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***
「ユナさま、ご用意できましたか?」
扉の向こうから声をかけられる。
「あ、はい、もうすぐできます」
あぁ、ドキドキする。
鏡を覗けば、真っ白いドレスに身を包んだ自分じゃない誰かが写っている気がする……。
「すごくお綺麗ですよ。このドレスもとても素敵です」
ミルリーさんが私の髪を整え終え、最後のチェックをしながら緊張している私に声を掛けてくれた。
「ありがとう。みんなが作ってくれたこのドレス、私すごく気に入った。本当にありがとう」
「いいえ、このドレスを着たユナ様の幸せそうなお姿を見れて、私たち侍女一同はみんな嬉しく思っております。本当にお目でとうございます」
そう。今日私が着ているこのドレスは、チーム・ザ、パッチワークのメンバーのみんなが作ってくれた世界でただ一つのドレス。
白のドレスに色とりどりの花を咲かせたふわふわのドレスは、私が小さいころ夢見た絵本の中のお姫様そのもので、袖を通して化粧を施せば、今日一日だけそのお姫様に自分がなれるように魔法に掛かった気分になった。
「ありがとう。とっても嬉しい」
「お待たせしました」
部屋のドアを開ければ、また前みたいに護衛に戻ってきてくれたジークがドアの外で立っていた。
私をみれば、青緑の瞳を柔らかく細め「すごくお綺麗ですよ」と声を掛けてくる。
「ありがとう」
幸せ一杯の顔で微笑めば、さっきと同じように親愛の笑顔が返ってきた。
「あまり見てしまうと、あの方に怒られてしまいますので、さあ、参りましょうか」
***
王家の森は今は定期的に行われている浄化の成果で、薄い膜が取り払われ、緑豊かな森はその生命力を溢れんばかりに様々な息吹を芽吹かせている。
沢山の木の実がなり、動物たちがその恩恵に与り、そしてまた生命が芽吹いていく。
生命の力は次の世代、また次の世代と時代をまたいで受け継がれていくだろう。
命の力は私たちの生きる力。
人は皆、迷い、悩み、挫折したり、どん底まで落ちてしまうこともあるけれど、命の輝きを失わない限り、また這い上がって一歩ずつ前に進むことが出来るだろう。
たとえ進む道がまっすぐでなくても、一本でなくても、諦めなければきっといつかはたどり着ける。
たどり着いた先にきっと運命が待っているはず。
ゆっくりと歩きたどり着いた先にはエルストが白い騎士服の正装に身を包んで立っていた。
私の、運命の人。
「ユナ、世界で一番綺麗ですよ。そして、愛しています」
優しく唇が重なれば、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
私たち二人を祝福するために集まってくれた国王陛下、宰相、騎士団の皆、侍女たち、ほかにもたくさんの人たちが集まってくれた。
そっと唇を離して虹がかかる空を見上げれば、チョコと、聖獣仲間たちがクルクルと旋回して私たちを祝うように飛んでいる。
チョコ、そして、皆、ありがとう。
再びエルストを見れば幸せが溢れんばかりに輝く笑顔を浮かべていた。
私達の物語はまだ始まったばかり、これからゆっくりと二人で歩んでいこう――。
~~~
故郷のお父さん、お母さん。帰らない娘を許してね。私、元気に暮らしてるから。
だから、心配しないでお父さんたちも元気に過ごしてね。
届けられないけれど、時々手紙を書くね。
それから、お母さんが教えてくれたパッチワークでお守りも作ったよ。
私の大好きな人にあげたんだ。そしてね、なんと私のことを守ってくれたんだよ。
だからお父さんお母さんのことも守ってくれるようにお守りを作って、いつも持ち歩いているんだよ。
この世界から二人の幸せをいつも祈っているね。
そしてサボナ村のみんな! 今度会いに行く時には素敵な旦那様をつれていきます!
神堂 由那、運命に導かれ、異世界でつがいを見つけました。
幸せになります!!
~完~
「ユナさま、ご用意できましたか?」
扉の向こうから声をかけられる。
「あ、はい、もうすぐできます」
あぁ、ドキドキする。
鏡を覗けば、真っ白いドレスに身を包んだ自分じゃない誰かが写っている気がする……。
「すごくお綺麗ですよ。このドレスもとても素敵です」
ミルリーさんが私の髪を整え終え、最後のチェックをしながら緊張している私に声を掛けてくれた。
「ありがとう。みんなが作ってくれたこのドレス、私すごく気に入った。本当にありがとう」
「いいえ、このドレスを着たユナ様の幸せそうなお姿を見れて、私たち侍女一同はみんな嬉しく思っております。本当にお目でとうございます」
そう。今日私が着ているこのドレスは、チーム・ザ、パッチワークのメンバーのみんなが作ってくれた世界でただ一つのドレス。
白のドレスに色とりどりの花を咲かせたふわふわのドレスは、私が小さいころ夢見た絵本の中のお姫様そのもので、袖を通して化粧を施せば、今日一日だけそのお姫様に自分がなれるように魔法に掛かった気分になった。
「ありがとう。とっても嬉しい」
「お待たせしました」
部屋のドアを開ければ、また前みたいに護衛に戻ってきてくれたジークがドアの外で立っていた。
私をみれば、青緑の瞳を柔らかく細め「すごくお綺麗ですよ」と声を掛けてくる。
「ありがとう」
幸せ一杯の顔で微笑めば、さっきと同じように親愛の笑顔が返ってきた。
「あまり見てしまうと、あの方に怒られてしまいますので、さあ、参りましょうか」
***
王家の森は今は定期的に行われている浄化の成果で、薄い膜が取り払われ、緑豊かな森はその生命力を溢れんばかりに様々な息吹を芽吹かせている。
沢山の木の実がなり、動物たちがその恩恵に与り、そしてまた生命が芽吹いていく。
生命の力は次の世代、また次の世代と時代をまたいで受け継がれていくだろう。
命の力は私たちの生きる力。
人は皆、迷い、悩み、挫折したり、どん底まで落ちてしまうこともあるけれど、命の輝きを失わない限り、また這い上がって一歩ずつ前に進むことが出来るだろう。
たとえ進む道がまっすぐでなくても、一本でなくても、諦めなければきっといつかはたどり着ける。
たどり着いた先にきっと運命が待っているはず。
ゆっくりと歩きたどり着いた先にはエルストが白い騎士服の正装に身を包んで立っていた。
私の、運命の人。
「ユナ、世界で一番綺麗ですよ。そして、愛しています」
優しく唇が重なれば、割れんばかりの拍手が沸き起こる。
私たち二人を祝福するために集まってくれた国王陛下、宰相、騎士団の皆、侍女たち、ほかにもたくさんの人たちが集まってくれた。
そっと唇を離して虹がかかる空を見上げれば、チョコと、聖獣仲間たちがクルクルと旋回して私たちを祝うように飛んでいる。
チョコ、そして、皆、ありがとう。
再びエルストを見れば幸せが溢れんばかりに輝く笑顔を浮かべていた。
私達の物語はまだ始まったばかり、これからゆっくりと二人で歩んでいこう――。
~~~
故郷のお父さん、お母さん。帰らない娘を許してね。私、元気に暮らしてるから。
だから、心配しないでお父さんたちも元気に過ごしてね。
届けられないけれど、時々手紙を書くね。
それから、お母さんが教えてくれたパッチワークでお守りも作ったよ。
私の大好きな人にあげたんだ。そしてね、なんと私のことを守ってくれたんだよ。
だからお父さんお母さんのことも守ってくれるようにお守りを作って、いつも持ち歩いているんだよ。
この世界から二人の幸せをいつも祈っているね。
そしてサボナ村のみんな! 今度会いに行く時には素敵な旦那様をつれていきます!
神堂 由那、運命に導かれ、異世界でつがいを見つけました。
幸せになります!!
~完~
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