな中で薄れゆく意識を繋ぎ止め、最後の意地をみせる最峰川がいた。
「タダでは、タダではやられんぞ……それでも隊長なら……隊長なら、きっとなんとかしてくれるハズだ……!!」
もう目も見えない。音もほとんど聞き取れない。それでも震える手で、インカム呼び出しに応答をオンにする。
『どうしたっ!? 何がっ、一体何があった!?』
「た、隊長……そ……その、男性が……美少年が……内科検診時に突然上半身裸に――あふん!」
見事に散りゆく最峰川……そんな彼女の想いは届かず。当日、十一番ルートは健康診断続行が不可能となり閉鎖と相成った。そして復旧には丸一日以上の時間を要したと言う。
0
お気に入りに追加
186
あなたにおすすめの小説

捕まり癒やされし異世界
波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。
飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。
異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。
「これ、売れる」と。
自分の中では砂糖多めなお話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる