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「お綺麗ですよ~~」
「お肌すべすべ~~」

 本日は、キャッキャウフフと花が舞い散っているように華やかな雰囲気でドレスを合わせています。

でもちょっと安心いたしました。
どこの馬の骨ともわからない私(ただの平凡な日本人の女の子です)って、本当ならば大変に怪しい人じゃないですか。
もしかしたら、いびられたり虐めにあったりするんじゃないかな……とも思っていたのですが

「ちょっと触ってもいいですか~~」

なぜだか警戒心ゼロで、とてもフレンドリーにされています。


着せ替え人形のように次から次へと色々なドレスを着させられ、半ばぐったりとしていたところに来客が告げられた。

「失礼します。シオリ様。私ランスロット様に幼いころからお仕えしていますハッシュと申します。宰相を務めております」

 この人が私の後見人の人ね!!

「あ、えっと私はシオリと言います。えっと、私の後見人になってくださり、本当にありがとうございます」
お陰で魔物の餌にならなくて済みました。あなたは私の命の恩人です。

深々とお辞儀をして、感謝を伝えて顔をあげて見ると、皴一つないスーツをパリッと着こなし、きっちり撫でつけられた髪に、銀縁の眼鏡をかけており、眼鏡の縁を指の背でクイッと持ち上げた。

もしかして、ちょっと神経質そうな人かな?
この人に捨てられたら魔物の餌になってしまうかもしれないし、不興を買わないようにしっかりしなきゃ。

そんなことを思っていたら突然ガシッと手を掴まれた。

「え、っと」
「シオリ様~~本当にありがとうございます!! このまま国王に結婚する相手が見つからなければ四〇代と続く尊い血が今代で途絶えてしまい、いずれこの国は滅亡してしまうのでは!! と思っておりました。そんな中、現れたあなたはまさに天より遣わされた女神さまです。本当に……ありがとうございます!!」

救世主様~!! とも叫ばれ、顔を上げた宰相様は、顔が涙でぐちゃぐちゃになっていました。

え、この人泣いてますけど……。


どうしよう、ドン引きしちゃいけないよね。
この人きっと偉い人だし、何より私の身元引受人兼、命の恩人だしさ……。


「あの、だいじょうぶ、ですか?」

そっとハンカチを渡す。

「ああ、お優しいんですね。あまりの喜びに涙を流してしまいました。鬼の宰相と呼ばれた私がお恥ずかしい」
「は、はい……」

えっと、私が渡したハンカチでズビーッと鼻を噛んでらっしゃるこの人が”鬼の宰相?!”

「そういえばシオリ様、お腹減っていませんか? 底なしの体力と陛下より聞いていますが、その素晴らしい体力を維持していただくためにもシオリ様には栄養のある物をたくさん食べていただかなくてはなりません。すぐにご用意させますね」

「あ、ありがとうございます……」

思いっきり引き攣った表情になってしまった。


あいつ……この私を底なしの体力と呼ぶとは一体なんなんだ。
よし、後で表へ出ろや。



「本当、陛下に愛されておりますのね~~」
「今朝なんて、侍女棟に来ては、『シーツ替えも、風呂の世話も自分でやるから人はいらない。用意だけもらっていこう』って言って来たんですのよ~~。あんなに嬉しそうにしている陛下は始めて見ましたわ」
「私たちは決してシオリ様のような真似は出来ないですけど、どっぷりと愛されていて、羨ましいですわ~~」
「あ、ははっ」

なんなら代わって差し上げますけれど……。

こんどは乾いた笑いになってしまった。
あの人、この国で一番偉い人なんだよね? 私が寝ている間にそんなことをしてくれていたんだ。
ちょっと意外かも。


それにしてもこの歓迎ムードに、この愛されよう。いろいろとおかしいような気もするけど、異世界トリップってこんなものなのかな??


でもいつまでも悩んだり考えたりするのってなんだか性に合わないんだよね。
色々と細かいことまで気にするのは面倒臭いしもういいや。
何よりこんな夢みたいな生活、普通ならできないし! 
うん、もう、なるようになれ!!

よし!! 異世界、どんとこーい!!

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