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修道女、これはきっと夢だと思う
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体調が悪いとはいえ、最近寝すぎているので数時間で目が覚めた。
室内が睡眠に適さないほど明るくて、いささか強引に起こされた気もしなくないが。
瞼を開けた瞬間に声を掛けられ、丁寧だが容赦なく上半身を起こされて。
さすがに??と疑問符たっぷりにメイドたちを見ていたが、ユリの「さあ、久々に湯あみを致しましょう」という声にテンションが上がった。
もともとメイラのような市井の人間にとって、湯につかるということは贅沢の象徴のようなものだ。盥で沐浴、あるいは濡れた布巾で身体を拭く程度が一般的で、裕福な家であっても週に数度、いや月に数度といったところだろう。
貴族の湯水のごとき贅沢にはあんなにも腹を立てていたのに、風呂場での文字通り湯水のごとく贅沢に使うお湯は、一度経験したらやめられない。
慣れとは恐ろしいと思う。
広すぎる浴室にたっぷりの水量でたたえられた湯を見ると、水不足に喘ぐ市井の者たちのことを思い出すより先に、うきうきとテンションが上がってしまうのだ。
―――神よ、罪深いわたくしをお許しください。
浴室の前で下着まですべての服を脱がされながら、メイラはこっそり祈った。
―――贅沢はしません。過度な美食も、酒も、宝石もドレスも欲しがりません。ですが湯あみは、これだけは……ああああ!
真摯な祈りだったはずなのに、掛け湯をしてから肩まで浸かったその温度に、いつしか頭の中が快楽物質でいっぱいになる。
「湯加減はいかがですか?」
ニコニコと尋ねてくるシェリーメイ。
腕まくりして石鹸の泡を立てているフラン。
ユリは髪を洗う用のたらいに香油を混ぜていて、どうやら三人のメイド総がかりだ。
ひとりでゆっくりと入りたい。
そう口にする前に、笑顔で洗い場に引き上げられて、人型にくぼみのあるベッドにうつぶせにされた。
フラン! お願いだからそんな丁寧に触らないでほしい。
くすぐったい!! くすぐったいんです!!!
「ひゃあ!」と悲鳴を上げたメイラに、メイドたちはくすくすと笑う。
後宮に居た時は、多少だがプライベートも確保されていたお風呂タイムなのに!
たっぷりなお湯の中で、溶けそうになるほど長湯するのが好きだったのに!!
クリームのようなきめ細かい泡で、頭の天辺からつま先まで磨き上げられていく。
メイドたちがやけに真剣な顔をしていたので、服を濡らしてまで懸命に奉仕してくれるのを拒むわけにもいかなかった。
必要以上に何度も丁寧に洗われて、最期の方はもう勘弁してくださいと悲鳴を上げる元気すらなかった。
身体を仰向けにして、うつぶせに戻り、足を上げ、手を上げ。
もはや言われるがまま、されるがまま。
弱点の腰や背中に触れるときに変な声が出てしまい、慌てて口を塞ごうとしたが、指先まで泡で包まれているので顔が凄いことになってしまった。
ねぇ、どうして皆さん笑っているの? なんだか怖いんですが。
ずいぶん念入りに泡まみれにされた末、ようやくオッケーが出て泡が流され、湯に戻れた。
せっかくなのだからゆっくり長湯を楽しみたいのに、すっかり疲れてしまっていた。
これは体調不良によるものではなく、もみくちゃにされて洗われたせいだ。
恨みがましくメイドたちをチラ見すると、彼女たちはテキパキと忙しそうに動き回っている。
文句を言うのは申し訳ないと思うだけの分別は残っていたので、小さなため息をつくにとどめた。
「ちょ、ちょっと待って!」
しかしその余裕も、美しいレリーフが施された大きな岩のテーブルの上に、白い厚めの布が掛けられるまでだった。
「さあ、長湯はまた今度にいたしましょうね」
「ユリ!」
「さあさあ、こちらへどうぞ」
いやいやと首を振るメイラに、ユリが笑みを深くする。
だから怖いです!! 絶対に何か怒ってるでしょう?!
メイラはびくびくと湯から上がり、促されるままに岩に上がった。
にっこりと微笑むシェリーメイの両手が、オイルでてかてか光っている。
これは、あれだ。
メイラが苦手やなつだ!!
飛び上って逃げようとしたが、時すでに遅し。両腕を残りのメイドたちが白い布に押し付けている。ひどい、あんまりだ! 仮にもメイラは主人のはずなのに、無理やり拘束して……
「メルシェイラさま用にブレンドされた、特注のマッサージオイルだとのことですよ。エルネスト侍従長のチョイスはさすがです」
とろり、としたオイルが背中に垂らされた。
「……ひっ」
「洗い流さなくてもいいタイプですから、しっかり塗り込みますね」
「あっ、だめ! ……ねえ、お願いよ。ねぇ」
「リラックスしてくださいね」
「んあっ、あ、あ……やっ」
「月下香と、なんでしょう。爽やかな果実のような香りも混じっていますね」
「柑橘系ね。レモンではないわ、オレンジ?」
「だめ、だめぇ……シェリーメイ!」
「はい、次は脇腹ですよ」
「やああああっ」
「まあ、メルシェイラさま。この程度でお泣きになってはいけません。ご辛抱ください」
「そうですよ。くすぐったいということは、感覚が鋭いということですから。慣れてくれば天に昇るような心地にしていただけます」
天にも昇るって何? すでにもう息も絶え絶え、気絶したいほどなんですけど!!
いくらメイラが泣き叫び懇願しようとも、メイドたちの手は離れなかった。
腕に痣でもできてしまっているのではないか、そう思う程に強く腕を掴まれ、岩のベッドに押さえつけられている。
「あっ、あ、あ……だめ、ねぇ、もうだめ」
やがてびくびくと全身が痙攣し、逃げようにも身体に力が入らなくなる。
「なんてお可愛らしい」
右側で上腕を押さえていたフランが、もはや抵抗はないと思ったのか、そっとその手を腕の付け根の方に動かしながら言った。
「いやよ……あっ……んぁ、あ」
「もっと美しく可愛らしく仕上げましょうね」
ユリも、反対側の腕を絞るようにして付け根のほうへマッサージしていく。
「ひっ!」
シェリーメイの両手が、腰の上に乗せられた。
じゅぶじゅぶとオイルが擦れる音とともに、下から上へと背骨沿いに押し上げられ。
「ああああっ、らめぇぇぇぇっ」
メイラは締まりのない口で精一杯の意思表示をしながら、そのまま意識を飛ばしてしまった。
室内が睡眠に適さないほど明るくて、いささか強引に起こされた気もしなくないが。
瞼を開けた瞬間に声を掛けられ、丁寧だが容赦なく上半身を起こされて。
さすがに??と疑問符たっぷりにメイドたちを見ていたが、ユリの「さあ、久々に湯あみを致しましょう」という声にテンションが上がった。
もともとメイラのような市井の人間にとって、湯につかるということは贅沢の象徴のようなものだ。盥で沐浴、あるいは濡れた布巾で身体を拭く程度が一般的で、裕福な家であっても週に数度、いや月に数度といったところだろう。
貴族の湯水のごとき贅沢にはあんなにも腹を立てていたのに、風呂場での文字通り湯水のごとく贅沢に使うお湯は、一度経験したらやめられない。
慣れとは恐ろしいと思う。
広すぎる浴室にたっぷりの水量でたたえられた湯を見ると、水不足に喘ぐ市井の者たちのことを思い出すより先に、うきうきとテンションが上がってしまうのだ。
―――神よ、罪深いわたくしをお許しください。
浴室の前で下着まですべての服を脱がされながら、メイラはこっそり祈った。
―――贅沢はしません。過度な美食も、酒も、宝石もドレスも欲しがりません。ですが湯あみは、これだけは……ああああ!
真摯な祈りだったはずなのに、掛け湯をしてから肩まで浸かったその温度に、いつしか頭の中が快楽物質でいっぱいになる。
「湯加減はいかがですか?」
ニコニコと尋ねてくるシェリーメイ。
腕まくりして石鹸の泡を立てているフラン。
ユリは髪を洗う用のたらいに香油を混ぜていて、どうやら三人のメイド総がかりだ。
ひとりでゆっくりと入りたい。
そう口にする前に、笑顔で洗い場に引き上げられて、人型にくぼみのあるベッドにうつぶせにされた。
フラン! お願いだからそんな丁寧に触らないでほしい。
くすぐったい!! くすぐったいんです!!!
「ひゃあ!」と悲鳴を上げたメイラに、メイドたちはくすくすと笑う。
後宮に居た時は、多少だがプライベートも確保されていたお風呂タイムなのに!
たっぷりなお湯の中で、溶けそうになるほど長湯するのが好きだったのに!!
クリームのようなきめ細かい泡で、頭の天辺からつま先まで磨き上げられていく。
メイドたちがやけに真剣な顔をしていたので、服を濡らしてまで懸命に奉仕してくれるのを拒むわけにもいかなかった。
必要以上に何度も丁寧に洗われて、最期の方はもう勘弁してくださいと悲鳴を上げる元気すらなかった。
身体を仰向けにして、うつぶせに戻り、足を上げ、手を上げ。
もはや言われるがまま、されるがまま。
弱点の腰や背中に触れるときに変な声が出てしまい、慌てて口を塞ごうとしたが、指先まで泡で包まれているので顔が凄いことになってしまった。
ねぇ、どうして皆さん笑っているの? なんだか怖いんですが。
ずいぶん念入りに泡まみれにされた末、ようやくオッケーが出て泡が流され、湯に戻れた。
せっかくなのだからゆっくり長湯を楽しみたいのに、すっかり疲れてしまっていた。
これは体調不良によるものではなく、もみくちゃにされて洗われたせいだ。
恨みがましくメイドたちをチラ見すると、彼女たちはテキパキと忙しそうに動き回っている。
文句を言うのは申し訳ないと思うだけの分別は残っていたので、小さなため息をつくにとどめた。
「ちょ、ちょっと待って!」
しかしその余裕も、美しいレリーフが施された大きな岩のテーブルの上に、白い厚めの布が掛けられるまでだった。
「さあ、長湯はまた今度にいたしましょうね」
「ユリ!」
「さあさあ、こちらへどうぞ」
いやいやと首を振るメイラに、ユリが笑みを深くする。
だから怖いです!! 絶対に何か怒ってるでしょう?!
メイラはびくびくと湯から上がり、促されるままに岩に上がった。
にっこりと微笑むシェリーメイの両手が、オイルでてかてか光っている。
これは、あれだ。
メイラが苦手やなつだ!!
飛び上って逃げようとしたが、時すでに遅し。両腕を残りのメイドたちが白い布に押し付けている。ひどい、あんまりだ! 仮にもメイラは主人のはずなのに、無理やり拘束して……
「メルシェイラさま用にブレンドされた、特注のマッサージオイルだとのことですよ。エルネスト侍従長のチョイスはさすがです」
とろり、としたオイルが背中に垂らされた。
「……ひっ」
「洗い流さなくてもいいタイプですから、しっかり塗り込みますね」
「あっ、だめ! ……ねえ、お願いよ。ねぇ」
「リラックスしてくださいね」
「んあっ、あ、あ……やっ」
「月下香と、なんでしょう。爽やかな果実のような香りも混じっていますね」
「柑橘系ね。レモンではないわ、オレンジ?」
「だめ、だめぇ……シェリーメイ!」
「はい、次は脇腹ですよ」
「やああああっ」
「まあ、メルシェイラさま。この程度でお泣きになってはいけません。ご辛抱ください」
「そうですよ。くすぐったいということは、感覚が鋭いということですから。慣れてくれば天に昇るような心地にしていただけます」
天にも昇るって何? すでにもう息も絶え絶え、気絶したいほどなんですけど!!
いくらメイラが泣き叫び懇願しようとも、メイドたちの手は離れなかった。
腕に痣でもできてしまっているのではないか、そう思う程に強く腕を掴まれ、岩のベッドに押さえつけられている。
「あっ、あ、あ……だめ、ねぇ、もうだめ」
やがてびくびくと全身が痙攣し、逃げようにも身体に力が入らなくなる。
「なんてお可愛らしい」
右側で上腕を押さえていたフランが、もはや抵抗はないと思ったのか、そっとその手を腕の付け根の方に動かしながら言った。
「いやよ……あっ……んぁ、あ」
「もっと美しく可愛らしく仕上げましょうね」
ユリも、反対側の腕を絞るようにして付け根のほうへマッサージしていく。
「ひっ!」
シェリーメイの両手が、腰の上に乗せられた。
じゅぶじゅぶとオイルが擦れる音とともに、下から上へと背骨沿いに押し上げられ。
「ああああっ、らめぇぇぇぇっ」
メイラは締まりのない口で精一杯の意思表示をしながら、そのまま意識を飛ばしてしまった。
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