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魔族発見

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準備を整えて、キャンプ地に戻った。

騒がしい。
“遠見”で監視している聖騎士が多数の魔獣を発見した。
姿形からするとライフィスだ。
内陸部の魔獣だったのか、どうりでヤバいはずだ。

「ライフィスは、亜人族が狩りに使役する魔獣だ。攻めてくるぞ」とエルネス。

聖騎士にざっと説明する。

ライフィスは人よりはひと回り小さい、4つ足だ。
体の割に口が大きく、牙が乱雑に飛び出している。

通常の攻撃は効かない、毛が威力を減衰させる。
おそらく“飛竜”と同じだろう。
だから切っても倒せないし、そのまま噛みついてそして相手にぶら下がる。
顔が唯一の弱点になる。

今日にもハンターチームが到着するからここは後で奪還すれば良いと言ったが、聖騎士は同意しない。

しかたが無い、一緒に戦うしかなさそうだ。
作戦を伝える。
それぞれが配置についた。

“遠見”で監視していたが、もうそれも必要ない。
亜人族があの通路を使って歩いてくる。100、200、300?
ライフィスを従えている、100匹くらいか。

先頭があと数十メートルに迫った時、俺は亜空間を使って平原にでた。

加速して列の真ん中あたりに来た。
ジャンプ、空中で亜空間を解除。
下を歩いている、亜人とライフィスに爆縮。

ヤツらが一瞬揺れる。

亜空間発動。
一塊になったそれは空間に放出された。
骨や牙の欠片は周辺の亜人を貫通する。

爆風が前後の数十名を吹き飛ばした。
傷だらけの亜人族が平原に転がり、血が地面に吸収された。

地面が僅かに盛り上がる。

地面から、凄い数の触手が伸びた。
血の臭いのするものに喰らいつく、血が飛び散る。
血を浴びたものはその部分を噛みちぎられていく。

周りのライフィスが触手に噛みつきぶら下がる。
重さで触手が倒れる。
別の触手がライフィスを一斉に攻撃する。
触手に噛みついているライフィスの顔を食い破る。

前後を分断できたので、通路を走って内陸部に向かう。
前方に爆縮の被害を免れたヤツらがいる。

亜空間解除。

突然現れた俺に驚くが、既に数人の亜人の頭を種で吹き飛ばした後だ。
ラッフィナイフを投げて、亜空間発動。

ナイフは縦に並んだ亜人の上半身を吹き飛ばしてから、後ろのヤツの胸に刺さって止まった。
そいつらをすり抜けて、加速しながらジャンプ。
空中で亜空間を解除。

下を歩いているヤツらに爆縮。

***

エルネスは矢を構えている。
爆発音が轟き、亜人族が振り向く。

平原の入り口に立って、矢を放った。
一本の矢が数人を貫いた。
亜人たちが地面に倒れる。

放たれた次の矢は、亜人の上半身を吹き飛ばした。
肉片と血は後ろのヤツらに降り注ぎ、地面にも落ちた。

地面から、数十本の触手が伸びた。
倒れた亜人族と溢れた内蔵に喰らいつく。

次の矢がまた数人を貫いた。
触手の数が増える。

後方の亜人族がライフィスを放った。

命令されたのだろう、触手には見向きもせず、エルネスを目指す。
矢を連射し、頭や胸を打ち抜き倒していく。
新しい矢じりは有効だ。

しかし、数が多い。
エルネスに迫った。

そして穴に落ちた。

穴に火炎弾を投げ込み、穴の中を丸焼きにする。
そのままエルネスはキャンプ地に入る。

キャンプ地の入り口付近には聖騎士が陣形を取っていた。

穴を避けた何十匹ものライフィスが茂みから飛び込んでくる。
聖騎士は盾で防ぎながら剣を口から喉に突き刺す。
手慣れている。

“飛竜”がいるので炎属性攻撃のできるものも残っているらしい、何匹かを切り裂いた。

エルネスが攻撃を躱しながら矢で倒していく、定番の戦法だ。
今は跳躍転換も加わったので余裕だが、切りが無い。

「撤退」とエルネスが聖騎士に指示した。

撤退を援護するように、ジーヌが駆け抜けながらマリタの作った炎の刃で切りつける。
炎が薄っすらと刀身を包んでいる。

無理そうならリリアナにまかせるはずだったが、ライフィスの首を次々とはねていく。
ライフィスはジーヌに襲いかかるが、ジーヌは気にとめず切り倒す。
ライフィスも避けることをしないので、バタバタと倒されていく。

「ジーヌ、戻って」とリリアナ。

リリアナはキャンプ地の奥で、ギルド職員と調理人を結界で保護している。
ジーヌが戻って、全員が結界の中に入った。

リリアナは、結界の外で牙をむくライフィスの前に立った。
空間に何かを書いて行く。
突然、前にいたライフィスが後ろに逃げようとするが、動きが鈍い。

それは波のようにライフィスの群れを覆っていく。

逃げようとするライフィスの動きは鈍くもがいている。
やがて全てのライフィスが動きを止めた。

リリアナの空間変性スキルの中の空間粘化だ。

タトゥを入れてから、スキルを術式で書き換えられるようになった。
空間粘化は、空間に粘性を与えてそこにいるものの動きを取れなくする。

呼吸もできないのでしばらくすれば全滅する。

***

爆縮で後続を断った俺は、亜空間のまま内陸部に侵入した。
亜人族はうじゃうじゃいるが、キャンプ地に向かおうとするヤツはいない。

視線を感じた。
10時の方向に一枚布を羽織った背の高い男がいた。
これが魔族か、独特の雰囲気だ。

亜空間は見えないだろうが、何かで気配を感じるのかも知れない。
探るようにこちらを見ている。

視線があった。

もうこれ以上ここにいる理由は無い。
そのまま加速してキャンプ地へ戻る。

途中、死骸の半分は消えていた。
無数の触手はまだ貪っている。
満腹にはならないのか?こいつら何匹いるんだ?

頭を噛みとられたライフィスの中に触手が伸びている。
内部から皮を食い破って、触手が現れた。

前方で、エルネスが跳躍転換を使っていた。
何をしている?
と思ったら、触手の周りの拡張探知をしていたそうだ。

2人して、キャンプ地に戻った。

“遠見”で内陸部の様子を伺っている聖騎士に聞くと、向こうもこちらを伺っているらしい。
後続がないところをみると、今のところは防衛線が築けたようだ。

魔族は確認した。
依頼は達成だ。

ギルド職員を通してルトラに連絡した。
何処まで話していいのかわからなかったので、「内陸部で目的のものは発見した」と連絡してもらったらそれで通じた。

聖騎士は、何人かが少し怪我をした程度だ。
治癒を施し、毒消しを飲ませた。

それから、しばらくしてハンターチームが到着した。
第1弾、それだけで20チームだ。

キノンのチームもいる。

全てのハンターチームに集まってもらい、状況を説明した。
特に今日の戦いについて。
どう戦うかはハンターなら自分で判断する。
判断に必要な情報をできるだけ提供することが俺たちの役目だ。

それにキノンを通して、カミロの伝言を聞いた。
第3弾では、ハレヘレが参戦する。
魔族もこの深淵で膠着すれば多少は考えるだろう。

それに神殿はまだ破壊されたわけじゃない。
まだお互いに引き返せるはずだ。

俺たちは魔族を確認したら速やかに戻るように言われている。
だから、これから戻る。

「これから?すぐに暗くなるわ」とキノン。
「途中の何処かでキャンプするから大丈夫」と俺。

そこが魔獣だらけの“深い森”であっても、俺たちはまったりする。


***

第1部完、次回から第2部。
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