上 下
7 / 7

しおりを挟む
***

「ねえ、今日はそろそろお終いに……」

「何言ってるんだ。まだ二回しかしていないじゃないか」

 二回もしたら十分でしょ?!  

 二人も子供がいる、いい歳した親が、毎日毎日どんだけ盛っていんですか!?


 リンゴーンと鐘の音が聞こえる。
 普段鳴ることのない王宮の天辺に付いている大きな鐘が鳴り響いた。


「あっ、」
「新しい年を迎えたな……」

 ちょっと、つながったままそんな感慨深げに言わないでくれないかな。
 股にアレを挟めたまま新しい年を迎えることになった私って……。



「シオリ、またこの一年俺の隣で笑っていてくれ。妻であり子供たちの母でもある君をいつも愛している」

 思わず遠い目をしていた”私に愛しくて仕方ない”って顔を惜しげもなく向けてくるのだから、私もなんだかつい素直な気持ちを伝えてしまった。


「もう。今までもこれからも私はずっと幸せでいつも笑顔でいさせてもらってるわ。素敵な宝物も私に与えてくれてありがとう。ランス……初めて会った時からあなたを愛してる」

 私はあなたに会うためにこの世界に来たんだと思う。
 それがきっと私の運命なんだ。


「……っ、シオリっ!! 俺を煽るなっ」
「ああっ、そんなに激しく動かさないでっ!!」

 鳴り響く鐘の音と、お互いの肌がぶつかる音が重なりあう。
 それを耳に聞きながら、その音にも負けないくらいの愛嬌を一晩中響かせることとなった。





***
「どうされましたか?王子」
「んー、お父様とお母様に、新年のご挨拶をしようと思ったんですけれど、明日にした方がいいかなと思いまして」
「賢明ですね王子。その判断は幼いながらも御立派です。今お邪魔するのは、危機的な戦場に丸腰で赴くのと同じくらいの覚悟を要することですので」
「そうだね、やっぱり明日にします」
「では、明日まですることもないですので、私とゲームでもいたしますか?」

「はい。宜しくお願いします」


 静かに静かに足音がだんだんと消えていく。






 ……母は全て聞こえていましたよ。

 何とも言えない気持ちになりました……。
 腰痛のため立ち上がれない母をどうか許してください……。




 ああ、また今日も腰が痛い。


 日本にいたころ、こんな諺があったっけ。

『一年の計は元旦にあり』


 今年こそ腰痛からおさらばしたい私は『むやみやたらに愛しているなんて言わない』なんて目票を立てたのであった。


 その目標がいつまで続いたのか……。


 また三日後には腰痛に悩まされたシオリを、国王夫妻部屋付き侍女が目撃したらしい。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】帰れると聞いたのに……

ウミ
恋愛
 聖女の役割が終わり、いざ帰ろうとしていた主人公がまさかの聖獣にパクリと食べられて帰り損ねたお話し。 ※登場人物※ ・ゆかり:黒目黒髪の和風美人 ・ラグ:聖獣。ヒト化すると銀髪金眼の細マッチョ

色々と疲れた乙女は最強の騎士様の甘い攻撃に陥落しました

灰兎
恋愛
「ルイーズ、もう少し脚を開けますか?」優しく聞いてくれるマチアスは、多分、もう待ちきれないのを必死に我慢してくれている。 恋愛経験も無いままに婚約破棄まで経験して、色々と疲れているお年頃の女の子、ルイーズ。優秀で容姿端麗なのに恋愛初心者のルイーズ相手には四苦八苦、でもやっぱり最後には絶対無敵の最強だった騎士、マチアス。二人の両片思いは色んな意味でもう我慢出来なくなった騎士様によってぶち壊されました。めでたしめでたし。

完結 異世界で聖女はセックスすることが義務と決まっている。

シェルビビ
恋愛
 今まで彼氏がいたことがない主人公は、最近とても運が良かった。両親は交通事故でなくなってしまい、仕事に忙殺される日々。友人と連絡を取ることもなく、一生独身だから家でも買おうかなと思っていた。  ある日、行き倒れの老人を居酒屋でたらふく飲ませて食べさせて助けたところ異世界に招待された。  老人は実は異世界の神様で信仰されている。  転生先は美少女ミルティナ。大聖女に溺愛されている子供で聖女の作法を学ぶため学校に通っていたがいじめにあって死んでしまったらしい。  神様は健康体の美少女にしてくれたおかげで男たちが集まってくる。元拗らせオタクの喪女だから、性欲だけは無駄に強い。  牛人族のヴィオとシウルはミルティナの事が大好きで、母性溢れるイケメン。  バブミでおぎゃれる最高の環境。  300年ぶりに現れた性欲のある聖女として歓迎され、結界を維持するためにセックスをする日々を送ることに。  この物語は主人公が特殊性癖を受け入れる寛大な心を持っています。  異種族が出てきて男性の母乳も飲みます。  転生令嬢も出てきますが、同じような変態です。  ちんちんを受け入れる寛大な心を持ってください。

【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした

あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。 しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。 お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。 私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。 【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】 ーーーーー 小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。 内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。 ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が 作者の感想です|ω・`) また場面で名前が変わるので気を付けてください

【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話

もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。 詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。 え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか? え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか? え? 私、アースさん専用の聖女なんですか? 魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。 ※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。 ※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。 ※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。 R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

処理中です...