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バーン!! と勢いよく開いた、この王宮で一番重厚な扉。
「どうされました!?」
「何かありましたか!?」
「お怪我はないですか!?」
甲冑に身を包んだ大柄な男たちが、この部屋へとなだれ込んでくる。
「きゃあああああ!!」
別の意味でまた奇声をあげることとなった。
「ごふっ!!!」
「がはっ!!」
「へぶっ!!」
突然の侵入者に驚く中、旦那であるランスは一瞬で私にシーツを巻き付けた。
その早業にもポカーンとするが、同時に一瞬で壁に吹き飛んでいった侵入者達にもポカンとした表情を向けてしまった。「えっ、あの人たち大丈夫?」なんて本気で心配をしてしまった。
吹き飛ばされた人たちの恰好をよくよく見てみれば、いつも国王夫妻の寝室を警護する騎士たちだと理解した。
彼らはきっと、私が発した奇声に、”国王夫妻になにか危険が及んだのでは”と、思い駆けつけてくれたのだろう。
だとすれば非常に申し訳ない。い、生きてるよね……?
しかし夫妻の聖域に許可なく土足で踏み入った者たちを、この絶倫王は許しはしなかった。
「どうやらここへは死にに来たらしいな。どれ、俺自らが手を下してやろうではないか」
壁に掛けてあった剣を手に取り、一歩一歩と哀れな子羊たちに近づいていく。
その背からは、見えないはずなのにどす黒いオーラを纏っている気がする。
「さあ、まず誰から来るんだ? お前か?」
「いやいやいやいや、無理です、足が竦んで動けません!」
「じゃあ、おまえか?」
「いえいえいえいえい、まだ死にたくありません!」
「面倒だ、この際まとめて始末するか」
『「ここここの人です!!」』
「お、おまえら裏切ったな!! いや、違います、俺じゃないです!! 俺は童貞のまま死ぬなんて嫌だ!! どうか御慈悲を!!」
この国一番の屈強な騎士たちのはずなのに、涙目で顔がぐちゃぐちゃになっている。
悲鳴をあげながら『命ばかりは!!』を泣き叫んでいる姿はまるで小動物のようで。
そんな小動物をいじめているような図は、とてもかわいそうなので今すぐに許してやって。
「シオリの裸を見ようとしたのは万死に値する。やはりまとめて始末するとしよう」
「ひいいいいい!! 見てません、見てません本当です!! だから『許してください!!』」
はぁ……。あなたは子供ですか……。それとも、苛めっ子ですか。今すぐにやめなさい。
絶倫王は意外にも心がものすごく狭かったらしい……。
『国王夫妻の寝室には、例え王国滅亡の危機に扮していたとしても決して入るべからず』
絶対に破ってはいけない掟がまた一つ出来ました。
こうしてこの王国の平和は今日も守られているのでした。
「どうされました!?」
「何かありましたか!?」
「お怪我はないですか!?」
甲冑に身を包んだ大柄な男たちが、この部屋へとなだれ込んでくる。
「きゃあああああ!!」
別の意味でまた奇声をあげることとなった。
「ごふっ!!!」
「がはっ!!」
「へぶっ!!」
突然の侵入者に驚く中、旦那であるランスは一瞬で私にシーツを巻き付けた。
その早業にもポカーンとするが、同時に一瞬で壁に吹き飛んでいった侵入者達にもポカンとした表情を向けてしまった。「えっ、あの人たち大丈夫?」なんて本気で心配をしてしまった。
吹き飛ばされた人たちの恰好をよくよく見てみれば、いつも国王夫妻の寝室を警護する騎士たちだと理解した。
彼らはきっと、私が発した奇声に、”国王夫妻になにか危険が及んだのでは”と、思い駆けつけてくれたのだろう。
だとすれば非常に申し訳ない。い、生きてるよね……?
しかし夫妻の聖域に許可なく土足で踏み入った者たちを、この絶倫王は許しはしなかった。
「どうやらここへは死にに来たらしいな。どれ、俺自らが手を下してやろうではないか」
壁に掛けてあった剣を手に取り、一歩一歩と哀れな子羊たちに近づいていく。
その背からは、見えないはずなのにどす黒いオーラを纏っている気がする。
「さあ、まず誰から来るんだ? お前か?」
「いやいやいやいや、無理です、足が竦んで動けません!」
「じゃあ、おまえか?」
「いえいえいえいえい、まだ死にたくありません!」
「面倒だ、この際まとめて始末するか」
『「ここここの人です!!」』
「お、おまえら裏切ったな!! いや、違います、俺じゃないです!! 俺は童貞のまま死ぬなんて嫌だ!! どうか御慈悲を!!」
この国一番の屈強な騎士たちのはずなのに、涙目で顔がぐちゃぐちゃになっている。
悲鳴をあげながら『命ばかりは!!』を泣き叫んでいる姿はまるで小動物のようで。
そんな小動物をいじめているような図は、とてもかわいそうなので今すぐに許してやって。
「シオリの裸を見ようとしたのは万死に値する。やはりまとめて始末するとしよう」
「ひいいいいい!! 見てません、見てません本当です!! だから『許してください!!』」
はぁ……。あなたは子供ですか……。それとも、苛めっ子ですか。今すぐにやめなさい。
絶倫王は意外にも心がものすごく狭かったらしい……。
『国王夫妻の寝室には、例え王国滅亡の危機に扮していたとしても決して入るべからず』
絶対に破ってはいけない掟がまた一つ出来ました。
こうしてこの王国の平和は今日も守られているのでした。
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