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***

「ねえ、今日はそろそろお終いに……」

「何言ってるんだ。まだ二回しかしていないじゃないか」

 二回もしたら十分でしょ?!  

 二人も子供がいる、いい歳した親が、毎日毎日どんだけ盛っていんですか!?


 リンゴーンと鐘の音が聞こえる。
 普段鳴ることのない王宮の天辺に付いている大きな鐘が鳴り響いた。


「あっ、」
「新しい年を迎えたな……」

 ちょっと、つながったままそんな感慨深げに言わないでくれないかな。
 股にアレを挟めたまま新しい年を迎えることになった私って……。



「シオリ、またこの一年俺の隣で笑っていてくれ。妻であり子供たちの母でもある君をいつも愛している」

 思わず遠い目をしていた”私に愛しくて仕方ない”って顔を惜しげもなく向けてくるのだから、私もなんだかつい素直な気持ちを伝えてしまった。


「もう。今までもこれからも私はずっと幸せでいつも笑顔でいさせてもらってるわ。素敵な宝物も私に与えてくれてありがとう。ランス……初めて会った時からあなたを愛してる」

 私はあなたに会うためにこの世界に来たんだと思う。
 それがきっと私の運命なんだ。


「……っ、シオリっ!! 俺を煽るなっ」
「ああっ、そんなに激しく動かさないでっ!!」

 鳴り響く鐘の音と、お互いの肌がぶつかる音が重なりあう。
 それを耳に聞きながら、その音にも負けないくらいの愛嬌を一晩中響かせることとなった。





***
「どうされましたか?王子」
「んー、お父様とお母様に、新年のご挨拶をしようと思ったんですけれど、明日にした方がいいかなと思いまして」
「賢明ですね王子。その判断は幼いながらも御立派です。今お邪魔するのは、危機的な戦場に丸腰で赴くのと同じくらいの覚悟を要することですので」
「そうだね、やっぱり明日にします」
「では、明日まですることもないですので、私とゲームでもいたしますか?」

「はい。宜しくお願いします」


 静かに静かに足音がだんだんと消えていく。






 ……母は全て聞こえていましたよ。

 何とも言えない気持ちになりました……。
 腰痛のため立ち上がれない母をどうか許してください……。




 ああ、また今日も腰が痛い。


 日本にいたころ、こんな諺があったっけ。

『一年の計は元旦にあり』


 今年こそ腰痛からおさらばしたい私は『むやみやたらに愛しているなんて言わない』なんて目票を立てたのであった。


 その目標がいつまで続いたのか……。


 また三日後には腰痛に悩まされたシオリを、国王夫妻部屋付き侍女が目撃したらしい。
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