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その後のルウォー
しおりを挟むタロとふたりで暮らし始めてからそれなりの日々が過ぎたが、最近タロが可愛すぎて仕事にいくのがつらい。
もちろん、タロのためにも金は稼がないといけないので仕事を辞めるつもりは毛頭ないし、タロのおかげで仕事を頑張ろうと前向きにもなれた。
でも、毎朝タロの匂いを吸ってから仕事に行こうとすると、無自覚なんだろうがタロがどこか寂しそうに俺の服を握るのだ。
可愛すぎて朝から俺の股間は大変なことになりそうだし、こんなに可愛いタロを置いて会社なんてどうでもいいものに行こうとしている自分が愚かに思えて、とにかく仕事に行くのがつらい。
チキュウには、寂しいと死んでしまう生き物が多いと本で読んだ。
なんでも、ヒトは孤独に耐えきれず刃物を振り回してしまうこともあるらしい。ヒルドラという項目にそう書かれていた。
タロが寂しさのあまり自傷行為に及んだらまずいので、刃物類は隠しておいた。
それでもとにかくタロが心配で心配で、家を出る前にはつい何度も振り返ってしまう。
タロは俺が家を出て行くまで玄関から動かない。
タロに寂しい思いをさせているのが申し訳なくて、俺は職場についてからすぐさまペット用通販サイトのページを開いた。
購入したのは、ペット用のおしゃべりぬいぐるみだ。
腹の部分を押すと、歌ったりおしゃべりをしてくれる、ペットの寂しさを紛らわすためのおもちゃだ。
タロに言葉は通じないけれど、歌であれば楽しんでくれるに違いない。
さらにはおしゃべりを機能だけでなく、このぬいぐるみには安全機能もついているのだ。例えばタロがどこか高いところに登って落ちそうになれば、それを察知して自動で動きクッションとなってその体を受け止めてくれる。刃物を使用したり何か危険なことをしようものなら、タロに覆いかぶさって止めてくれる機能もある、優れものなのである。
それなりに良い値段はしたが、タロの寂しさの緩和と身の安全には変えられない。
タロにヒルドラをさせるわけにはいかない。
見た目も可愛いぬいぐるみだから気に入ってくれるだろうと思ってタロに差し出したが、タロはそれをじっと見つめてからなぜかぬいぐるみを尻に敷いた。
クッション代わりになるものだからいいんだが、できればこう、ぎゅっと抱きしめて欲しかった。ぬいぐるみを抱えるタロとか可愛さ倍増に決まっている。
ところが、ぬいぐるみが歌いだすと、タロは耳を押さえてそれを部屋の隅へと追いやってしまった。
最新の流行り曲がお気にめさなかったのか。
ためしに童謡に切り替えてみたけど、タロの反応は芳しくなかった。
結局高性能ペット用ぬいぐるみは、部屋の隅で転がっている。
タロのお気に召すおもちゃを選ぶのはなかなか難しい。少ししょげた。ペットの気持ちを完全に理解するには、まだ道は遠いようだ。
今度友人に相談してみよう。
友人からアドバイスをもらった。
相手の気持ちを知るには、まずスキンシップを増やすことだ、とのことだった。
日頃からタロのことを触り倒している自覚はあるが、これ以上構い倒しても問題はないんだろうか。
生き物によっては、あまり構われすぎるとストレスがたまって弱ってしまうものもいる。
本当は一日中タロを触って撫でてできたら抱きたいと思っているのだが、タロに嫌われたら嫌なので我慢しているのだ。
だが相手の気持ちを知るためには、スキンシップが大事というのが友人の言葉だ。
そこで俺は間を取って、タロの匂いを嗅ぐことにした。
触りたおしているわけではないし、匂いを嗅ぐだけならそうストレスにもならないだろう。
そんなわけで俺は、仕事休みの日、一時間ほどタロの匂いを嗅いでみた。めちゃくちゃ良い匂いがして、癒される。可愛い。タロ最高。
タロの腹に顔を埋めて匂いを堪能していたら、突然タロに顔を引き剥がされた。驚いて顔をあげたら、タロがむすっとした顔をしていて俺は固まった。
タロに嫌われた。
触ったらダメだと思って我慢して、代わりに匂いを嗅いでただけなのに嫌われた。
あまりのショックに尻尾も耳も力なく垂れた。
そのまましばらく固まっていると、タロが俺の頭を撫でてきた。
それに俺は安堵の息を吐いた。
良かった嫌われてない。
もしかして言葉なくとも、タロにも俺の落ち込みが伝わったのだろうか。俺が落ち込んでいるから慰めようとしてくれたんだろうか。
やっぱりタロは頭が良い。
ありがとな、タロ。
友人から、ヒト用のおもちゃを譲り受けた。
なんでもヒトの中でもニホンジン専用のおもちゃらしい。
叔父さんがチキュウへヒトの仕入れに行った際に、偶然手に入れたものらしい。
渡されたのは、何が書いてあるんだか分からない、本のようなものだった。本にしては強度が弱すぎるし、書かれているのも文字にしては規則性がない。
これでどうやってニホンジンは遊ぶんだろうか。
投げるにしては柔らかすぎるし、押しても音が鳴ったりもしない。
これがタロの興味を引くようには思えなかったが、タロの生まれ故郷を感じることのできる大切なものだ。
俺はそれを柔らかい布で拭いて、できるだけ汚れなどを落とそうとしたが、下手に力を込めたら壊してしまいそうで震えた。
そんな俺を見て友人は笑っていた。
タロにそれを渡したら、驚いたみたいに目を丸くしていた。それをじっと見つめ、ぺたぺたと触っている。
タロがどうやって遊ぶのか、興味があってじっと待っていると、なぜかタロが泣き始めてそれはもう盛大に慌てた。
まさか怪我でもしたんだろうか。
柔らかいから油断していた。
まさか噛み付くタイプのおもちゃなのか。
タロからそれを奪い取ろうとしたが、なぜかそれを抱きしめて離さない。
タロが俺に向かって何か言ってたけど分からなくて首を傾げたら、そのまま俺の胸に勢いよく飛び込んできた。
タロが何を言っているのかまるで分からなかったし、それの遊び方も検討つかなかったか、タロが嬉しそうに笑ったので、俺も同じくらい嬉しくなった。
少しだけだが、タロの気持ちが分かるようになってきた気がする。
スキンシップを増やしたおかげだろうか。
さらにタロと通じ合えるようになりたくて、タロを抱く頻度も増やしてみた。
タロはいつだって可愛いのだが、俺の下で鳴いてる時が特に可愛い。可愛さの最上級といってもいい。こんなに可愛い生き物は他にいないと断言できるくらいに可愛くてエロい。
何と鳴いてるのか全然分からないけれど、タロの可愛さとエロさは全惑星共通だと思う。
俺が舐めるとタロは細い声で鳴く。
異様に小さい耳を舐めると体をびくりと跳ねさせるところも堪らない。
タロの可愛さのおかげで、不能だった頃が嘘のように俺のオレは毎日元気だ。
むしろ元気がありすぎて、タロのナカに入る時少しキツイくらいだ。
少しくらい元気をなくした方がタロの身体の負担にならないかもしれない。
薬でも飲んで少し抑えようかと考えていた時だ。
まさかのタロが俺のオレに舌を這わせてきた。
拙い動きで俺のオレを舐めるタロに、俺のオレが爆発しそうになった。早漏と思われたくなかったので、強靭な精神力をもって堪えたが危なかった。
タロの可愛さとエロさは惑星を軽々超えていく。
気持ちよくてタロが可愛くてエロくて最高で、今度タロのその姿を写真におさめようと決めた。
ペットの可愛い姿を永久保存したいと思うのは、飼い主にとって当然のことだ。
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