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チームで“深い森”へ

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エルネスとジーヌが卒業してから、チームに加わった。

チーム名は無い。
ギルドからチーム名を訊ねられた時に付けてもらうのが一種の儀式だ。

ジーヌは薬師になった。
フークモバが運営する薬局の薬草採取の委託を受けている。

リリアナは、マリタに弟子入りをして、術式を学んでいる。
開発とは実践というマリタの指導により、そのままチームメンバーだ。

「採取する薬草の場所は、リティナの南方向の高原地帯になるわね」とジーヌ。
机に広げた地図で場所を示した。

“深い森”というわけだ。

俺たちの世界とは要するにタラコバ大陸だ。
大陸の外縁部にはロンメイの湧き出る場所が7か所あり、そこに7つの都市がある。
都市の周りには町や村がある。
内陸部は広大だが、俺たちはロンメイが魔気を浄化するわずかな場所に住んでいる。

“深い森”は内陸部との境界域だ。
その先は古文書に書かれた世界になる。

ハンターと名乗る以上は、“深い森”に入ることに躊躇は無い。
だが今回はジーヌとリリアナが一緒だからちょっと考えてしまう。

「今回の採取依頼はチームとして受けるから」とジーヌ。
「リリアナも良い?」と俺。
「もちろんよ、どうして?」とリリアナ。

チームである以上は、職業は理由にならない。
ハンターじゃないから?意味無いな。

「別に、流れで聞いてみた」
「ダネルは、リリアナの心配をしたのよ。私の心配はしないけどね」とジーヌ。

もう何を言っても駄目そうなので、“壁”で依頼を確認する。

依頼:しずく草 採取 (薬師)
場所:リティナス高原 群生地*
概要:境界域内の高原 
達成:指定量 期間:半年 費用:100G/指定量 買取価格:50G/瓶
違約金:経費清算 闘技等級:C** チーム:指定なし 
注記: *薬局管理地 **護衛可  ギルド案件

依頼カウンターへ移動。
俺たちは、ジーヌを除くと全員C級なので護衛扱いだ。

「ジーヌの許可証は確認しました。ジーヌが依頼を受けて、チームで対応、護衛を兼ねる」
「今回の指定量は、こちらの保存瓶になります。最大4本までの採取許可です」

ジーヌが4本受け取って、カバンにしまった。

「ギルド案件ですので、第六都市フークモバ-第七都市リティナ間の”通路”を利用できますが、予約はどうします?」

2時間後に予約の空きがある。
それで予約した。

一旦マリタの家に移動。
2階の部屋、チームの倉庫に入る。
部屋の両側に棚があって、右側には薬や日常的な道具、左側には武器や防具が置いてある。

この部屋全体を亜空間に配置保存しているので現地でも利用できるが、必要なものは各自所持が鉄則なので装備を整える。

全員が着替える。
ジーヌとリリアナはとなりのリリアナの部屋で着替え兼持っていくものを選んでいる。
俺とエルネスは、反対側にある俺の部屋でさっさと済ませた。

服とマントは全員がお揃い。
服には力を反射する術式が付与されている。
マントは、現地までの移動時に着用している。

俺はベルトにラッフィナイフのホルダーとバグの実の種が入ったホルダーを装着。
種が詰まった小樽をひとつカバンに収納した。
ブーツには、俺を除いて、増幅の術式が刻印してある。

皆の肩掛けカバンは邪魔になるということで、服に縫い付けた術式に収納できる。
これはマリタ作。
違いは良く判らないが、リリアナによると空間を空間に入れて更につなげて利用するというのは、もう理解不可能な領域らしい。
種のホルダーはカバンの中の樽と繋がっていて種が補充されることや、エルネスの矢筒とカバンの矢を切り替えできることを言っているようだ。

全員の準備が整ったので、中央広場に向かう。

途中、マリタの店に寄ってギルドが作成した行動計画書の写しを渡した。
チームは、大型魔獣でも倒せるくらいにはなっているが、“深い森”に入るということで、十分に気を付けるようにと何度も言われた。

中央広場。
三方を“壁”に囲まれた一角がある。

“通路”だ。

順番を待って、中に入り“壁”に手を触れる。
リングが光った。

「ダネル、リティナで良いですか?」
「いいよ」
“壁”に転送先が表示された。
「そのまま前に進んで」

“壁”の言うとおり、前に。
通り抜けると、リティナの中央広場だった。

3人を待って、食堂街に向かう。
この地方の料理という店に入った。
沢山並んだ小さな器に異なる料理が盛られている。
魚の料理がメインだ。

「ジーヌ、遮蔽のレベルは上がった?」とエルネス。
遮蔽は俺が卒業した後にジーヌが所得したスキルだ。
結界は魔獣の侵入を防ぐものに対して、遮蔽は外部と内部の通過を完全に阻止する。

「上がった、レベル9。後少しで最大」とジーヌ。
「張ったまま移動できるわよ」とリリアナ。

完全防御だが移動に難点があったので、丈夫な結界という扱いだった。

「いつ訓練したの?」と俺。
「毎日よ。部屋にいる間は遮蔽してる。今でも」とジーヌ。
「どんな?」とエルネス。
「部屋にあるものに沿って形を変えるの。難しいけどね」とジーヌ。
エルネスが珍しく感心して「それ良いな、俺も試してみよう」と言う。

変なスキルだと面白いかも、エルネスに期待する。

少しリティナの街をウロウロしてから、宿に到着して、部屋割りが済んで一休み。

ノックの音。
ジーヌとリリアナだった。
どうやら部屋のシャワーに不満らしい。
で?野天風呂を使わせろと。

良いことを思いついたので試してみる。

俺の部屋は2階の端で、窓の下は宿の庭になっている。
ベッドの空間を切り取る。
窓際で亜空間を呼びだした。
野天風呂は窓の外だ。
ベッドの位置にベッドを配置した。

「そのまま歩いて外に出て、お風呂を使うと良いよ」
「空中でお風呂に入るの?」とリリアナ。
「亜空間だから外から見えないよ」
「ダネルからは、見えるじゃない」とジーヌ。

覗きたいなら、何時でも何処でも覗けると言ったら大問題になる。

「見ないから早く入って」
と言ってそのままベッドに寝転がった。
「わかったわ」と言って2人は外に歩いていった。

凄く緊張した。
別に外で2人が裸だからというわけじゃない。
俺が寝落ちしたら、2人は庭に落ちることに気づいたからだ。

それなら、“深い森”の巨大魔獣を挑発して回る方が余程ましだ。

「見て、星が綺麗」と声が聞こえる。
星は毎日見てるだろ?
できるだけ早く戻って下さい。

長い時間の後、ようやく2人が戻ってきた。
見晴らし最高で、空中風呂は気持ち良かったそうだ。

でも、もう2度としません。
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