3 / 7
3
しおりを挟む
「お綺麗ですよ~~」
「お肌すべすべ~~」
本日は、キャッキャウフフと花が舞い散っているように華やかな雰囲気でドレスを合わせています。
でもちょっと安心いたしました。
どこの馬の骨ともわからない私(ただの平凡な日本人の女の子です)って、本当ならば大変に怪しい人じゃないですか。
もしかしたら、いびられたり虐めにあったりするんじゃないかな……とも思っていたのですが
「ちょっと触ってもいいですか~~」
なぜだか警戒心ゼロで、とてもフレンドリーにされています。
着せ替え人形のように次から次へと色々なドレスを着させられ、半ばぐったりとしていたところに来客が告げられた。
「失礼します。シオリ様。私ランスロット様に幼いころからお仕えしていますハッシュと申します。宰相を務めております」
この人が私の後見人の人ね!!
「あ、えっと私はシオリと言います。えっと、私の後見人になってくださり、本当にありがとうございます」
お陰で魔物の餌にならなくて済みました。あなたは私の命の恩人です。
深々とお辞儀をして、感謝を伝えて顔をあげて見ると、皴一つないスーツをパリッと着こなし、きっちり撫でつけられた髪に、銀縁の眼鏡をかけており、眼鏡の縁を指の背でクイッと持ち上げた。
もしかして、ちょっと神経質そうな人かな?
この人に捨てられたら魔物の餌になってしまうかもしれないし、不興を買わないようにしっかりしなきゃ。
そんなことを思っていたら突然ガシッと手を掴まれた。
「え、っと」
「シオリ様~~本当にありがとうございます!! このまま国王に結婚する相手が見つからなければ四〇代と続く尊い血が今代で途絶えてしまい、いずれこの国は滅亡してしまうのでは!! と思っておりました。そんな中、現れたあなたはまさに天より遣わされた女神さまです。本当に……ありがとうございます!!」
救世主様~!! とも叫ばれ、顔を上げた宰相様は、顔が涙でぐちゃぐちゃになっていました。
え、この人泣いてますけど……。
どうしよう、ドン引きしちゃいけないよね。
この人きっと偉い人だし、何より私の身元引受人兼、命の恩人だしさ……。
「あの、だいじょうぶ、ですか?」
そっとハンカチを渡す。
「ああ、お優しいんですね。あまりの喜びに涙を流してしまいました。鬼の宰相と呼ばれた私がお恥ずかしい」
「は、はい……」
えっと、私が渡したハンカチでズビーッと鼻を噛んでらっしゃるこの人が”鬼の宰相?!”
「そういえばシオリ様、お腹減っていませんか? 底なしの体力と陛下より聞いていますが、その素晴らしい体力を維持していただくためにもシオリ様には栄養のある物をたくさん食べていただかなくてはなりません。すぐにご用意させますね」
「あ、ありがとうございます……」
思いっきり引き攣った表情になってしまった。
あいつ……この私を底なしの体力と呼ぶとは一体なんなんだ。
よし、後で表へ出ろや。
「本当、陛下に愛されておりますのね~~」
「今朝なんて、侍女棟に来ては、『シーツ替えも、風呂の世話も自分でやるから人はいらない。用意だけもらっていこう』って言って来たんですのよ~~。あんなに嬉しそうにしている陛下は始めて見ましたわ」
「私たちは決してシオリ様のような真似は出来ないですけど、どっぷりと愛されていて、羨ましいですわ~~」
「あ、ははっ」
なんなら代わって差し上げますけれど……。
こんどは乾いた笑いになってしまった。
あの人、この国で一番偉い人なんだよね? 私が寝ている間にそんなことをしてくれていたんだ。
ちょっと意外かも。
それにしてもこの歓迎ムードに、この愛されよう。いろいろとおかしいような気もするけど、異世界トリップってこんなものなのかな??
でもいつまでも悩んだり考えたりするのってなんだか性に合わないんだよね。
色々と細かいことまで気にするのは面倒臭いしもういいや。
何よりこんな夢みたいな生活、普通ならできないし!
うん、もう、なるようになれ!!
よし!! 異世界、どんとこーい!!
「お肌すべすべ~~」
本日は、キャッキャウフフと花が舞い散っているように華やかな雰囲気でドレスを合わせています。
でもちょっと安心いたしました。
どこの馬の骨ともわからない私(ただの平凡な日本人の女の子です)って、本当ならば大変に怪しい人じゃないですか。
もしかしたら、いびられたり虐めにあったりするんじゃないかな……とも思っていたのですが
「ちょっと触ってもいいですか~~」
なぜだか警戒心ゼロで、とてもフレンドリーにされています。
着せ替え人形のように次から次へと色々なドレスを着させられ、半ばぐったりとしていたところに来客が告げられた。
「失礼します。シオリ様。私ランスロット様に幼いころからお仕えしていますハッシュと申します。宰相を務めております」
この人が私の後見人の人ね!!
「あ、えっと私はシオリと言います。えっと、私の後見人になってくださり、本当にありがとうございます」
お陰で魔物の餌にならなくて済みました。あなたは私の命の恩人です。
深々とお辞儀をして、感謝を伝えて顔をあげて見ると、皴一つないスーツをパリッと着こなし、きっちり撫でつけられた髪に、銀縁の眼鏡をかけており、眼鏡の縁を指の背でクイッと持ち上げた。
もしかして、ちょっと神経質そうな人かな?
この人に捨てられたら魔物の餌になってしまうかもしれないし、不興を買わないようにしっかりしなきゃ。
そんなことを思っていたら突然ガシッと手を掴まれた。
「え、っと」
「シオリ様~~本当にありがとうございます!! このまま国王に結婚する相手が見つからなければ四〇代と続く尊い血が今代で途絶えてしまい、いずれこの国は滅亡してしまうのでは!! と思っておりました。そんな中、現れたあなたはまさに天より遣わされた女神さまです。本当に……ありがとうございます!!」
救世主様~!! とも叫ばれ、顔を上げた宰相様は、顔が涙でぐちゃぐちゃになっていました。
え、この人泣いてますけど……。
どうしよう、ドン引きしちゃいけないよね。
この人きっと偉い人だし、何より私の身元引受人兼、命の恩人だしさ……。
「あの、だいじょうぶ、ですか?」
そっとハンカチを渡す。
「ああ、お優しいんですね。あまりの喜びに涙を流してしまいました。鬼の宰相と呼ばれた私がお恥ずかしい」
「は、はい……」
えっと、私が渡したハンカチでズビーッと鼻を噛んでらっしゃるこの人が”鬼の宰相?!”
「そういえばシオリ様、お腹減っていませんか? 底なしの体力と陛下より聞いていますが、その素晴らしい体力を維持していただくためにもシオリ様には栄養のある物をたくさん食べていただかなくてはなりません。すぐにご用意させますね」
「あ、ありがとうございます……」
思いっきり引き攣った表情になってしまった。
あいつ……この私を底なしの体力と呼ぶとは一体なんなんだ。
よし、後で表へ出ろや。
「本当、陛下に愛されておりますのね~~」
「今朝なんて、侍女棟に来ては、『シーツ替えも、風呂の世話も自分でやるから人はいらない。用意だけもらっていこう』って言って来たんですのよ~~。あんなに嬉しそうにしている陛下は始めて見ましたわ」
「私たちは決してシオリ様のような真似は出来ないですけど、どっぷりと愛されていて、羨ましいですわ~~」
「あ、ははっ」
なんなら代わって差し上げますけれど……。
こんどは乾いた笑いになってしまった。
あの人、この国で一番偉い人なんだよね? 私が寝ている間にそんなことをしてくれていたんだ。
ちょっと意外かも。
それにしてもこの歓迎ムードに、この愛されよう。いろいろとおかしいような気もするけど、異世界トリップってこんなものなのかな??
でもいつまでも悩んだり考えたりするのってなんだか性に合わないんだよね。
色々と細かいことまで気にするのは面倒臭いしもういいや。
何よりこんな夢みたいな生活、普通ならできないし!
うん、もう、なるようになれ!!
よし!! 異世界、どんとこーい!!
10
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
大事な姫様の性教育のために、姫様の御前で殿方と実演することになってしまいました。
水鏡あかり
恋愛
姫様に「あの人との初夜で粗相をしてしまうのが不安だから、貴女のを見せて」とお願いされた、姫様至上主義の侍女・真砂《まさご》。自分の拙い閨の経験では参考にならないと思いつつ、大事な姫様に懇願されて、引き受けることに。
真砂には気になる相手・檜佐木《ひさぎ》がいたものの、過去に一度、檜佐木の誘いを断ってしまっていたため、いまさら言えず、姫様の提案で、相手役は姫の夫である若様に選んでいただくことになる。
しかし、実演の当夜に閨に現れたのは、檜佐木で。どうも怒っているようなのだがーー。
主君至上主義な従者同士の恋愛が大好きなので書いてみました! ちょっと言葉責めもあるかも。
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
騎士団専属医という美味しいポジションを利用して健康診断をすると嘘をつき、悪戯しようと呼び出した団長にあっという間に逆襲された私の言い訳。
待鳥園子
恋愛
自分にとって、とても美味しい仕事である騎士団専属医になった騎士好きの女医が、皆の憧れ騎士の中の騎士といっても過言ではない美形騎士団長の身体を好き放題したいと嘘をついたら逆襲されて食べられちゃった話。
※他サイトにも掲載あります。
黒豹の騎士団長様に美味しく食べられました
Adria
恋愛
子供の時に傷を負った獣人であるリグニスを助けてから、彼は事あるごとにクリスティアーナに会いにきた。だが、人の姿の時は会ってくれない。
そのことに不満を感じ、ついにクリスティアーナは別れを切り出した。すると、豹のままの彼に押し倒されて――
イラスト:日室千種様(@ChiguHimu)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる