クズな王子と麗しの聖女

もちごめ

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ごちん!!

 「ぶっっ!!!」

顔に受けた強い衝撃に一瞬、目の前に星がチラつき、腰を抱き寄せていた拘束が少し緩んだ。
その隙に少女はスルリと逃げ、俺との間に十分な距離を取ってから振り返り、少々息を乱しながら警戒心を剥き出しにしている。

「っつ!! おい、お前! なにするんだ!」

鼻を押さえ思わず涙目になりながら少女を睨む。

「『なにするんだ』 は、こちらのセリフですわ。神が見ていらっしゃる前でなにをなさるんですか。頭突きは神からの天罰です」

あんなに真っ赤になっていた割には、なかなかに強気に言い放つ姿はカッコイイじゃないか、と思うが、、、

やっぱりなんてやつだ!!とんだじゃじゃ馬娘じゃないか!!
王子であるこの俺に頭突きをするなんて!!
そもそもここまで自分の思い通りににならない女がいるなんて!!

「どこのどなたか知りませんが、人を呼びますわよ」 困りますでしょう?さっさとこの場から離れたらどうです? と、アイスブルーの瞳に俺への蔑みの色を乗せて見下してくる。

……。
くそう……。
このままじゃやられっぱなしだ。正直それは面白くない。
何より、王子である俺が少女とは言え女の目の前で鼻血を流すなんてカッコ悪すぎる。
それは俺的にまずい。な、なんとかしなければ…! よく考えるんだ俺。

鼻を押さえたまま少し考えれば、すぐにいい案が浮かんだ。
は!! そうだ、相手は筋金入りの箱入りの少女なんだ。そこを利用すればいいはずだ。

なんだ、簡単じゃないか、クククッ。いい手を思いついたぞ。そうと決まれば実行するのみ。
ニヤリと笑う顔も、スリルを求めるマダムたちからは大絶賛だ。

「おい、大丈夫か!?首のところに大きな蜘蛛がついてるぞ!!」

やや大げさに驚きを交え首のあたりを指でトントンと指した。
大きな嘘っぱちで驚かすことにした。ちょっとした意趣返しのつもりだ。

「!!? えっ!! うそ、やだ!!! きゃあ!!! やだ、取って!!!」

思った通り、見事にびっくりして大きく驚き、涙目でかわいらしく慌てふためく少女に、「あれ、ちょっとやり過ぎたか、ちょっと可哀想かな」とも思ったが、作戦としては「上手くいった」と笑みを浮かた。
もちろん、大事なのはここからだ。

「仕方ない、とってやる」とゆっくりと近づいた。
そして取ってやるふりをして手を伸ばし、少女の細い手首をつかんで勢いよく引き寄せた。
そのまま急に引っ張られたことでバランスを崩した少女の首の後ろを掴み、驚きで目を見開いている隙を狙い、
その勢いのまま次なる作戦へと動いた。
少女のみずみずしい唇に自分のそれをぴったりと合わせた。

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