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聖騎士団同士が戦っている
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“深い森”の深淵のキャンプ地。
聖騎士団が駐留して、守っている。
地元のハンターチームは、ここを拠点に森の中に散らばり警戒にあたる。
この地を発端として起きた亜人族の襲撃事件は、各都市に広がりをみせた。
7つの都市を合わせれば1000件近い襲撃事件が短期間に発生した。
襲撃は多くの被害をもたらしたが、ギルドの対応により全体では良く防御したと言える。
今も亜人族からの被害は各都市のギルドに毎日のよう報告されている。
それは日常的なものであり、毎日なんらかの被害を受ける日常に戻ったことになる。
キューブの採掘が開始された。
平原での採掘は協定結果から認められない。
しかし、“深い森”はタシュバードの管轄内なので問題は無い。
キャンプ地の三分の一と道を挟んだ反対側の森が採掘現場になる。
オーラフが陣頭指揮を執っている。
「立坑は、キャンプ地に5ヵ所。そこから道の方向に横穴を広げる」と土木技師。
オーラフたち探査士が地中のキューブの分布状況を図面にしている。
その図面を見ながらの最終の確認だ。
「明日朝から工事の開始だ。今日は早い目に終わるか」とオーラフ。
まだ日暮れまでには時間はあるが、聖騎士団が準備を始めた。
キャンプ地の中央部分に箱車が2台並べられた。
その周りに土木技師たちのテントが張られていく。
少し離れて、聖騎士団のテント。
それを取り囲むようにして幾つものも結界が張られた。
結界は破壊される恐れがあるので、夜には数人ずつが交代で見張りに立つ。
食堂に皆が集まる。
食事の準備が整うまで、少し時間がある。
以前は一日の終わりを迎えるためのひと時だった。
今は襲撃に備える重苦しい時間に代わった。
「採掘なんて”深い森”が相場だが、ここは雰囲気が重いな」とオーラフ。
「2度襲撃を受けているから、どうしても・・・」と土木技師。
話をしている2人の横を、背の高い男が歩いて行く。
一枚布を羽織っている。
魔族だ。
だが彼の存在は誰にも意識されない。
目に映らないのではない。
彼の姿が、意識されないのだ。
違和感が疎外されている。
彼は小さく何かをつぶやきながら、周りにいる技師や聖騎士に手を向けて行く。
調理師や席で居眠りをしているギルド職員。
1人1人だ。
その男がキャンプ地を去ると、入れ替わるようにして10匹程のライフィスが森の中から姿を現した。
「ライフィスだ」誰かが叫んだ。
オーラフが声のした方向を見た。
亜人族で溢れている。
怒声が響き渡り、殺し合いが始まった。
オーラフの傍にいた亜人が剣で切りかかってきた。
かろうじて避けたが、地面に引き倒された。
右腕にライフィスが噛みついていた。
突然、強烈な痛みを感じた。
腕が焼けているような痛みだ。
それでも無理やり体を起こす。
ズシンとした衝撃を背中に感じた。
息ができない、意識が朦朧とする。
自分の胸から剣の先が見えている。
刺されたのか…。
剣先から血が溢れた。
闇が訪れ、感覚が消えた。
***
最初のハンターチームが、キャンプ地に戻って来た。
キャンプ地で戦闘が起きていることは、探知でわかっていた。
森の中から飛び出したが、愕然とした。
聖騎士団同士が戦っている。
それだけではなく、逃げまどう土木技師たちを切り殺している。
そこにライフィスが混じっている。
聖騎士団に噛みつき、何人もが引き倒されている。
手槍を持ったハンターが体当たりしながら、ライフィスの顔面を突き刺した。
その背後に聖騎士が飛び掛かった。
鞭が伸びて、その聖騎士の剣を持つ手を弾く。
手が砕けて、剣が吹っ飛んだ。
超音速で振られた鞭は、次々と周辺の聖騎士を倒して行く。
鞭が当たった衝撃で跳ね飛ばされ地面に倒れる。
鎧には裂け目ができていた。
2番目のハンターチームが戻った頃には、生き残っているものは殆どいなかった。
鞭で跳ね飛ばされ気を失っていたものが数名のみ生きていた。
最初のハンターチームは、ライフィスを倒す隙をつかれて聖騎士に殺されていた。
生き残った2人の聖騎士の手と足には噛みついて離れないライフィスがいる。
剣を脳に突き刺して殺してから、顎を砕いて外した。
足を噛まれた聖騎士は出血が激しい。
おそらく助からない。
100名以上いた聖騎士団が、数名を除いて全滅した。
技師らには生存者はいなかった。
キャンプ地の周辺を探知したハンターの一人が言った。
「亜人族だ。数が不明な程やってくる」
「平原からこちらに向かって来る」
箱車にカクコーをつないで逃げる時間は無さそうだ。
歩ける者に肩を貸して、すぐにこの場を離れる。
足を噛まれた聖騎士は、連れては行けない。
生きたままライフィスのエサにはしたくない。
ハンターの一人が、彼の心臓にナイフを突き刺した。
聖騎士団が駐留して、守っている。
地元のハンターチームは、ここを拠点に森の中に散らばり警戒にあたる。
この地を発端として起きた亜人族の襲撃事件は、各都市に広がりをみせた。
7つの都市を合わせれば1000件近い襲撃事件が短期間に発生した。
襲撃は多くの被害をもたらしたが、ギルドの対応により全体では良く防御したと言える。
今も亜人族からの被害は各都市のギルドに毎日のよう報告されている。
それは日常的なものであり、毎日なんらかの被害を受ける日常に戻ったことになる。
キューブの採掘が開始された。
平原での採掘は協定結果から認められない。
しかし、“深い森”はタシュバードの管轄内なので問題は無い。
キャンプ地の三分の一と道を挟んだ反対側の森が採掘現場になる。
オーラフが陣頭指揮を執っている。
「立坑は、キャンプ地に5ヵ所。そこから道の方向に横穴を広げる」と土木技師。
オーラフたち探査士が地中のキューブの分布状況を図面にしている。
その図面を見ながらの最終の確認だ。
「明日朝から工事の開始だ。今日は早い目に終わるか」とオーラフ。
まだ日暮れまでには時間はあるが、聖騎士団が準備を始めた。
キャンプ地の中央部分に箱車が2台並べられた。
その周りに土木技師たちのテントが張られていく。
少し離れて、聖騎士団のテント。
それを取り囲むようにして幾つものも結界が張られた。
結界は破壊される恐れがあるので、夜には数人ずつが交代で見張りに立つ。
食堂に皆が集まる。
食事の準備が整うまで、少し時間がある。
以前は一日の終わりを迎えるためのひと時だった。
今は襲撃に備える重苦しい時間に代わった。
「採掘なんて”深い森”が相場だが、ここは雰囲気が重いな」とオーラフ。
「2度襲撃を受けているから、どうしても・・・」と土木技師。
話をしている2人の横を、背の高い男が歩いて行く。
一枚布を羽織っている。
魔族だ。
だが彼の存在は誰にも意識されない。
目に映らないのではない。
彼の姿が、意識されないのだ。
違和感が疎外されている。
彼は小さく何かをつぶやきながら、周りにいる技師や聖騎士に手を向けて行く。
調理師や席で居眠りをしているギルド職員。
1人1人だ。
その男がキャンプ地を去ると、入れ替わるようにして10匹程のライフィスが森の中から姿を現した。
「ライフィスだ」誰かが叫んだ。
オーラフが声のした方向を見た。
亜人族で溢れている。
怒声が響き渡り、殺し合いが始まった。
オーラフの傍にいた亜人が剣で切りかかってきた。
かろうじて避けたが、地面に引き倒された。
右腕にライフィスが噛みついていた。
突然、強烈な痛みを感じた。
腕が焼けているような痛みだ。
それでも無理やり体を起こす。
ズシンとした衝撃を背中に感じた。
息ができない、意識が朦朧とする。
自分の胸から剣の先が見えている。
刺されたのか…。
剣先から血が溢れた。
闇が訪れ、感覚が消えた。
***
最初のハンターチームが、キャンプ地に戻って来た。
キャンプ地で戦闘が起きていることは、探知でわかっていた。
森の中から飛び出したが、愕然とした。
聖騎士団同士が戦っている。
それだけではなく、逃げまどう土木技師たちを切り殺している。
そこにライフィスが混じっている。
聖騎士団に噛みつき、何人もが引き倒されている。
手槍を持ったハンターが体当たりしながら、ライフィスの顔面を突き刺した。
その背後に聖騎士が飛び掛かった。
鞭が伸びて、その聖騎士の剣を持つ手を弾く。
手が砕けて、剣が吹っ飛んだ。
超音速で振られた鞭は、次々と周辺の聖騎士を倒して行く。
鞭が当たった衝撃で跳ね飛ばされ地面に倒れる。
鎧には裂け目ができていた。
2番目のハンターチームが戻った頃には、生き残っているものは殆どいなかった。
鞭で跳ね飛ばされ気を失っていたものが数名のみ生きていた。
最初のハンターチームは、ライフィスを倒す隙をつかれて聖騎士に殺されていた。
生き残った2人の聖騎士の手と足には噛みついて離れないライフィスがいる。
剣を脳に突き刺して殺してから、顎を砕いて外した。
足を噛まれた聖騎士は出血が激しい。
おそらく助からない。
100名以上いた聖騎士団が、数名を除いて全滅した。
技師らには生存者はいなかった。
キャンプ地の周辺を探知したハンターの一人が言った。
「亜人族だ。数が不明な程やってくる」
「平原からこちらに向かって来る」
箱車にカクコーをつないで逃げる時間は無さそうだ。
歩ける者に肩を貸して、すぐにこの場を離れる。
足を噛まれた聖騎士は、連れては行けない。
生きたままライフィスのエサにはしたくない。
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